Cookie規制はいつから?規制後のマーケティング戦略も紹介
デジタルマーケティングにかかせないCookieですが、近年規制を強める動きが広まっています。なぜ規制の強化が始まっているのか、また規制によって具体的にどのような影響が生じてしまうのか、本記事ではCookie規制について詳しく解説したうえで、規制後のマーケティング戦略におけるポイントを紹介していきます。
Cookieとは
はじめに、Cookieとは何か、概要や種類について詳しく見ていきましょう。
概要
Cookieとは、Webサイトを閲覧したユーザーの情報を、ブラウザに一時的に保存するシステムのことを指します。IDやパスワードなどのユーザー情報の保存に利用され、サイトの分析や広告の配信などにも活用が可能です。
Cookieの種類
Cookieは以下の2つの種類に分類されます。
- ファーストパーティーCookie
サイト運営側発行のCookieのことです。自社サイトを閲覧したユーザーの情報を保存する際に利用されています。 - サードパーティーCookie
サイト運営側以外の企業が発行しているCookieのことです。ユーザーの閲覧履歴を複数のサイトを跨いで追跡するのに使用されています。
キャッシュとの違い
データ保存の響きから似たようなイメージを持たれがちなのがキャッシュです。キャッシュは閲覧済みのWebページを再度閲覧する場合に、画像・HTML等のデータを保存しておくことで表示スピードをあげる役割をもっています。キャッシュはWebページの情報保存をするもの、Cookieはユーザーのアクティブ情報を保存する仕組みと理解すると良いでしょう。
Cookie規制はいつから?
ここからはCookie規制について、世界の状況と合わせて解説していきます。
規制の背景
CookieはWeb上のマーケティングにおいて絶大なメリットをもつ一方で、近年プライバシーの観点で問題視もされています。問題とされているのは前述したうちのサードパーティーCookieで、ユーザーの行動を追跡する仕様が個人のプライバシー侵害に繋がると見なされ始め、規制の動きが広まりました。
個人情報保護の活動が広まるきっかけとなったのが、2016年の米大統領選挙・イギリスEU離脱をめぐる選挙で、イギリスの選挙コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカ社がフェイスブック上で実施した性格診断です。性格診断を利用したユーザーと、ユーザーの友達約8000万人の個人情報を無断で収集し、ユーザーの心理を分析して選挙の結果を誘導するようなコンテンツの配信を行ったのです。
このことにより世界各国で法規制が強化され、例えばEUのGDPRやアメリカ・カリフォルニア州のCCPAといった個人情報関係の規制が実施されました。
GDPRとCCPAについて詳しく説明すると、GDPR(EUデータ保護規制)とは2018年5月に施行された、EU圏内における個人情報を取り扱う全事業者に対し、Cookieでの情報取得の際にユーザーの同意を求めることを義務付けた規制です。
一方、CCPA(米カリフォルニア州消費者プライバシー法)は2020年1月に執行された、企業に対してユーザーの個人情報収集時にその旨を通知することを義務付けた規制です。
日本の対応
日本でも2020年6月に個人情報保護法が改正され、2022年6月に全面施行が予定されています。
日本での個人情報保護法見直しのきっかけとなったのは、2019年リクルートキャリア運営のリクナビにおける問題でした。リクナビがサービス利用者である就活生の閲覧情報などをもとに内定辞退率を算出し、他企業へ販売をしていたことが発覚したのです。
このような事態を防ぐため、2022年に施行される新たな規定には、氏名と結びついていないネットのCookie情報などを、個人関連情報として他社に提供する際の規制などが設けられています。具体的には、Cookie利用の際の本人の同意の義務化などがあります。
しかし、日本のCookie規制は他国と比較して遅れているのが現状です。WebサイトにおけるCookie利用の同意取得バナーの設置についても、アメリカでは約30%、EUでは約80%の企業が実施しているのに対し、日本ではわずか約5%の企業しか対応していません。このように日本ではまだCookieに依存している企業が多いと言えますが、法改正の実施に伴い、今後Cookie規制が厳しくなることが予想されます。
各ブラウザの対策状況
次に、主なブラウザ3社の規制への対応状況を紹介します。
- Apple
2017年に顧客のプライバシーを保護する「ITP1.0」を実装しました。ITP1.0はSafariでのサードパーティーCookie利用時のユーザーデータ収集を制限するもので、アップデートを重ね制限の徹底を行っています。 - Google
Appleの後を追うように、2020年にChromeでサードパーティーCookieの利用を規制しました。1年以上の延期とはなったものの、現在は2023年の廃止に向けて準備を進めていると発表しています。 - Firefox
強力なトラッキング規制を行っていて、ブロック機能なども搭載させています。
Cookie規制がもたらす影響
ここまでは、Cookieが規制される理由や規制状況について説明しました。ここからは規制による主な影響について解説します。
リターゲティング広告が制限される
サードパーティーCookieを活用し、サイト来訪者に広告配信を行う追跡型広告をリターゲティング広告といいます。サードパーティーCookieが使用できなくなってしまうとリターゲティング広告の利用が不可能になるため、リターゲティング広告に力を入れている企業はマーケティングに大きく影響するでしょう。
現に、2021年5月時点でSafariにおけるサードパーティーCookieは完全に利用不可の状態になっているため、リターゲティング広告が制限されており、様々な企業に影響が出ています。
コンバージョン数を正確に出せなくなる
サイト訪問者が商品の購入や資料の請求など、サイトにとって有益なアクションを起こしてくれた状態をコンバージョンといいます。
多くの広告媒体社がコンバージョンの計測を行っていますが、規制下ではCookie上の情報の一部が消失する可能性があるため、正確なコンバージョン数を導き出すことが難しくなってしまいます。
情報利用の確認を取るサイトが増える
ユーザーにCookie利用の同意を取る際に、従来のような長文の中に項目を記載するやり方だと、ユーザー側の確認が不十分になりトラブルに発展してしまう可能性があります。そのため初回アクセス時に同意を確認するバナー・ポップアップを表示するサイトが増えると予想されるでしょう。また、今までは必要なかったCookie利用の同意を確認するためのシステムを開発しなければならないため、サイト製作者の負担が増えると考えられます。
規制後のマーケティング戦略
以下では規制後のマーケティングにおけるポイントを紹介します。
自社サイトに力を入れる
広告の効力が弱まるため、今後は自社サイトに流入したユーザーの転換率向上に力を入れることが必要になってくるでしょう。転換率とはサイトの集客数に対して商品が購入される確立を表し、CVR(コンバージョンレート)とも呼ばれます。
サイト内のコンテンツを充実させて価値を高めることでユーザーとの距離が近づけば、ユーザーの意見や疑問など、今後のマーケティングに活かせる情報を広く入手することが可能です。
カスタマージャーニーを見直す
ターゲティング広告の規制後は、ユーザーに対してサイト再来訪を促す広告を打つような一方的なマーケティングは難しくなるため、カスタマージャーニーの見直しが重要になるでしょう。
カスタマージャーニーとは、ユーザーの商品・サービス購入までの過程を可視化したものを指します。カスタマージャーニーを見直すことでユーザー全体の動きを正確に把握でき、ユーザー目線の発想でマーケティングを考えられるようになるため、ユーザー側から能動的に選ばれる仕組みづくりが可能になります。
コミュニケーションを重視する
自社の情報を高い熱量で発信してくれるインフルエンサーとの関係構築や、自社商品・サービスに愛着を持ってくれている方に宣伝を依頼するアンバサダーマーケティングなどに力を入れて、新規顧客開拓だけに捉われずLTVの向上にも繋がるマーケティングが必要です。LTVとは顧客が自社との取引開始から終了までどれだけの利益を与えてくれるかの総額を指します。人口減少が続き新規顧客開拓が困難な日本では、既存顧客との関係性に重きを置いてLTVを高めるマーケティングが重視されています。
また、顧客との直接的なコミュニケーションに力を入れることも重要です。自社サイトを訪問した顧客と一対一でやり取りが可能なWebチャットツールを導入することで、顧客の疑問に迅速に対応ができ、購買検討を後押しすることができるでしょう。
まとめ
この記事ではCookieの概要、規制の現状、そして規制がもたらす影響と対策について解説してきました。
Web広告にかかせないサードパーティーCookieはプライバシーの観点から規制が強まっていて、マーケティングへの影響は計り知れないものとなっています。しかし、見方を変えればユーザーとの関係を見直すよい機会でもあるのです。従来の広告依存による一方的な商品・サービスの宣伝を改め、ユーザーの視点に立ち直り、長期的な関係を築くためのマーケティングを今一度考えてみましょう。
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