新型iPhoneに搭載のLiDARスキャナとは?活用できるアプリも解説!
毎年9月頃になると、多くのiPhoneユーザーが楽しみにしている新型iPhoneの発表があります。現在、iPhone13シリーズまで発売されていますがiPhone12シリーズから新たに搭載された技術として「LiDARスキャナ」と呼ばれるものがあります。
LiDARスキャナは一体どのような技術なのでしょうか。この記事では、新型iPhoneに搭載されたLiDARスキャナの仕組みと活用できるアプリについてご紹介します。
LiDARスキャナとは
まずはLiDARスキャナを知るために、LiDARスキャナの概要、仕組みなどをご紹介します。
LiDARの仕組み
光検出と測距を意味する「Light Detection and Ranging」を略したもので、光で距離を測定する技術のことです。1960年代頃から地形調査や測量の分野で活用されており、近年は家電製品など身近なものにも取り入れられています。
仕組みとしては、物体をレーザー光で照射し、光が当たって跳ね返るまでの時間を計測して物体までの距離や方向を測定します。通常のレーダーと同様の原理ですが、光の光束密度が高く波長が短い特徴があるため、精度の高い測定が可能です。
dToFとiToFの違い
まず、ToFとは赤外光を利用して距離を測定する技術のことで、身近なものだと家庭用ゲーム機に採用されています。ToFは、dToFとiToFの2種類に分類されます。
dToFは、光が反射して受光するまでの時間差を測定して物体との距離を測定する方式です。外光に強く、物体との距離が離れていても計測できますが、光の速度を直接計測しなければならないため、高精度の計測が難しい点がデメリットです。
一方、iToFは、反射した光の位相のズレから物体の距離を測定する方式です。dToFよりも装置が小型で取り付けが簡単ですが、外光の影響を受けやすいので離れた距離の物体の計測は難しいでしょう。
これまでのスマホの多くはiToFを採用していましたが、iPhone12シリーズからはdToFを採用しているため、従来のスマホよりも野外や離れた距離での利用に強い特徴があります。ただし、Appleの情報では距離を5mまでと制限しており、これは距離を制限することで小型化、省電力化を狙ったものと考えられます。
LiDARスキャナの魅力
ここでは、LiDARスキャナの機能を駆使した魅力の一部をご紹介します。
リアルなAR機能
近年、カメラ機能やアプリゲームなどでは、実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて目の前にある世界を仮想的に拡張するAR機能がよく用いられています。AR機能を強化しているのがLiDARスキャナです。
LiDARスキャナが搭載されていない旧型のiPhoneの場合、ARアプリを利用するとまず平面を認識させる操作が必要でありました。しかし、LiDARスキャナが搭載されたiPhone12・13シリーズではそのままの状態で周囲の奥行きや形状を把握できるため、起動からすぐにコンテンツの利用が可能です。
また、旧型のiPhoneの場合、光量が足りない場所でのAR機能の利用ができませんでしたが、LiDARの搭載で光量の足りない場所でも問題なく利用できます。
夜間撮影も得意
どのような状況下でも、物体が光に反射して戻るまでの時間を計測して空間を把握できるようになりました。そのため、暗所でも被写体を素早く捉えられ、ピンボケしない写真撮影が可能です。また、LiDARスキャナの搭載はナイトモードを活用したポートレート撮影を可能にしたため、旧型のiPhoneでは不可能だった暗所でも背景をぼかす写真撮影ができます。
物体のサイズ測定
iPhoneにプリインストールされている計測アプリを使って、物体の高さや長さを正確に計測できます。LiDARスキャナを搭載していない旧型iPhoneでも計測は可能ですが、より素早く正確な計測が可能です。
また、計測時にガイドラインが表示されるのもiPhone12シリーズ以降の特徴です。計測方法としては、自動で四角形の寸法を計測する方法、手動で物体の寸を計測する方法、ガイドを使った寸法方法、定規表示を使って寸法をする方法の4種類があります。
人の身長測定
身長の計測も先程ご紹介した物体サイズの測定と同様に、計測アプリを使います。計測方法は、まず身長を測る相手の頭から足先までが画面内に収まるように調整します。すると、相手の頭部の上にラインが表示されライン下に測定結果が表示されます。計測結果は、写真撮影ボタンをタップすると保存できます。
LiDARスキャナの可能性
LiDARスキャナは、私たちの生活をより便利にしてくれる可能性を秘めています。ここでは、LiDARスキャナが持つ可能性をご紹介します。
航空レーザー測量
航空機やドローンなどでは、LiDARを搭載して人工衛星を活用した測量技術「GNSS測量機」と3次元の慣性運動を検出する装置「IMU」を使って、正確な位置情報を把握しながら距離データの解析を行っています。この技術は、地表面の座標を計測して導き出されたデータから地形を抽出するのに利用されています。
航空機の場合、下部にLiDARが搭載されていても機体の傾きによってレーザーが真下に照射されるわけではないので、正確な数値の検出が困難です。そのため、GNSS測量機で機体の位置を把握してIMUで機体の姿勢や加速度を加味し、精度の高い測定を可能にしています。
また、標高と水深のデータを同時に収集するタイプも存在し、海岸線や河川などの水底の地形の抽出にも活用されています。
地上レーザスキャナ
地面に設置して測量する固定型と車などの移動体に設置する車載型があります。固定型は、測定場所の地面にLiDARを設置して高精度かつ高密度の測定点群を収集する方式です。工場やプラントなどの大型施設や内部の各種設備の管理、道路などのインフラ検査などに利用されています。
一方、車載型は自動車や船舶などに設置する方式で、道路の標識や街灯、架線などの認識に利用されています。
自動運転技術
自動運転技術には、現状の道路状況や車間距離の把握、障害物の把握など、リアルタイムで変化する情報を正確かつ高速に処理する技術が必要とされます。LiDARの認識技術は、人間の目の代用としての役割を期待されており、その他の認識技術と組み合わせることで自動運転技術の実現に有効なのではないかと研究が重ねられています。
LiDARスキャナの能力を発揮できるアプリ
LiDARスキャナはすでにアプリでの活用も進んでいます。ここでは、LiDARスキャナの性能を最大限発揮できるアプリをご紹介します。
3d Scanner App
3Dモデルの生成ができるアプリで、通常3D生成にはPhotogrammetryなどのソフトを使った数回の処理が必要でしたが、3d Scanner Appであれば短時間で簡単に生成できます。無料にもかかわらずリメッシュ、テクスチャ作成、メッシュのスムーズ化など豊富な機能が備わっているのが魅力です。
また、出力形式が一般的に活用されているOBJ形式はもちろんのこと、SafariでAR表示ができるUSDZ形式、3Dプリンタに用いられるSTL形式など用途に合わせた出力が可能です。ただし、LiDARスキャナが搭載されているiPhone12シリーズ以降の端末でしか使用できないため注意しましょう。
RoomScan LiDAR
部屋の見取り図作製に特化したアプリで、部屋の全ての壁をスキャンするだけで部屋の見取り図が起こせます。壁の凹凸までは取り入れることはできないので立体的な図面の作製はできませんが、不動産屋で扱う間取り図程度であれば簡単に作製できます。
ただし、先程ご紹介した3d Scanner App同様に、LiDARスキャナを搭載していないスマホでの利用はできず、また日本語にも対応していません。
Effectron
LiDARセンサーで取得した地形に対してリアルタイムでエフェクトを加えることができるアプリで、カメラレンズを向ければ瞬時にエフェクトを加えられます。エフェクトの種類は宇宙空間や洞窟、道路を歪ませるなどさまざまで、随時アップデートで追加される予定です。エフェクトの一部には映画のシーンさながらのものあり、現実にはあり得ないシチュエーションを楽しむことができます。
まとめ
今回の記事では、iPhone12シリーズから搭載されているLiDARスキャナの優れた性能や活用できるアプリについてご紹介しました。最新のiPhone13シリーズに搭載されたLiDARスキャナは、ストレスのない操作や高度な描画処理、カメラセンサーを活用したデータ収集を可能にしています。LiDARスキャナを搭載したスマホは、これから先も数多く登場してくることでしょう。LiDARスキャナが搭載されたスマホを手に入れるか迷われている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
▼関連記事
今注目のxRとは?VR・AR・MR・SRなどの先端技術や活用事例を紹介
マスカスタマイゼーションとは?注目されている背景なども解説
ひとつとして同じ答えがない。毎回応用の連続。だから面白い。