バーチャルオフィスとは?オフィスを借りる前に確認しておくことなども解説
昨今、さまざまな業務のデジタル化が拡大しており、出社しなくてもパソコン1つで就業できる環境が整いつつあります。それに伴い、働き方の多様性も見直され、レンタルオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースといった、貸しスペースを活用する方が増加しました。
これらは、会社員・フリーランス・個人事業主などが契約し、自身のパソコンや仕事道具を持ち込んで働く場所のことです。そして、オフィスという概念そのものにも変化が表れており、バーチャルオフィスと呼ばれる新たな仕組みが注目を集めています。
この記事では、バーチャルオフィスの概念からサービス内容・メリット・デメリットなどを解説します。
バーチャルオフィスとは
バーチャルオフィス(Virtual Office)は、日本語で「仮想の事務所」という意味を持ちます。利用者が実際の店舗や会社を用意しなくても、仮想空間を事務所の代わりに利用できるサービスです。ここからは、バーチャルオフィスのサービス内容・登場の背景・利用すべき事業者のポイントをご紹介します。
サービス内容
バーチャルオフィスは大きく分けて「基本サービス」と「オプションサービス」の2つがあり、オプションサービスを追加するほど利用料金が上がる仕組みです。基本サービスには「住所貸し」と「郵便物受取」の2つがあります。
住所貸しは、実際の事務所や店舗を構えていない利用者が、バーチャルオフィスから住所を借りられるサービスです。
利用者の多くは、会社を経営している方が大半を占めていますが、自宅の住所を公開・使用したくない場合にも利用されます。また、法人の所在地としての「登記」も可能です。
なお、利用者はバーチャルオフィスで借りた住所に居続けられる訳ではないため、郵便物の受け取りに不備が出やすくなります。その場合は、バーチャルオフィスに届く郵便物を転送してもらえるサービスを活用します。郵便物受取サービスは、各提供事業者によりオプションサービスとして別途料金が必要になる可能性もあるため、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
2つ目のオプションサービスは、内容が多岐にわたりますが、なかでも代表的な書類保管サービス・固定電話番号や電話の転送および代行サービス・会議室といった3つのサービスについて解説します。
- 書類保管サービス
自社の根本規則を記した「定款」や株主名簿などを、代わりに保管してくれるサービスです。株主名簿は、法律で本店に保管することが義務付けられているため、バーチャルオフィスを本店として法人登記する際に利用します。ただし、自社が個人事業の場合やバーチャルオフィスを支店として活用するケースだと、登記した住所に株主名簿を保管する義務は生じません。ほかにも、重要書類をご自身で保管することが不安な方や、自宅で保管するスペースが足りない場合にも重宝します。 - 固定電話番号や電話の転送および代行サービス
固定電話番号を借りることで、着信を自身の携帯電話に転送したり、電話窓口の対応を代行したりできるサービスです。固定電話や電話窓口の設置は、企業の信用性に関わる重要なポイントになるため、ブランド力を上げる目的で活用するのも良いでしょう。 - 会議室
取引先との商談や会議のために、会議室を必要とする方も少なくありません。多くのバーチャルオフィスでは、基本サービスやオプションとして会議室が提供されています。料金体系は「価格×時間数」で算出するサービスから、時間枠と価格があらかじめ設定されているサービスまでさまざまです。なかには「数時間以上の利用で割安になる」というサービスを設けている提供事業者もあります。
バーチャルオフィス登場の背景
1960年代にアメリカでバーチャルオフィスの原型が誕生しました。日本では当初「レンタルオフィス」と呼ばれており、2006年頃からはバーチャルオフィスとしてサービスの提供が開始されます。バーチャルオフィスのニーズが高まった要因に、携帯電話・インターネットの普及と、SNS・オンライン通話をはじめとしたコミュニケーションツールの発展が挙げられるでしょう。
これらの要因から、場所や時間を問わず、誰もが世界中の人々と仕事ができる時代へと移り変わりました。それに伴い、2018年頃より「働き方改革」を推進するための法整備が始まったことや、2020年頃から広まり続けるコロナウイルス感染拡大の影響もあり、バーチャルオフィスの注目度が急増しています。
バーチャルオフィスの導入におすすめの事業者
自宅やクライアント先で業務に携わることが多いながらも、住所記載の名刺を渡す必要がある事業者の方なら導入を検討しましょう。また、住民税などの節税につながることから、個人事業主の方にもバーチャルオフィスがおすすめです。
さらに、東京都心などの大都市に拠点を置きたい事業者にも適しています。なお、複数の店舗を所有する事業者は、法人化する際に本社所在地を明確にすることが義務付けられています。したがって、家主から「本店登記」が認めてもらえない場合には、バーチャルオフィスの活用がおすすめです。自宅が賃貸だったり、親と同居していたりと、法人登記が難しい場合にも有効的な手段と言えます。
ネット社会の現代においては、住所や電話番号・メールアドレスなどの連絡先が漏れ、プライバシーが脅かされる事件が後を絶ちません。一般的には自社サイトに問い合わせ先を明記しますが、個人事業主や自宅を事務所とする方には、低リスクで活用できるバーチャルオフィスおすすめです。
バーチャルオフィスのメリット
バーチャルオフィスを利用する場合に得られるメリットは、主に4つあります。
コストが削減できる
ビジネスを成功させるためにはアクセスが良く、人の往来のある都心が理想的ですが、地価の高い場所での賃貸には膨大な初期費用がかかり、起業へのハードルが上がります。また、事務所や店舗を構えようとすると、賃貸料や光熱費・インターネット利用費・その他設備費が毎月かかってしまいます。しかし、バーチャルオフィスであればこのような費用が一切かかりません。
早いスピードで開業できる
初めて事務所を構える際には、場所探しから入居審査・電話やインターネットの回線工事などに時間がかかります。起業を思い立ってから仕事を開始できるまで、最低でも1ヶ月以上はかかるでしょう。
一方、バーチャルオフィスであれば電話回線もインターネット利用も、契約日当日からスタートできます。平均すると、1週間の審査・契約ですぐに業務を始められるため、すぐに事業を始めたい方にもおすすめです。
都心の住所を確保できる
一等地を選んで事務所を開業することは、多額の資金を必要とするため、並大抵の資金力では実現しません。しかし、同じ事業でも都会と地方とでは問い合わせや発注の量に差が出てしまうのも事実です。
地方に仕事場を持ち、なかなか発注につながらず苦戦しているのであれば、一度バーチャルオフィスを試してみるのも良いでしょう。予算がなくとも、一等地の住所を名刺やホームページに記載できるため、ビジネスの成功につながるかもしれません。
会議室が利用できる
クライアントとのミーティングや打ち合わせには、スケジュールの融通が利き、会話が周囲に漏れないような場所が理想的です。東京進出を考えている会社などであれば、オフィスを構える前段階として、都内にバーチャルオフィスを用意しておくのも有効な手段の1つです。いつでも使用できる会議室があれば、主要都市で商談や打ち合わせがあった際に便利です。
バーチャルオフィスのデメリット
バーチャルオフィスを利用するデメリットには、次の3つが挙げられます。
許認可が取れないケースがある
業種に応じた利用の可否はあらかじめ確認しておきましょう。例えば、弁護士・税理士・司法書士・有料職業紹介業者・宅地建物取引業者など、業種によってはバーチャルオフィスでの開業が許可されません。ただし、許認可については緩和措置が存在するケースもあるため、事前の確認が必要です。
作業を行う場所を別に確保する必要がある
自宅を仕事の場として利用することが困難な場合、作業場所を別で確保しなければなりません。カフェなどを利用する手もありますが、その場合必要な荷物を携帯する必要があります。また、職種によっては顧客との面会でプライベートな空間や、無音の環境、クリエイティブな作業のためのスペースが必要です。
他社と住所が重複してしまうことがある
1つのバーチャルオフィスに何社もの利用がある場合、借りる住所が他社と重複してしまう可能性があります。住所をインターネットで検索すれば、同じ住所の会社が出てくる可能性が高くなるため、取引先に不信感を抱かれる恐れもあります。
バーチャルオフィスを借りる前に確認しておくこと
バーチャルオフィスを選ぶ際には、次の3つのことに注意し確認することが大切です。
借りる場所にマイナスイメージがないか
銀行で法人口座を開設する際の審査には、本社所在地が必要になります。過去に、同一住所を登記していた法人が詐欺などの犯罪行為に使用していた経緯がある場合、同じ犯罪グループが名義を変えて利用していると疑われ、口座開設に影響が出てしまいます。事前に下調べを行い、バーチャルオフィスの候補地が犯罪歴のある住所ではないかを確認しましょう。
駅からのアクセスがよいか
住所だけを借りて利用するバーチャルオフィスでは、住所のブランド力や利用料だけが考慮され、駅からのアクセスが無視されがちです。しかし、名刺やホームページで公開する会社所在地の立地が良いうえに、駅からのアクセスも良ければ、会社の信頼性や知名度向上にとってさらに理想的といえるでしょう。
外観・内観は管理されているか
バーチャルオフィスを選ぶ際、オンラインで全ての契約手続きができてしまう場合、建物そのものを一切見ずに利用が完結してしまう可能性があります。ホームページや住所が信頼性を得やすいものであっても、実際の建物の外装や内装がみすぼらしかったり、清潔感がなかったりすることがあるでしょう。
そういったオフィスを顧客や金融機関の審査員が目の当たりにした際、会社のイメージが損なわれ、信頼を失う可能性があります。契約前には一度、現場を確認しましょう。
まとめ
フリーランスや個人事業主として起業する場合など、新たに事業を始める方にとって、店舗や事務所の賃貸料や維持費は大きな負担です。資金のない初期段階において、一等地の住所を得られるバーチャルオフィスを利用することは、効率的かつ多くの有益な側面があります。ただし、同じように契約している他社と住所がかぶってしまったり、実際の立地や建物に不備があったりとリスクも伴うことから、事前の確認・検討が重要です。
自宅を職場とする方や個人経営でプライバシーを守りたい方は、これを機にバーチャルオフィスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
▼関連記事
VRが持つ5つの可能性:コンテンツに留まらないVRのチカラ
VRクリエイターとは?必要なスキルやスクールなどを紹介
メタバースの意味とは?注目される背景や代表的なサービスなども解説