PMFとは?指標や実現するための方法なども解説
PMFはビジネスを成功させるために欠かせない概念であり、商品や製品を提供する企業すべてが目指すべき状態でもあります。
PMFの達成なくして企業の成長は望めません。
この記事では、PMFの概要と構成、管理対策やプロセス、成功事例について解説します。
各方面からPMFについて知り、その重要性について学んでいきましょう。
PMFとは
ここでは、PMFの概要・PSFとの違い・重要性について詳しく解説していきます。
概要
PMFは、Product Market Fit(プロダクトマーケットフィット)の略で、顧客を満足させる最適な製品(Product)を、最適な市場(Marke)に提供している状態を指します。
ソフトウェア開発者のマーク・アンドリーセンが2017年に広めた概念と言われ、主にスタートアップ企業などで取り扱われることの多い概念です。
PMFを達成する条件は以下の2つです。
- 顧客の求める商品・サービスを提供できる
- 商品・サービスを提供する市場が適切である
この条件を満たせない事業は顧客からの満足度を得られにくく、生き残りや成長が困難になるとされています。
そのため、PMFは新事業を立ち上げて最初に取り入れるべき考え方のひとつとも言えるでしょう。
PSFとの違い
PSMと混同されがちな言葉にPSFがあります。
PSFとはProblem Solution Fit(プロブレムソリューションフィット)の略で、顧客が問題解決するためのサービス・製品を提供している状態を指します。
PMFが達成目標だとすると、PSFはその準備段階です。
この関係からPSFは、PMF達成のプロセスとも言われており、顧客がどのような問題を抱えているのか、また、その問題を解決するにはどうしたらいいかを考えます。
それらを考慮したうえで、問題解決や顧客のニーズを汲み取ることにつなげる必要があるでしょう。
PMFとPSFの大きな違いは、それぞれの「視点」です。
問題に関する解決策をピックアップするという視点のPSFに対し、PMFは市場との適合というマクロの視点を持っています。
したがって、PMFはPSFを包括するとも捉えられます。
PMFの重要性
PMFの達成は、現代ビジネスを成功に導くうえでの目標として重要視されています。
その理由として挙げられているのは、インターネットの普及によるニーズの多様化です。
現在、ユーザーはインターネットを活用して自分の趣味趣向に合った商品を簡単に見つけ出せるようになりました。
インターネット市場は多角化され、ジャンルや数も増加傾向にあります。
それに伴い、以前のような性別年齢といった単純な市場調査を通じての商品開発が困難になりました。
また、市場が多角化したことにより、製造販売される商品・サービスも大幅に増加したこともニーズの多様化に拍車をかけています。
ほぼすべてのジャンルで類似商品があり、差別化を図るためには他社にはない魅力を提供しなければなりません。
PMFは、多くの選択肢から自社製品を選んでもらうためにも、必要不可欠な概念と言えます。
PMFの指標
PMFが達成されているかを検証するためには何を行えば良いのでしょうか。
ここでは、PMFの指標となる代表的な3つの検証法についてご紹介します。
NPS
NPSは、Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)の略で、顧客ロイヤリティを測る指標です。
購入者に商品・サービスを0~10の11段階で評価してもらい、友人・知人に勧める可能性を問います。
NPSの評価は1~6が批判者、7~8が中立者、9~10が推奨者とされ、推奨者の割合(%)から批判者の割合(%)を引いた数値がNPSのスコアです。
たとえば、10人の回答のうち、9~10の推奨者が2人、7~8の中立者が3人、1~6の批判者が5人だった場合、推奨者20%・批判者50%となり、NPSは「-20」となります。
実施する場合、統計的な観点から400以上のサンプルを確保することが望ましいでしょう。
ちなみに、日本人の多くが「5」に評価を付けやすいため、どの業界でもNPSスコアは低くなります。
そのため、各業界NPSランキング1位企業のスコア値ですらマイナスであることが大半です。
エンゲージメント
多方面で用いられるエンゲージメントという言葉には「約束」や「契約」といった意味があります。
PMFではユーザーが企業やブランド、商品・サービスに対して持つ愛着のことを指します。
このエンゲージメントを調査するためには、ユーザーが実際にどのくらい商品・サービスを利用しているかについて調査しなくてはなりません。
調査方法は提供するサービス・商品およびビジネスモデルによってさまざまです。
一方で、共通する調査のポイントとしては「見る指標はプロダクトに基づく体験であること」や、「客観的な調査であること」などが挙げられます。
エンゲージメントは、この2点を特に意識して調査を行いましょう。
リテンション
リテンションには、維持・保持・記憶といった意味があります。
マーケティングにおけるリテンションは、「既存ユーザーによるリピート購入の促進活動」のことを指します。
提供した商品・サービスがユーザーにどの程度まで浸透し、継続利用されているかを表す指標です。
PMFでは、リテンション率を縦軸、提供開始からの期間を横軸に設定したリテンションカーブというグラフが使用されます。
グラフが途中から横ばいになればPMFが達成されたと判断できます。
PMFの維持に問題が生じた場合の対策
ここでは、PMFの維持に問題が生じてしまった場合に実施できる、2つの観点での対策についてご紹介します。
継続使用の障害を分析する
ユーザーが商品・サービスを利用することに関して障害となっている要素を分析します。
例えばライバル社による競合商品の出現やニーズの変化など、ユーザーが継続利用に至らなくなった原因を導き出し、対策を考えます。
ユーザーの割合を確認する
商品・サービスの利用を停止している休眠ユーザーの割合や、一度利用を再開したにもかかわらず再び利用を停止したユーザーの動向などの特徴を分析し、利用停止に至った理由を導き出します。
一度は達成できたはずのPMFの維持に問題が発生するのには、何らかの原因が考えられます。
分析結果をもとに原因を取り除き、PMFを維持するための調整を行いましょう。
PMFの実現に必要なこと
ここでは、PSFからPMFに至る流れについてご紹介します。
プロダクトのリリース
商品・サービスは、市場のニーズを満たせる状態が整った段階でリリースしましょう。
最初から高い完成度を目指したいと考える方も多いかもしれませんが、PMFを達成するための選択としてはあまり好ましくありません。
また、ユーザーからの指摘があって初めてわかる問題点もあるため、ユーザーの声を反映させる余地を残しておく必要があります。
リリース後は素早く問題点を発見し、素早く改善する「PDCAサイクル」の実施が重要です。
ユーザー分析や市場調査を進めて改善に努めましょう。
顧客分析
顧客分析は、顧客の定義付けが曖昧だと成果が得られません。
したがって、顧客分析を活かすためにも正確な基準を設けて、自社製品の利用ユーザーをグルーピングします。
基準となるのは、購入回数や継続率などさまざまです。先述したNPSなどの指標を利用するのも良いでしょう。
また、顧客が何を求めているかを分析するためには、潜在ニーズと顕在ニーズを知ることが大切です。
これらの情報収集にはアンケートやSNSの活用が効果的です。
市場分析
市場分析にはマーケティング・フレームワークを活用しましょう。
フレームワークには市場・自社・他社の3視点から現状を分析する「3C分析」や、顧客の価値・負担・利便性・対話の4つからニーズを分析する「4C分析」などがあります。
一から分析のための土台を作るのではなく、元からあるフレームワークを活用することで作業の効率化につながります。
PMFの成功事例
PMFを成功させた事業としてよく名前が挙げられるのが「CLOUDSIGN」です。
CLOUDSIGNは、今まで紙ベースで行われてきた契約手続きを、Web上で完結できる電子契約サービスを提供し話題となりました。
市場のニーズを捉えたサービスは多くの企業から歓迎され、CLOUDSIGNの電子契約サービスは提供開始からわずか1年半で導入社数が6,000社を突破するという快挙を遂げています。
同社は市場を分析し「弁護士などの契約手続きは手間がかかり煩雑」という課題を見つけ出し、その課題を解決できる「印刷・捺印・郵送を必要としないクラウドサービスによる電子契約」による新しいサービスを提供しました。
これは「顧客を満足させる最適な製品を、最適な市場に提供する」というPMFの概念に沿ったマーケティング方法と言えます。
まとめ
PMFを達成するためには、前段階としてPSFを経る必要があります。
また、実現と維持には顧客と市場の分析調査が欠かせません。
一方で、PMFにはそのプロセスを進める価値があります。先述したCLOUDSIGNの事例からもそれは明らかでしょう。
ユーザーが多くの選択肢を持つ現代市場では、PMFはビジネスの基本とも言うべき概念です。
製品を市場に売り出す際は、PMF達成を常に意識することをおすすめまします。
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