海外におけるプロダクトデザインの賞にはどんなものがある?受賞作品もご紹介!
普段何気なく使っている日用品。機能性が高い上にデザインがおしゃれだとさらに使いたくなりますよね。
機能性・デザイン性が高い日用品のさらなる発展のために、国内外にはさまざまな賞が用意されています。この記事では、特に海外に焦点をあてて、人々の生活を助けるスタイリッシュなプロダクトデザインとして表彰された受賞作品をご紹介します。
プロダクトデザインとは
プロダクトデザインとは、その名の通りプロダクトをデザインすることです。プロダクトとは、例えば家電製品や機械部品、生活用品などが該当します。プロダクトデザインは3D、すなわち立体的なデザインが基本です。
デザインにあたっては、生産品の特色や機能を十分理解して活かしつつ、センス良く仕上げる必要があります。高い機能性と人が使いたくなるようなデザイン、これらを両立することが要求される、難易度の高いデザインの領域です。
レッド・ドット・デザイン賞/red dot design award
レッド・ドット・デザイン賞は、創設1955年の長い歴史を持つドイツのデザイン賞です。「利用」「機能」「魅力」「責任」の4つの要素を軸に審査が行われます。プロダクトデザイン・コミュニケーションデザイン・デザインコンセプトの3つの分野で高い能力を持った専門家が受賞作品を選定しており、国際的にも権威が高い賞です。
プロダクトデザイン2017受賞:「BALMUDA The Pot」
BALMUDA The Potは、容量600mlのコンパクトでスタイリッシュな電気ポットです。手になじむハンドルは持ちやすく、湯切れの良いノズルが特徴です。例えば、ドリップコーヒーはゆっくり、カップ麺は素早く注ぐなど、用途に応じて注ぎ方を合わせることができます。さまざまな角度から確認できる電源ランプの優しい灯りは、ほっこりあたたかい気持ちになるでしょう。BALMUDA The Potは、レッド・ドットのプロダクトデザイン賞と同時に、グッドデザイン賞、および後述するiFデザイン賞も受賞しています。
IDEA賞/International Design Excellence Award
IDEA賞は2020年に創設40周年となる、長い歴史を誇るアメリカのデザイン賞です。IDEA賞には毎年数千のエントリーが集まっており、IDEA賞を受賞すれば、応募者は自らのキャリアを世界に向けてアピールすることができます。IDEA賞はインスピレーションや深さ、前進性を重視しており、「デザインイノベーション」「ユーザーの利益」「発注者やブランドの利益」「社会の利益」「ふさわしい美しさ」を基準として受賞デザインが選出されます。
2018Gold受賞:ヤマハ発動機株式会社「MOTOROiD」
MOTOROiD(モトロイド)は、「人とマシンが共鳴するパーソナルモビリティ」を目指した電動バイクの実験モデルです。ヤマハ独自のテクノロジーであるAMCESによって、電動バイクが自立・前進します。人工知能が人の顔や動作を認識することで、手招きに反応して近づくといった機能を持つため、人と電動バイクが意思疎通しているような感覚を体験できます。MOTOROiDはIDEA賞に加えて、この記事でも紹介している世界3大デザイン賞である、iFデザイン賞、レッド・ドット賞(デザインコンセプト部門)も受賞しました。
iFデザイン賞/iF Design Award
iFデザイン賞は1953年に創設されたドイツのデザイン賞です。近年、iFデザイン賞は毎年70に及ぶ国々から6,000以上の応募を受けています。iF(インダストリー・フォーラム・デザイン・ハノーファー)は、「良いデザインを見出し、サポートし、プロモートすること」「デザインが生活の中で果たす役割について一般の人々の注意を喚起すること」「事業会社がデザインを長期的な戦略に組み込むのを助けること」「プロのデザイナーを保護し、彼らの実績に対する意識を高めること」などを目的として授賞活動を行っています。
2016プロダクト部門・公共デザイン金賞:株式会社リプルエフェクト「HODOHKUN Guideway」
HODOHKUN Guideway(歩導くんガイドウェイ)は、視覚障がい者の方が白杖でやわらかいマットを確認しながら歩くことができる、歩行誘導ソフトマットです。従来の誘導路は凹凸で視覚障がい者を誘導するものでしたが、「足裏に伝わるゴムの質感」で誘導することで、歩行者に大きな安心感を与え、足裏の疲労感や痛みを軽減します。歩導くんガイドウェイはiFデザイン賞に続き、2019年にはIDEA賞銅賞も受賞しました。歩導くんガイドウェイは現在、日本各地の福祉センターや市役所などの施設内に設置されています。
レクサスデザインアワード/LEXUS DESIGN AWARD
レクサスデザインアワードは、トヨタの高級車ブランド「レクサス(LEXUS)」が、2013年に創設したデザイン賞です。革新的なアイデアで、豊かな社会やより良い未来を想像する気鋭のクリエイターを発掘・育成することを目指しています。受賞者には、世界的クリエイターによるメンターンシップ制度の提供、ニューヨークでのワークショップへの招待などのさまざまな特典が付与されます。この賞の審査において重視するポイントは、「予見」「革新」「魅了」です。2019年には1,548点の応募から入賞作品6点が選出されました。
2019年グランプリ:リサ・マークス「Algorithmic Lace」
2019年のレクサスデザインアワードは、リサ・マークスの「Algorithmic Lace」をグランプリに選出しました。「Algorithmic Lace」は3Dのレースを新しいメソッドによって織り成す、乳房を切除した人のためのレース下着です。審査員のジョン・マエダ氏によると、「伝統的なプロセスと最新の3Dモデリングによるオーダーメードのブラジャーが、機能と見た目の美しさを併せ持ち、乳がんサバイバーの本来の身体の美しさを尊重しながら、自分の身体にあった快適な下着としての機能を実現しようとしている」と絶賛しました。
ジェームズ ダイソン アワード/James Dyson Award
ジェームズ ダイソン アワードは、ダイソン掃除機の発明者として有名なジェームズ ダイソン財団が運営するプロダクトデザイン賞です。ジェームズ ダイソン アワードの目的は、次世代のデザインエンジニアを称え、育成し支援することです。「次世代」というコンセプトのため、対象者はデザインやエンジニアリングを学ぶ学生、および卒業後4年以内の若手エンジニアやデザイナーに限定されています。ジェームズ ダイソン アワードは、常識にとらわれないユニークな考え方によって試行錯誤を繰り返した、より良い機能を持つ作品を評価します。
国際最優秀賞2017:「The sKan」
「The sKan(スキャン)」は、カナダのマックマスター大学工学部の学生4名が取り組んだ低コストのメラノーマ診断用携帯機器です。メラノーマは、欧米人に多く見られる皮膚がんですが、早期の診断と適切な治療をすれば大事には至りません。しかし、先進的な検査をするとなると、莫大な費用が発生してしまいます。その結果として、毎年多くの人がメラノーマによって命を落としています。The sKanはメラノーマの低コストかつ精密な検査の実施を可能にし、欧米の社会問題を打開することに成功しました。ジェームズ ダイソン アワードは、このチームに国際最優秀賞とともに、さらなる研究のための賞金30,000ポンド(約450万円)を授与しました。
まとめ
プロダクトデザインの受賞作品は、どれも私たちの生活をより良くしてくれるアイテムばかりだということがおわかりいただけたかと思います。「受賞」と聞くと華々しいイメージが先行しがちですが、プロダクトデザインに関しては、受賞作品はその後の私たちの生活に溶け込み、なくてはならない存在になっていきます。また多様性が認められる現代は、クリエイターのセンスやスキルがより一層求められるといえるでしょう。今後の受賞作品にも、ぜひ注目してみてくださいね。
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