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ダイナミックプライシングとは?メリット・デメリットについても解説
TIPS 2021.12.08

ダイナミックプライシングとは?メリット・デメリットについても解説

近年、ダイナミックプライシング(変動価格制)が注目を集めています。これまで、旅行業界では繁閑に応じた価格変動がありましたが、近年ではその他の業界でも導入する動きが見られるようになりました。

本記事では、ダイナミックプライシングについての基本知識を解説します。

ダイナミックプライシングとは

ここでは、ダイナミックプライシングの基本的な概念を説明します。

仕組み

一般的に、価格設定は需要と供給の均衡によって決まります。ダイナミックプライシングも商品やサービスの価格を受容に応じて変動させますが、ITやAIを活用し、最適なタイミングでの価格変動を高頻度で行うといった特徴があります。高頻度で価格を変動させることで、固定価格制で生じる機会の損失を減少でき、収益の最大化に貢献します。

3つのアルゴリズム

ダイナミックプライシングの価格決定に用いられるアルゴリズムには、自動化・機械学習による予測・強化学習の3つがあります。

自動化は、完全手動や機械学習で作成したルールをシステムとして実装するもので、一般にルールベースと呼ばれます。繁閑による価格変動を採用していた航空・ホテル業界や、競合価格のみを参照した価格変更を行うEC小売業がその実例です。

機械学習による予測では、需要を仮定して日付や曜日、天候や近隣イベントの有無など様々な変数をもとに、時々の需要予測により最適な値付けを行います。現在の主流とも呼べる方法です。

強化学習では、特定の状態(天気など、需要と価格に関わる変数の特定の値)で、最も収益最大化につながる選択肢をAIの経験から導き出す仕組みです。強化学習によるダイナミックプライシングは、収益最大化につながるとされていますが、国内で実用向けに実装されたという例は見受けられません。

注目されている背景

ダイナミックプライシングはなぜ注目されるのでしょうか。

需要と供給の均衡により価格は決定されますが、世の中には需給と価格の変動が充分に連動していないモノやサービスが存在します。それに対して、ダイナミックプライシングを導入することで社会的効率性を向上できるという考え方が広まり、さまざまな業界で取り入れられるようになりました。
加えて、ダイナミックプライシングの実現をサポートするITやAIの技術革新が起きたことも、普及した理由として挙げられます。

ダイナミックプライシングのメリット・デメリット

ここでは、ダイナミックプライシングの主なメリット・デメリットをご紹介します。

メリット

ダイナミックプライシングによって企業は、受容が供給を上回る場合には価格を上げても購入する顧客を確保しつつ、供給が需要を上回る場合には価格を下げて購入者増加を図り、在庫処分や機会損失を避けて売上を向上させられます。このような戦略により、企業側は収益を最大化したうえで人的リソースを効率的に利用可能です。ダイナミックプライシングは供給側・企業側のメリットを図る手段ですが、顧客側にも、欲しい商品やサービスをリーズナブルに手に入れるチャンスが生まれます。

デメリット

ダイナミックプライシングには、正確な需給の状況把握とそれに基づく価格設定が必要となり、AIやITの活用、統計学の知識やシステム開発が必要になります。自社内で対応できずに外部委託すれば当然そのコストが必要ですし、突発的な出来事への対応の柔軟性は下がります。

顧客側へ与える影響としては、需要の高騰期には、例えば宿泊業のように、サービス内容は同じなのに高い価格でしか購入できないという不利な条件をのまざるを得なくなる場合が生じます。
また、ダイナミックプライシングは値下げだけではなく値上げを行う場合もあります。消費者心理として値上げへの抵抗感が一般に大きいというだけでなく、災害時に生活必需品の値上げをAIの判断だけで行って、苦境につけ込んでいると大きな批判を招いた実例もあります。値下げの場合でも、値下げ前に購入した消費者は不満を感じるかもしれません。

さらに、ダイナミックプライシングの手法によってもリスクはあります。ダイナミックプライシングには「一物一価(一つのモノに必ず一つの値付けがされている状態)」と、「購入する個人によって価格が異なる」(パーソナルプライシング)という2つの考え方がありますが、とくに後者の場合やり方を誤ると、企業に対する不信感から収益どころか売上すら失い、客離れを招く可能性もあります。

ダイナミックプライシングが導入されている代表的な業界

ダイナミックプライシングが導入されている代表的な業界を紹介します。

飲食業界

飲食業界の場合、混雑緩和のために、時間帯別のダイナミックプライシングを導入する事例があります。特に2019年からのコロナ禍で、3密を避けるための対策として導入する店舗が増加しています。

オフライン小売店業界

オフライン小売店業界でのダイナミックプライシングの導入は、値札の貼り替え作業のコストがネックになっていました。しかし、電子棚札の利用拡大により、以前より高頻度の価格変更をスピーディーかつローコストで実現可能になりました。これにより、食品の賞味期限を基準にした価格変動などを対象にした導入が進んでいます。

遊園地

繁忙期と閑散期の需要差が大きい遊園地では、繁忙期には高い値段で利益を上げ、閑散期には値段を下げて販売数を稼ぐことで、収益の最大化が見込めます。価格変更で需要をコントロールし、顧客の利用タイミングを分散させた混雑の緩和も期待できます。

スポーツ業界

スポーツチケットの需要は試合ごとに大きく異なり、特にシーズン初めは需要が予測しづらいため、一部の試合にだけに入場が集中し、それ以外は閑散とすることも少なくありません。そこで需要の高い試合ではチケットの値段を上げて収益性を確保し、需要が低くなると値段を下げて動員数を確保する、といった形でダイナミックプライシングが導入されています。
スポーツ業界でのダイナミックプライシングは、時間と共に変化する需要をAIによる機械学習で予測するのが一般的です。さらにスタジアムの残り席数という供給(在庫)の状態も加味して、試合ごとのチケットの値段を決定していきます。

ダイナミックプライシングの導入方法

ダイナミックプライシングの導入方法について見ていきましょう。

導入方法

ダイナミックプライシングの導入には、自社開発・ツール活用・受託開発という3つの方法が活用されます。

自社開発は、自社にダイナミックプライシングを開発・運用できる人材がいる、または揃えられる場合に選択できます。自社専用のアルゴリズムを自社で開発するため、最適化という意味で優れています。また、外部委託と比べて柔軟かつ迅速な運用が可能です。

ツール活用は、SaaS(Software as a Service)の利用により、サービス提供企業から安くダイナミックプライシングを導入できるものです。自社に適したサービスが見つかれば、初期費用の低さとあわせて有力な選択肢といえます。ただし、サービスを提供する企業が多くない現状から、導入しても他社との差別化が難しくなる場合もあります。

受託開発は、ダイナミックプライシングに知見のある開発企業と共同でアルゴリズム開発を進める選択肢です。費用はツール活用より高くなりますが、自社開発ができず、適したSaaSも見つからない場合に選ぶ方法です。開発企業によって導入前・導入後のコンサルテーションへの対応有無などの特徴があるため、選定時はしっかりと見極めましょう。

おすすめの提供会社

ここではダイナミックプランシングを提供する会社から、おすすめの2社をご紹介します。

  • 株式会社メトロエンジン
  • 株式会社メトロエンジンでは2つのツールを提供しています。
    ひとつはホテル業界向けの「メトロエンジン」です。競合価格・在庫・各種イベント・曜日要因などの機械学習データをもとに需要予測を行い、過去の販売実績と照らし合わせて最適価格を算出します。競合分析や宿泊施設に関する全般的なデータそのものの販売もしており、ホテル側のより広いニーズに対応できるのが特徴です。
    もうひとつはレンタカー業界向けの「me car rentals」です。レンタカー予約サイトから競合他社の販売状況データを取得し、過去の販売実績やメトロエンジンが持つビッグデータをもとに需要を予測して、最適価格を算出します。

  • プライシングスタジオ株式会社
  • プライシングスタジオ株式会社はダイナミックプライシングの開発企業で、顧客に応じて最適化されたアルゴリズムの開発を行っています。
    また、アルゴリズムの開発はもちろん、実証実験とコンサルテーションに対応できるのも特徴です。小規模な実証実験から始められるため、導入実績のない業界での開発や自社に適したアルゴリズムの開発の可否を低コストで試行できます。また、そもそもの導入の適不適や、導入後の業務フローの検討といった、開発や導入の前後の部分までもコンサルテーションを提供しています。

まとめ

ダイナミックプライシングは、需要に応じて高頻度で価格を変動させることで、収益の最大化を図る手法です。収益だけでなく、他にも余剰在庫の回避や人的リソースの効率利用といったメリットがあり、消費者側にもリーズナブルに商品やサービスを購入できるというメリットがあります。ただ、運用次第ではレピュテーションリスクを招き、逆に大きな損失を生む場合もありえます。
また、ダイナミックプライシングにはAIやITの活用が必要です。自社で対応できればよいものの、できない場合は社外からの調達となるため、委託先やSaaSの選択に際して見極めが必要になります。

業界や業種によっても、メリットを享受して活用できるかどうかは分かれますが、活用できるようであれば、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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