プロダクトアウトとマーケットインの違いとは?メリット・デメリットも解説
近年、インターネットの発達によりマーケティング市場は大きな変化を見せています。サービスを提供する側がその変化に対応し戦略を立てるうえで最初に理解しておきたいのが、今回紹介する「プロダクトアウト」と「マーケットイン」です。この記事ではプロダクトアウトとマーケットインの違い、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
プロダクトアウトとマーケットインの違い
プロダクトアウトとマーケットイン、両者はどちらもマーケットの基本概念ですが、何を主体にして商品の開発・製造・販売を行うかが異なります。その主体とは「企業」と「顧客」です。ここでは、プロダクトアウトとマーケットインの違いを踏まえたうえで、それぞれの特徴を見ていきましょう。
プロダクトアウトとは
プロダクトアウトは、商品の開発から販売を「企業」主体で行います。つまり「企業側が売れると思った商品を造って販売する」という考え方です。「良いものを作れば売れる」という発想で、会社独自の技術や強みを活かした商品開発のことを指します。バブル崩壊前までの日本では、多くの企業がこのプロダクトアウトを下敷きにしたマーケティング戦略を立てていました。
マーケットインとは
一方、マーケットインは、商品の開発から販売を「顧客」主体で行います。「顧客が欲しいものを作って売る」という考え方です。消費者の要求や意見を元に顧客のニーズを解析し、売れるものだけを優先して開発・販売します。企業のロジックより、市場・顧客のニーズを重視するマーケティングです。インターネットなどで消費者の情報感度が高まった結果、急速に拡大していきました。
プロダクトアウト・マーケットインそれぞれのメリット・デメリット
ここからは、プロダクトアウトとマーケットインのメリット・デメリットについて解説していきます。両者の良し悪しを把握し、どのような状況に適した考え方なのかを理解しましょう。
プロダクトアウトのメリット・デメリット
プロダクトアウトのメリットは以下の通りです。
- 企業独自の技術や強みを発揮できる
製造側が良いと思うものを造れるため、企業の強みを最大限に活かした製品開発が可能です。企業独自の製品を開発できれば、競合他社との差別化が図れ、消費者に企業の存在や強みを効果的にアピールできます。上手くいけば企業のイメージアップにつながるため、ブランド力を高める効果も期待できるでしょう。 - 他社にはない新商品を作れるかもしれない
製造側の技術力をフルに活用できるため、他社にはない新商品を生み出せる可能性があります。製品がヒットするかは未知数である一方、大ヒットする可能性も充分にあると言えます。大ヒットすればネットなどで情報が拡散し、企業の認知度は急上昇するでしょう。 - コストを集中できる
企業の技術と強みを利用するため、市場調査などに関連したコストをかける必要がありません。その分、コストを別の部分に回せます。
一方、プロダクトアウトにはデメリットとして以下が挙げられます。
- ニーズに合わないものは売れない
製造側の視点で造るため、顧客の求める製品ができるとは限りません。消費者のニーズとマッチしていないと、売上が予想を下回ることも考えられます。開発にはコストがかかるため、もし売れなかった場合、かなりの損失も覚悟しなくてはなりません。 - 売れない場合は原因を分析する必要がある
商品が売れなかった場合、その原因を特定する必要があります。商品のニーズが合っていないのか、広告やPR方法が悪いのか、広い視点から分析しなければなりません。多方面から見直す必要があるため、費用と工数が多くかかってしまいます。
マーケットインのメリット・デメリット
- 顧客のニーズに合わせて商品を提供できる
マーケットインは事前に顧客のニーズを把握しておく必要があるため、顧客が求めているものを製造・提供しやすくなります。ニーズが満たされた顧客は、提供側に信頼感を持ちやすくなるため、リピーターになる可能性も高まるでしょう。 - 売上予測が立てやすい
顧客のニーズに合わせることで売上予測が立てやすくなるため、過剰在庫のリスクを軽減でき、安定した企業経営に良い影響をもたらします。市場調査を行うことで、的確なマーケティングを実施しやすくなるのも魅力です。
マーケットインのメリットは以下の通りです。
一方、マーケットインには以下のようなデメリットがあります。
- 大ヒットを狙うのは難しい
既存の価値観に合わせて開発するため、目新しさがなく、爆発的なヒットを狙うのが困難です。また、競合他社と似たような商品を作ることが多くなるため、差別化が図りづらく、ブランド力を高める効果はあまり期待できません。 - ブランドイメージとの乖離
市場のニーズに合わせた商品開発が多くなるため、それまで企業が築いてきたブランドイメージが損なわれる可能性があります。ニーズに合わせた結果、企業の個性や強みが抑えられ、商品が無個性になってしまうのがその例です。新規顧客の呼び込みには成功しても、これまでファンとして購入を続けてきたリピーターを逃すことになりかねないでしょう。
双方を融合させた2つのフレームワーク
マーケットインとプロダクトアウトは一長一短です。双方に加え、その観点を融合させた2つのフレームワークを覚えておくとマーケティング分析をさらに補強できるでしょう。ここからは「4P分析」と「4C分析」について解説していきます。
4P分析
4P分析では以下の4要素を分析します。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販促)
「何を売るか」「いくらで売るか」「どんな流通経路を用いるか」「販促にどんな宣伝をするか」を考えるためのフレームワークです。プロダクトアウトと同じく、企業側の観点に基づいた分析です。各要素の分析ポイントは以下の通りです。
- Product(製品)
「顧客にとって価値のある商品か」という視点です。商品の内容だけでなく、見た目やイメージなども分析対象です。プロとしてではなく、一般的な消費者の目線で分析する必要があります。 - Price(価格)
「顧客から見て商品の価格が適正か」という視点です。競合他社との比較や、市場環境をチェックし、消費者にとって値段が適切かをチェックします。 - Place(流通)
「どのような流通手段を用いれば顧客の元に必要とされる商品を届けられるか」という視点です。例えば、銭湯に飲み物の自販機をおけば、顧客は水分を補給するために積極的に自販機を利用するのではないでしょうか。このように商品の特性と顧客を考慮し、効果的な流通手段を分析します。 - Promotion(販促)
「商品をどのように認知してもらい、購入につなげるか」という視点です。宣伝や広告だけでなく、ポイントカードや会員特典など、プロモーションに利用できる手段を分析します。
4C分析
4C分析では以下の4要素を分析します。
- Customer Value(価値)
- Customer Cost(コスト)
- Convenience(利便性)
- Communication(コミュニケーション)
顧客から望ましい反応を引き出すためのフレームワークで、商品を生み出す際は、上記の4要素を適切に選択する必要があります。マーケットインと同じく、顧客の観点に基づいた分析です。
各要素の分析ポイントは以下の通りになります。
- Customer Value(価値)
「商品を手にすることで、顧客がどのような利益を得られるか」という視点です。商品の価値だけではなく、入手することで得られる「喜び」や「優越感」といった情緒的な利益もその対象です。 - Customer Cost(コスト)
「顧客が商品を手にするために、どのような費用・労力を支払う必要があるか」という視点です。金銭面だけでなく、時間的・心理的な負担も考慮します。 - Convenience(利便性)
「どのように販売すれば顧客が商品を入手しやすいか」という視点です。場所だけではなく、時間・範囲なども分析の対象です。 - Communication(コミュニケーション)
「企業と顧客とのコミュニケーションが取れているか」です。4Cでは企業が一方的に顧客にアクションを起こすだけではなく、顧客側のアクションを受け入れることが前提になっています。例としては、SNSを活用した販促活動などがあります。
プロダクトアウト・マーケットインで重要なユーザーニーズの把握方法とは
ここからは、プロダクトアウトとマーケットインでユーザーニーズを把握する方法をより具体的に解説していきます。
フレームワークでの分析
先述した4P分析・4C分析はユーザーニーズの把握に活用できます。4C分析で顧客の要望を知ったうえで、4P分析で何が提供できるか考えればより実現性のある案が生まれやすくなります。両者を併用してユーザーニーズの把握に努めましょう。
市場調査
アンケートなどで市場調査を行えばユーザーが何を求めているかを具体的に把握できるため、ヒット商品を生み出す土壌を作り出せます。誰でも気軽に回答でき、極端に回答数が少ないという結果を回避できることから、アンケート調査にはWebサイトやSNSなどの活用がおすすめです。一方で、これらの調査方法では顕在ニーズは把握できても、ユーザーが自覚していない潜在ニーズの把握は難しいという欠点もあります。質問内容に工夫を凝らすなど、潜在ニーズを意識したアンケート作成を心がけましょう。
CRM/SFAの活用
CRM/SFAはどちらも顧客情報の管理を主体としたシステムです。CRMは各部門と顧客情報の共有を行い、事業戦略を立てていくことを目的としています。そのため、CRMは「経営のためのシステム」とも呼ばれています。
一方、SFAの目的は営業活動の効率化や、営業ノウハウの蓄積していくことです。そのため、SFAは「営業のためのシステム」と呼ばれています。どちらも、顧客の購買傾向を分析できるため、ユーザーニーズの把握に有効活用できます。
まとめ
昨今のマーケティングでは、良いものを生み出しつつ、顧客のニーズにも応えていく必要があります。そのためには、プロダクトアウトとマーケットインのメリット・デメリットを把握したうえで、4P・4C分析といったフレームワークの活用が大切です。両者を状況に応じて使い分け、最適なマーケティング施策を実行できるよう心がけましょう。
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