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弁護士に聞く、InstagramやYouTubeにアップロードした作品の権利はどうなるのか?
INTERVIEW 2019.4.17

弁護士に聞く、InstagramやYouTubeにアップロードした作品の権利はどうなるのか?

五常総合法律事務所 弁護士 数藤 雅彦

前回の記事では、デジタルコンテンツと著作権法に詳しい五常総合法律事務所の弁護士・数藤雅彦氏に、「デザイナーが他の人のテキストなどを引用する際の注意点」について伺いました。今回は、クリエイターがInstagramやYouTubeなどのプラットフォームに作品をアップする際の権利関係や注意点について伺います。

―今回は、Instagram(インスタグラム)やYouTubeなどのプラットフォームに作品をアップする際の注意点について教えてください。STASEONの登録クリエイターさんからこんな質問が寄せられました。

自分のポートフォリオを作る代わりに、Instagramにアカウントを作って作品をアップしているのですが、アップした作品の著作権はどうなるのでしょうか?


数藤:これもよくある質問ですね。結論から言いますと、Instagramにアップした作品の著作権は、クリエイターの方に残ります。権利がまるごとInstagram側に行くわけではありません。ただ、権利は渡さないものの、Instagramに対してかなり広い範囲で作品の利用を認めることになります。

―「権利は渡さない」のに「利用を認める」とは、どういうことでしょう?

数藤:まず前提として、著作物を他人に使わせる方法は大きく2種類あります。1つは、著作物の権利を「譲渡」すること。もう1つは、著作物の利用を「許諾」することです。

―「譲渡」と「許諾」ですか。

数藤:1つ目の「譲渡」の場合は、相手に権利を渡してしまうわけですから、自分も原則としては使えなくなります(なお日本の著作権法では、著作者人格権という別のタイプの権利が自分に残りますが、今回は著作権に絞って説明します)。

―譲渡というからには、タダであげなければいけないのですか?

数藤:いえ、譲渡は有償でも無償でもどちらでも可能です。相手に権利を渡す以上、むしろ有償の場合が多いでしょう。次に2つ目の、「利用許諾」というのは、権利は自分が持ち続けたままで、一定の用途で相手も利用できるようにすることをいいます。一般的に「ライセンス」という場合も、この利用許諾のことを指します。


譲渡と利用許諾を示した図

―それで、Instagramの場合も、2つ目の利用許諾なのですね。

数藤:そうですね。Instagramにアップした作品の著作権がどうなるかは、ユーザー登録時に同意する「利用規約」に書かれています(ちなみに、2012年にFacebook社がInstagram社を買収したため、InstagramはFacebook傘下のサービスです。この利用規約も、Facebook社と合意することが明記されています)。現時点では、2018年4月19日改訂版の利用規約が見れますので、これをもとに説明しましょう。アップしたコンテンツの権利については、次のように書かれています。

Instagram利用規約(2018年4月19日版)より

弊社が利用者のコンテンツの権利の帰属を主張することはありませんが、利用者はコンテンツを使用するためのライセンスを弊社に付与します。

利用者がそのコンテンツについて保有する権利に変動が生じることはありません。弊社は、利用者がサービス上で、またはサービスを通じて投稿するいかなる利用者のコンテンツについても、その権利の帰属を主張しません。ただし、利用者がサービス上で、またはサービスに関連して、知的財産権の対象となっているコンテンツ(写真や動画など)をシェア、投稿またはアップロードする場合、利用者は、弊社が(利用者のプライバシー設定およびアプリ設定に沿って)利用者のコンテンツをホスト、使用、配信、変更、運営、複製、公演、公開あるいは翻訳し、また派生作品を作成する非独占的、使用料なしの、譲渡可能、サブライセンス可能な全世界を対象としたライセンスを付与するものとします。

―すみません、ざっと読んだだけでは意味がよくわかりません(笑)

数藤:たしかにわかりにくい文章ですね(笑)。たいていの利用規約は、法的な争いにそなえて、なるべく意味がブレないように厳密な記載が求められるので、このような書きぶりになっています。大きく前半と後半に分けてみますと、「ただし」の前までの文章では、ユーザーがアップしたコンテンツの権利は、ユーザー側に残り、Instagram側(つまりFacebook社)に権利が譲渡されないことが強調されています。ユーザーの権利を取るかのように読める規約が炎上するケースも時々ありますので、各社の規約ではたいていこのように念を押す書き方になっています。

―なるほど。前半はわかりました。ただその後の文章が難しい・・

数藤:「ただし」以降の後半では、ユーザーがコンテンツをアップロードする場合に、Instagramに対して、コンテンツを複製したり配信することなどを広くライセンスすると書かれています。つまり、権利はユーザーが持ったままですが、Instagramに対し、アップした画像をコピーしてネットで表示してもいいよ、と許諾しているわけです。

―「非独占的」や「譲渡可能」など、ふだん使わない言葉が並んでいます。

数藤:「非独占的」というのは、Instagram側に独占させないということ。つまりクリエイターから見ると、同じコンテンツを例えばTwitterなどの他のサービスにもアップできるということです。「譲渡可能」というのは、Instagramが別の会社に、このライセンスを移すことができるということですね。よく見ると、ライセンスが「使用料なし」つまり無償だということもしっかり明記されています。

―それって結局は、Instagramのやりたい放題になってしまうのでは・・?

数藤:たしかにそう読む余地もあります。Instagram側はとても広い範囲で、あなたのコンテンツを使えます。もっとも、Instagramは、全世界に向けて無料で便利なサービスを提供しているわけですし、そこへユーザーがアップしたコンテンツについてはある程度広く利用したいでしょう。それはそれで理解できる考え方です。

―どんな形で利用されるのでしょう?

たとえば、InstagramのAPIを使った他のサービスでも、ユーザーがアップしたコンテンツを表示できます。ただ、まったく無制約というわけではありません。先ほどの利用規約では「利用者のプライバシー設定およびアプリ設定に沿って」Instagram側が利用できるとも書かれていました。つまりユーザーは、アップした作品の公開範囲を設定することで、その範囲で自衛することもできます。

―このようなルールになっているのはInstagramだけですか?

数藤:いえ、ユーザーがコンテンツをアップできるプラットフォームの多くは、似た条件になっていますね。たとえばYouTubeの利用規約では次のように書かれています。

YouTube利用規約(2018年5月25日版)

6. お客様の本コンテンツ及び行為C項より

明確にするために付言すると、お客様は、ご自分の本コンテンツに対する所有権を全て留保します。ただし、お客様は、YouTubeに本コンテンツを投稿することにより、YouTubeに対して、本サービス及び YouTube(並びにその承継人及び関係会社)の事業(本サービス(及びその派生著作物))の一部又は全部の、あらゆる媒体形式による、あらゆるメディアチャンネルを通じてのプロモーション及び再配布を含みますが、これに限られません。)に関連して、世界的、非独占的、無償、サブライセンス可能かつ譲渡可能な、本コンテンツの使用、複製、配布、派生著作物の作成、表示、出版、翻案、送信可能化及び実演に関するライセンスを付与します。お客様は、また、本サービスの各利用者に、本サービスの機能を通じてこれらの本サービス条件に基づいて認められる限度で、本サービスを通じてのお客様の本コンテンツへのアクセス、並びに当該本コンテンツを使用、複製、配布、派生著作物の作成、表示、出版、送信可能化及び実演することについての非独占的なライセンスをここに付与するものとします。

―これも読みにくいですが、何度か読み返して、同じようなことを言ってるのはわかりました(笑)

数藤:よかったです(笑)。規約というのは要するに契約書のようなものですので、いちどじっくり読んでみることをオススメします。

―他に、コンテンツをアップする際の注意点はありますか?

数藤:いろいろありますが、1つ挙げるとすれば、InstagramでもYouTubeでも、自分がアップしたコンテンツが、他人(法律用語で「第三者」といいます)の著作権などの権利を侵害していないことが求められます。他人のコンテンツを勝手に上げるなという、ある意味当たり前のことですね。クリエイターの方がアップする作品は、ほとんどはオリジナルだと思いますが、ときどき、創作の都合で、他人の作品を許可なく取り込んだものをアップされる方もいらっしゃいますので、そのあたりはご注意ください。

―最初の質問に戻りますと、Instagramに権利を譲渡するわけではないので、クリエイターがポートフォリオ代わりに使うことも可能なのですね。

数藤:可能です。ただ、別の観点から1つ注意点があります。たしかに、Instagramは便利ですし、ユーザーも多いので、自分の作品を多くの人に見てもらえる可能性が高まります。バズって、一夜にして知名度が上がることもあるでしょう。ただ、ユーザーが多いということは、ライバルも多いということです。たとえば桜をイメージした作品をアップして、ハッシュタグに「桜」とつけたとします。桜に関するデザインを探しているクライアントは、「桜」のハッシュタグで検索しますので、ライバルの作品もずらっと出てきてしまいます。

―比べられてしまいますね。

数藤:とにかく作品が目に触れればいいという方には、プラットフォームサービスは相性がいいのですが、簡単に他に目移りされてしまう可能性もあります。Instagramなどのプラットフォームを使うことは一長一短ですので、どこかのタイミングでポートフォリオを作って、用途に応じて使い分けるのも一案でしょう。

―たしかにそういう側面もありますね。今回はプラットフォームサービスにアップした作品の権利関係について詳しく教えていただき、ありがとうございました。


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五常総合法律事務所 弁護士

数藤 雅彦

東京大学法学部卒業。早稲田大学大学院法務研究科修了。
ウェブサービスや映像、デザイン、アートに関する法的アドバイス、契約サポート等を広く取り扱う。大学・企業等での著作権の講演やレクチャも多数実施。
第二東京弁護士会情報公開・個人情報保護委員会委員長
筑波大学法科大学院非常勤講師
著作権法学会、デジタルアーカイブ学会会員