今回は、人間心理に働く原理の一つである「返報性の原理」を掘り下げていきます。
返報性の原理とは
受け取ると「返したくなる」という原理
返報性とは「跳ね返す性質」を指します。何を跳ね返すかというと、相手からのアクションであり、返報性とはリアクションの質と考えることもできます。
そして、返報性の原理とは、「返したくなる原理」を指します。そして、返報性の原理には以下の4つの種類があると言われています。
原理1:好意の返報性
好意的な態度を受けると、こちらも好意的な態度で相手にリアクションしたくなる原理です。
重要なポイントは、相手の好意的な態度を素直に受け止められる状況である必要があります。相手に対して(1)警戒すべきがポイントが少ない、(2)清潔感がある、(3)魅力を感じられる、といった状況で、より発動されやすくなります。
要は、相手の好意的なアプローチによって、好意そのもの印象よりも、懐疑的でダークな部分が逆に増強されると、好意の返報性は真逆の効果をもたらすことになります。
原理2:敵意の返報性
敵意を示すと、敵意で返したくなります。例えば、敵でも見方でもない他人がいきなり怒ってきたとします。それを敵意と捉える人は、相手に敵意を返すでしょう。
一方、相手の突然の怒りを敵意と捉えずに、「セルフコントロールできてない危ない人間だな」といった認知をする人は、相手を警戒しても、敵意を抱くことはありません。
同じ行動でも、受け手がどう受け取るかで、返報性も変わってくるのです。
原理3:譲歩の返報性
まさしく「譲り合い」の原理です。譲られると、こっちも譲りたくなるのはなんだか分かりますよね。
例えば、エスコートをする際は「荷物を持ちましょうか?」と聞くと、「いや、大丈夫ですよ~」と言われるかもしれませんが、最初から「あっ、荷物持ちますね!」と言ってしまえば、相手は流されるままに「ありがとうございます!」と言ってくれるようになります。
相手をエスコートする際は、譲歩されている感覚を与えずに、「これは譲歩じゃなく当たり前にやっているんですよ」と思わせるアプローチが大事なのです。
原理4:自己開示の返報性
相手の内面(本音)を開示されると、こちらも内面(本音)を開示したくなる原理です。相手から本音を引き出したければ、こちらが先に本音を語ることが大事です。
相手の弱みを握りたければ、自分の弱みを先に握るべきなのです。相手の過去のトラウマを引き出したいのであれば、自分の過去のトラウマを告白すべきです。
返報性の原理を仕事に活かす方法
方法1、第一印象をブラッシュアップする
まず、第一印象を出来る範囲でブラッシュアップすることが、返報性の原理をパワフルに生かす最も初めに行うべきことだと言えます。
・ヘアスタイル
・ファッション
・口臭
・体臭
・靴
・爪
・肌
などを、清潔感を軸に組み立てると良いでしょう。
外見で魅力を放つ必要はなく、外見で不快感をできるだけ削ぎ落すことが大事です。
初期の警戒心や不快感が大きすぎると、こちらの好意や自己開示に対する返報性は低くなってしまいます。
これは単純接触により好意の返報性を高める時も同じです。
ここら辺が理解できないと、「好意の返報性って逆効果じゃないか!」という経験をとても多くしていくことになります。
方法2、小さな本音をどんどん出していく
例えば、周囲の同僚と話す際に、ネットニュースをダシに使い、「でも、こういう男性って、自分は有り得ないと思うんですねー!」といった具合に本音を言うと、自己開示の返報性を高めることができます。
ニュースで登場する出来事や人物に対する本音なら、仕事で関わる人と利害関係がないので、本音を出しやすくなります。
他にも、金曜日の朝に、「今週も今日で終わりで最後まで粘っていきますが、正直もう体クタクタですよね!」といったような小さな本音も効果的です。
この小さな本音を自分が出していくことで、相手が自然にあなたに本音を漏らすようになり、お互いの関係が時間と共にかなり深くなっていくのです。
方法3、相手の敵に対する話に共感する
敵対心の返報性の活かし方もあります。それは、相手が敵対する話題を取り上げて、相手が敵対している相手や事柄に対してただ単に共感してあげるというものです。
敵対している者に対して共感してくれるあなたは強い味方だと認識していく可能性が高くなるからです。
方法4、相手の価値観をどんどん尋ねる
趣味や相手の情報を聞くのでなく、会話では相手の価値観をより多く聞いていくと、自己開示の返報性がとても高くなります。
「●●に対してどう思うのか」、「●●に対して譲れない価値とは何か?」と言った具合です。そして、尋ねる内容は必ず真面目な内容でないといけないわけではありません。
単純に恋愛観を深く長く聞き出すだけでも良いのです。大事なのは、本音の度合いです。Aという分野の本音を開示させれば、Bという分野の本音も引き出しやすくなります。
方法5、積極的に相談をする
相談はある種の自己開示です。そのため、独断的な行動を取るよりも、都度、相談を周囲に持ち掛けたり、他人のアドバイスを積極に求める方が、お互いの関係はとても深くなります。
相手の指摘やアドバイスに対して、取り入れてうまく行った部分をのちに報告すると、さらに良い関係を構築できるでしょう。
最後に:返報性の原理に沿えば、関係発展は爆速する
相手から高い返報性を得られるようになろう
以上、返報性の原理について掘り下げて解説してきました。返報性の原理を理解して適切にコミュニケーションを取ることができれば、初期の「打ち解ける」段階があまりにもスピーディーに展開します。
周囲から見えると「いつの間にあんなに仲良くなったの!?」と思われる機会も増えます。
社内よりも、接触頻度と接触時間が少ないクライアントなどと接する際に、こうした返報性を理解したコミュニケーションの実力が大きな効果を発揮します。ぜひ、今回の記事も参考にしてみてください。