【第3回】動画・映像クリエイターに聞く!〜良いクリエイターの条件〜
現役のWeb動画クリエイターへのインタビューを通して、動画制作の仕事を紐解く連載の第3回です。前回の記事では、動画クリエイターに必要とされる能力やスキルについてみていきました。最終回となる今回は、クリエイターの動画作品の良し悪しについて考えていきましょう。
動画・映像クリエイターを目指している方、動画・映像クリエイターという仕事に関心がある方であれば、キャリアを考えていく際の参考になるのではないでしょうか。
Q.良い動画・映像クリエイターとは?
A. 一概にクリエイターの良し悪しの評価をすることは難しい。自分なりの強みを持っていることが重要
業界に関わらず、「真似される動画」、「パイオニア的な動画」は独自の表現を持っている良い作品といえるかもしれません。一方、現在の「動画」と呼ばれるメディアは視聴環境や掲載媒体が多岐に渡ることもあり、本来は一概に「優れた作品」を定義できません。
当たり前ですが、「映画」と「CM」では、動画を通じて取りたいコミュニケーションの目的が異なります。属する業界によっても良し悪しの基準が変わってくることでしょう。
時代によっても良し悪しの評価が変わります。特にWeb上のトレンドは熱しやすく冷めやすいため、留意が必要です。流行りのトレンドを追っていたらもう熱が冷めていた、ということもしばしばです。また、映像の撮影、編集の機材も進化を続けています。過去には、難しかった表現が現在では簡単に表現できることもあります。
クリエイターが独自の強みを持っていることは、業界に共通して、重要と言えるでしょう。
私の場合はドキュメンタリーテイストの動画制作を得意領域としています。ドキュメンタリーテイストの動画制作を意図的に極めようとしていた訳ではなく、多様なクライアントの要望に応えていく中で自分の得意領域と言える分野が見つかりました。私の周りの動画・映像クリエイター達も得意なジャンルを確立している人たちばかりです。「おもしろ動画」を強みとしているクリエイターもいます。Web動画のビデオグラファーであれば、自分自身をクライアントに売り込む必要があるため、強みを持つことは生計をたてていく上での必須要件です。その人にしか作れないような映像が作れれば仕事の引き合いは間違いなく増えるでしょう。
MV(ミュージックビデオ)、ドローンでの撮影、VFX(ビジュアルエフェクト)など、強みの方向性は多種多様です。Web動画はまだまだ発展途上のメディアであるため、新たな強みを自分で作り出す余地が残っています。
Q.良いクリエイターに共通する特徴は?
A.いいクリエイターは良い作品をとにかくたくさん見て、表現力に磨きをかけ続けている
先の質問と同様に、一概に「優れた作品」や「良いクリエイター」の定義はできないのですが、個人的に尊敬しているクリエイターに共通する点を考えてみたいと思います。
優れていると思うクリエイターに共通することといえば、ジャンル問わず様々な映像作品をインプットしている点です。
前にもお伝えした通り、映像制作の需要は拡大を続けており、今ではインターネット上で、数えきれない映像作品に触れることができます。良い映像作品を簡単にインプットできる環境が既に整っているといえるでしょう。
良いクリエイターは自分自身が映像オタクで、自分以外のクリエイターの作品についても熟知していることが多いと思います。良いクリエイターといえども、全ての表現を自分の独自の発想で生み出している人はいないでしょう。多かれ少なかれ他人の作品の影響を受けます。むしろ、良い表現を見つけることに熱心に取り組むからこそ、独自の強みが生まれているのではないでしょうか。
動画・映像制作をはじめたばかりの方には、自分が良いと思った作品の表現をどんどんと模倣してみることをおすすめします。最初の内は真似をすることで、全く面白くない作品が出来上がるかもしれません。ただし、真似をしていく内に自然とその表現を効果的に取り入れられるようになります。スキルアップの練習法としては最適です。また、人の表現を知ることが、「自分だったら」という思考に繋がることもあります。オリジナリティの確立にもつながるでしょう。
Q. フリーの動画・映像クリエイターとして、活躍するために必要なことは?
A. クライアント企業の要望に応え続けること。独りよがりな制作活動はNG
フリーランスとして活躍する際にも、良い作品をどんどんインプットしながら、独自の強みを見つけていくことがまず重要です。
一方、独自の強みがあるだけでは、フリーランスとして生計を立てていくことは難しいでしょう。独自の作品が作れることと、フリーのクリエイターとして活躍することは違います。ここではWeb動画を制作する「ビデオグラファー」に絞って話をします。
先にお伝えした通り、「ビデオグラファー」は、撮影、編集、監督といった動画制作工程の全てを一人で完結させる必要があります。フリーランスとして活動する場合、この動画制作工程には、営業活動や企画作業も含まれます。「ビデオグラファー」は一人で制作活動に打ち込むアーティストではありません。クライアント企業がいて初めて成立する仕事です。独りよがりな制作活動はNGで、クリエイターがどれだけ自信を持った作品でも、クライアント企業から良いと思われなければ、仕事を続けていくことはできないのです。
例えば、企業から商品・サービスのプロモーション映像の作成を依頼された場合、クリエイターはその商品・サービスの内容を深く理解することが求められます。その商品・サービスが顧客に受け入れられることを狙って、映像を企画する訳ですから当然です。その際、クライアント企業の意図が汲めなければ、案件を失注してしまうでしょう。そのため、映像制作のスキルだけでなく、高いコミュニケーション能力やビジネスセンスも必要なのです。必要に応じて、クライアント企業の業界の知識を得ておくことも大事でしょう。
また、幅広い要望に応えられるように、表現の幅を広げておくことも大切だと思います。動画撮影、編集の機材のコストが下がったことで、誰もが簡単に動画制作に着手できるようになっています。一般的な動画制作のスキルだけでは、他のクリエイターと差別化がしづらい中、制作スキルの幅を広げていくクリエイターもいます。撮影、編集だけでなく、アニメーション制作にも打ち込む、デザインを勉強するなどが挙げられます。フリーランスとして活躍するビデオグラファーはクライアント企業の要望に応え続ける為に試行錯誤をし続けているのです。
まとめ
全3回に渡り、現役クリエイターの方にお話をうかがいましたが、いかがでしたか?Web動画クリエイターという仕事は未成熟からこそ、チャレンジしがいのある職業なのかもしれません。今後は5G(第5世代次世代移動通信システム)が普及し、スマートフォンにDVD1枚分の容量が数秒でダウンロード可能になるそうです。こうしたインフラが整ってきていることから、映像ビジネスは今後ますます大規模になるのは間違いありません。Web動画クリエイターの仕事に興味のある方にとっては追い風の時代と言えます。今回のインタビューが動画クリエイターを目指す方の背中を押すきっかけとなれば幸いです。
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