採用マーケティングの具体的な手法とは?役立つツールなども解説
近年、少子化やコロナ禍の影響、就職・採用活動の変化から、採用プロセスそのものをマーケティングの概念に当てはめる、「採用マーケティング」が注目されています。今回は採用マーケティングの仕組みや手法、活用できるメディアなどをご紹介します。
採用マーケティングとは
採用マーケティングは、優秀な人材を効果的に採用することを目指した手法です。オンライン動画やインターネットなど、多くの情報を手軽に伝えられる媒体を使用することで、従来の紙媒体による採用活動にはなかったアピール力・拡散力が期待できます。また、求職者のニーズを見極めて、自社が必要とする人材の正しい設定、セールスポイントを整理することで、ターゲットとなる人材へ確実にアプローチすることが可能です。
採用マーケティングの基礎知識
採用マーケティングの実践にあたって、「ファネル」と「ペルソナ」という2つのキーワードを押さえておく必要があります。
- ファネル
ファネルとは、「商品を購入するまでの流れ」として使われるマーケティング用語で、採用マーケティングにおいては「採用=商品」として考えられます。
採用活動の主な流れとなる、認知・比較検討・応募・入社の各プロセスにおいての課題を明確にし、適切な施策を打つことで採用までのスムーズな流れが完成します。 - ペルソナ
ペルソナとは、学歴や職歴、専門知識のレベルなどを基準に設定した、企業が求める人物像を指します。採用マーケティングではペルソナを明確に設定し、求職者をどう絞り込むかを考える必要があります。
メリット
採用マーケティングを導入するメリットの1つは、ペルソナなどを意識した採用活動を行うことで、企業が求める人材の応募が増加することです。また、企業と求職者のミスマッチが少なくなるため、内定辞退や早期退職を防止できます。これにより、余計な広告費などのコストを長期的に削減することも可能です。
注目されている背景
採用マーケティングが注目されている背景には3つの観点があります。
1つ目は、少子高齢化による人材不足、優秀な人材確保の難化など、人材に関する点が挙げられます。加えて、通年採用のルール化や、就職活動の長期化などで採用が難しくなっていることからも採用マーケティングが注目されています。
2つ目はITの進歩により、インターネットを介した採用活動やダイレクトリクルーティングが一般化しつつあることです。リモートによる「インターンシップ」や選考が普及し始めたことも理由のひとつでしょう。
また、価値観の多様性が進んでいることが3つ目の要因として挙げられます。求職者は、従来の採用活動の中で重要視されてきた一括採用や終身雇用の制度よりも、就職のタイミングや収入を超えたやりがい、ワークライフバランスなど、価値観の違いに寄り添った採用活動をする企業を求めています。
採用マーケティングの手法
ここでは、採用マーケティングの具体的な手法を4つご紹介します。
人物像・採用基準の明確化
自社の現状と企業活動の展望を理解した上で、どのような人材が必要かを明確にしましょう。例えば、業績を上げるための人材を確保したければ、これまでの採用や社員のスキルデータなどを参考に、今後採用する人材の基準を明確化する必要があります。
また、業務の拡大・縮小の関係で、人材の質だけでなく量にもこだわりたい場合、採用人数と期限を明確にしましょう。
このように、人物像を明確化することで、求職者が自社の求める基準に合致しているかを判断できるため、採用基準も明確化されます。
自社・競合の分析
市場や顧客が変われば、競合と差別化すべきポイントが変わり、競合が変われば自社の強みと弱みも変化します。自社と競合の分析には、マーケティング分野で広く使用されている「3C分析」というフレームワークが活用されます。3C分析は「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の頭文字をとったもので、それぞれを分析することで、採用活動の方向性を見定めることが可能です。採用活動においても3C分析を応用し、自社や競合はもちろん、市場について分析する必要があります。
施策の実行
採用候補者を母集団として形成するためには、自社の魅力を伝えるコンテンツの作成が重要です。コンテンツの内容や質にこだわるのはもちろん、文言やデザイン、使用する媒体なども綿密に決めていきましょう。
また、企業が求める人物像を明確化するだけでなく、実際に採用が決まった場合にどのような仕事をするのかがイメージしやすくなるようなコンテンツの作成が必要になります。
振り返りと改善
採用が実施され、すべてのプロセスが完了したら、次の採用活動を見据えた振り返りと改善が必要です。採用活動の過程で発生した問題や求職者とのミスマッチの事例などを振り返り、新入社員の動向や活躍の有無を継続的にチェックしましょう。社内の変化に敏感になることで、採用活動におけるPDCAサイクルを効率的に回すことができます。
採用マーケティングに取り組む際のポイント
ここでは、採用マーケティングに取り組む際に、押さえておきたいポイントを2つご紹介します。
魅力ある組織作り
マーケティング能力に長けていても、商材そのものに魅力がなければヒット商品を生み出せないように、組織に魅力がなければ採用活動は難化してしまいます。魅力ある組織づくりのため、採用活動を経て得た分析結果などを基にして社内体制を見直しましょう。また、採用マーケティングを成功させるために、社内の各部署から採用に関する協力を得られる組織作りにも取り組んでいく必要があります。
データの収集と活用
より緻密なペルソナの設定とターゲットへのアプローチのために、経験値や感覚とは異なる客観的な目線でのデータ収集が必要です。データ調査の結果や人材管理システムに蓄積された情報などをベースに、自社の強みはどこにあるか、どのような人材が活躍できるのかを細かく分析して採用活動に活かしましょう。また、採用プロセスを最適化するため、採用管理システムを整備することも重要です。
採用マーケティングに欠かせない3つのメディア
ここでは、採用マーケティングを実現するために欠かせない3つのメディアをご紹介します。
ペイドメディア
広告費を払って掲載してもらうメディアのことで、採用活動においては、テレビやラジオ・雑誌や新聞・Web広告やindeedなどの求人媒体が該当します。ペイドメディアの効果は広告費とほぼ比例するため、効果を上げるためには相応のコストが発生します。また、掲載枠に限りがあるため一部の情報しか訴求できない側面もあります。
オウンドメディア
自社の採用ホームページやブログのメディアで、ペイドメディアよりも自由なタイミングで情報を掲示できるメリットがあります。しかし、自社のみで運営して集客する必要があるため、マーケティングに関する専門知識がないと思うように採用活動が進められないうえに、アプローチできる求職者の人数や質も限られてしまいます。
アーンドメディア
FacebookやInstagramなど、求職者側が起点となるメディアのことです。求職者が企業に関する文章や写真・動画を投稿することで、求職者の間で企業の認知度が高まります。当事者同士の情報共有であるため信頼が得やすいメリットがありますが、企業側からの情報コントロールが難しいため、炎上のリスクが高いことも認識しておかなければなりません。
まとめ
この記事では、ファイネルやペルソナの考え方を基に、採用マーケティングの組み立て方を見てきました。ターゲットの明確化から自社・競合の分析・振り返りに至るまで、各ステップのポイントをおさえて進めていくことが大切です。
また、採用マーケティングの実施はこれらのプロセスはもとより、自社の魅力を高めること、客観的データの集積や活用が前提となります。従来型のペイドメディアを始め、オウンドメディア、学生や求職者の発信力を利用したアーンドメディアまで、幅広く活用して採用活動を成功させましょう。
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