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ゲームプレイヤーの「気持ちよさ」を生みだすマイスター。キャラクターの魅力を底上げするエフェクトとは。
INTERVIEW 2021.3.24

ゲームプレイヤーの「気持ちよさ」を生みだすマイスター。キャラクターの魅力を底上げするエフェクトとは。

株式会社ミクシィ コトダマン事業部 アニメーショングループ マネージャー兼エフェクトチームリーダー 貫洞洋至

エフェクトデザインという仕事をご存知だろうか。エフェクトとは「効果」の事だが、ゲームでも意味合いは多岐に渡る。例えば、ゲームのキャラクターが繰り出す魔法や必殺技、さまざまな攻撃とそのダメージを表現するクリエイティブである。以前は3DモデラーやUIデザイナーが担当するケースがほとんどで、専業として確立されてからの日が浅い。業界内でもまだまだ数が少ない専門職といえるだろう。そんななか、株式会社ミクシィのエンターテインメント事業ブランド「XFLAG」から絶賛配信中の人気スマホアプリ『共闘ことばRPG コトダマン(※1)』でエフェクトチームを率いるのが貫洞洋至さん。15年におよぶUIデザインに加え、7年のエフェクトデザイン経験を有する業界のベテランリーダーだ。今回はこれまであまり表に出ることのなかったエフェクトデザインの世界について、貫洞さんに語っていただいた。そのやりがい、醍醐味、奥の深さに触れれば、明日からゲームを楽しむ視点が一つ増えることだろう。

最初の3年間は厳しい環境に身を置く

―はじめにゲームとの出会いを聞かせてください

なんといってもファミコンですね。ファミコンの進化に伴って育った世代です。ドラクエやFFなどRPGをよくやっていました。高校に入るとパソコン同好会があって。そこではじめてパソコンでドット絵を描いたんです。小さい頃からものをつくったり絵を描くのは好きでしたが、そのあたりからですね、ゲームのグラフィックデザインを職業として意識しはじめたのは。

―画材からPCへ、劇的な変化へのとまどいは?

不思議と不自由さは感じませんでしたね。逆にパソコンだと手を汚さずに描けるのが新鮮でした。これからの時代はこうなるんだろうな、と。スペックも低くて制限多かったですよ。でもその中でのやりくりが楽しくて。色数も16色しかない、640×480ぐらいのキャンバス。それがかえって創造性を刺激してくれました。

―正式にデザインを学んだのはその後ですか?

コンピュータグラフィックの専門学校に通いました。その頃はまだCGが世の中に出始めた頃で、それを使って何をするかもよくわからない。学校でもいまみたいにツールありきではなく、プログラミングから学びました。BASICやC言語でラインを引いたりですね。それがよかった。技術の本質を身につけることができたから。

―その後、映像会社に就職しますよね

その会社がゲーム部門を立ち上げる、ということで入社しました。新卒ということもあり現場ではかなりしごかれましたね。機材管理や進行管理も任されて、いろいろやらされたものです。ただ、3年間は下積みというか、厳しい環境でやろうと覚悟していたので乗り切れました。

―そこでは主にどんな仕事を?

ゲームの移植ですね。あるゲームを他のゲーム機に移して、そこで動くように作り変える作業です。これを半年間ぐらい休みなくやっていました。徹夜続きで家に帰るのは週1〜2といった生活。椅子に寝たりしてね。当時はマシンスペックが低くて、ロードにとてつもなく時間かかったりしていたので。熱にも弱いし、トライアンドエラーの繰り返しでした。

―その後、セガに転職されるわけですね

プロジェクトを大きくするからこないか、と声をかけていただけて。キャライラストをメインに手掛ける部署に、UIデザイナーとしてジョインしました。ボタンとか、メッセージのウインドウとか、文字までユーザーの目につく箇所の全てを担当。そこではじめてゲームを作るとはこういうことなんだ、と勉強させてもらったわけです。

―下積み時代とは環境が劇的に変わった

その前の会社ではゲームというよりも移植だったので、右から左へ移し替える作業中心。それに対してセガではゼロからフルスクラッチでゲームを作る経験ができました。21年間在籍して、20タイトルぐらい作りましたね。平均すると年1本ペースです。

―ミクシィへはコトダマンの移籍とともに?

コトダマンをセガから別の会社に運営移籍する話が現実味を帯びていたんですね。そんな、これからどうなるのかな、というやや不安なタイミングで移籍先にミクシィの名前があがったので、正直これはワンチャンあるかもと(笑)。移籍後は開発だけでなく、プロモーション含めてスケールさせるためのアクセルが思い切り踏めるようになりました。

いかにしてキャラの魅力を底上げできるか

―エフェクトデザインを意識するようになったのは?

あるプロジェクトが立ち上がるタイミングでエフェクトに転向しました。それまでもエフェクトには興味があって、UIとは親和性が高いんですよ。ボタン押したときのインタラクションとか、光ったりするのも演出なので。たぶん自分いけるんじゃないか、と思って手をあげたんです。

―UIとエフェクト、または一枚絵の違いを教えてください

まず一枚絵というのは読んで字の如く、一枚の絵から受ける印象が全てです。きれいだなとか細かいなとか、受け手の印象はその時点で終わり。でもUIは見た目の印象とその後の経験まで含まれる。いわゆるUXまでひっくるめてUIということになっていまして。どういう印象を持たれたいのか、どういう経験をさせたいのか。このボタンを押すことによって何がどう動くのか、その後の行動にまでシームレスにつなげる必要があるんです。

―奥行きというか、より立体的ですね

そうですね。つくるものはボタンとか型枠などの一枚絵なんですが、ストーリー含めてゲーム展開をぜんぶひっくるめて考えないといけません。プログラマさんと話しながら、このボタン押すとこうなるので、この画面の動きはこうですよね、みたいなやりとりのもと設計を進めていくのがUIデザインですね。

―エフェクトはまたちょっと違う感じですか?

エフェクトも結局はユーザーにどういう印象を与えたいか、ということになります。ただひとつ言えるのは、キャラをいかに魅力的に見せられるかどうか、がカギを握っている。たとえば必殺技がありますよね。当然、キャラに紐付いた技なわけですよ。そこで、このキャラならこうだよな、という演出が求められるんです。

―そのキャラらしさ、みたいな

強さであったり、派手さであったり。キャラデザイナーと打ち合わせを密にして、性格や特徴をつかむこと。そしてその魅力をさらに底上げできるような演出を考える仕事なんです。そのためにはキャラをより深く理解しないといけない。資料をたくさん読み込んだり、こちらからも質問を用意したり。

―意見がぶつかることも?

もちろんあります。他社IPキャラクターがゲーム内に登場するコラボの場合などは特に原作の再現方法について、かっこよくならないときなどはかなり議論しますね。あとはコトダマンでいえばエフェクト演出の時間が4秒しかないんです。

―すごく短いですね!

でも魅力を全て伝えたい、という意見もやっぱり出てきてしまう。だからワンアクション・ワンインパクトという決め事を作り、演出意図を軸に時間配分や要素を決めています。盛り込むのではなく削る作業ですね。これが結構難しいんですが、全部理詰めで構成して納得してもらっています。

―センス一発勝負ではないんですね

やはりキャラの中身に忠実に、ということですね。そして瞬間だけじゃなくて、ストーリーも考えて。でもエフェクトデザインは一枚絵とUIの両方の要素が混じっているので、個人的にはいちばんしっくり来る仕事だと感じています。これまでの経験が全て活かせるといいますか。

ユーザーの「すげーっ!」がモチベーションの素

―エフェクトの醍醐味ってなんですか?

ユーザーさんから自分の作ったエフェクトを「かっこいい」「すげーっ」「クオリティ高い」って言われたときですね。いまコトダマンは新キャラを紹介したり、次のガチャの告知をする配信番組を公式YouTubeチャンネルで行なっているんです。そこにコメント欄があって。ユーザーさんが直接感想を書き込んでくれるんですよ。これが何よりうれしい。創作の原動力になっています。

―これまでの他の仕事ではそういうことはなかった?

実はUIって正解が「いちばん自然であること」なんですよ。これが難しいところで、反応が遅い、ボタンが小さい、見づらい、わかりにくいなど不自然なところがかえって目立ち、ネガティブなイメージにつながってしまうんです。それを克服して良いUX(user experience)につなげるやりがいはあるんですが、私としてはエフェクトでゲームを演出する今の仕事に高いモチベーションを持っています。

―エフェクトのクオリティを上げる秘訣なんてあるんですか?

ふだんやっているのは、自然現象や事象をよく観察することですね。たとえば爆発。建物と火山みたいなものとでは全然違うんです。そのうえで、爆発したらどういう順番でものごとが起きるのか。発光が先なのか煙が先なのか。たぶん、一般の方はそんなの考えたこともないと思うんですけど。

―はい、いまお聞きしていても「どうだっけ…?」です

爆発してものが飛び散るにしても破片がどういう軌道を描くのか。戦車が大砲撃つとき、先に火が出てそれから煙がボフッと出るとか。アニメーションの演出作家さんもよく言っていますが、自然物をよく観察する。できることなら本物を見ることが大事です。無理でも動画をコマ送りにしてチェックする。

―なるほど、そこにリアリティの鍵が隠されていると

そうです、そういう観察したことを演出に落とし込むことが必要なんです。逆にいうとそこが抜けちゃうと安っぽい作りものになってしまう。大砲撃ってるのに煙だけ、とか。撃ってないのに先端で大爆発してたりとか。ですから、きちんと自然物や現象を見て、それを分解して事象として理解することが大切なんですね。

―まさに「神は細部に宿る」ですね。ほかにこだわっている点などあれば

UI、エフェクト両方にいえることなんですが、サイズ感、緩急、色合いなど、タイミング全般において臨場感や爽快感をユーザーに与えることですね。いくら良い絵でも、動きがもっさりしていたりヌルっとしていると魅力が半減してしまいます。イラストやテクスチャを活かしきるためにも、ベストなタイミングを計ることは欠かせません。

―常にユーザーがどんな感情を抱くのかを考えていると

ユーザーにどんな感情を抱いてもらいたいか、というところからの逆算ですね。それは深く考えます。たとえば素早さを印象付けたい場合、スピーディな展開の中にあえて一拍スローな表現を挟む。そうすることで刹那な1コマを切り取ったような演出になります。キャラクターやシチュエーションに即した工夫を随所に凝らしているんです。

技術だけすごくてもダメなんだ

―最近ではメンバーのマネジメントも仕事のひとつだとか

組織づくりや育成は本当に難しいですね。特にゲームデザイナーたちはみんなモノがつくりたくて集まってきていますから、創作意欲をスポイルしないように気をつけないといけません。とはいえ、作る仕事ばかりじゃない。データ管理やチェック、アイデア出し、資料作成なども立派な仕事ですから。

―単純に絵だけ書いていればいいってもんじゃないと

比重が作業に寄ってしまうとフラストレーションもたまりがち。デザイナーたちを育成するためにも評価はしっかりやっていきたいと思っています。いい悪いをこちらがきちんと示してあげることで、その人が同じアプローチするときに思い出せるようになるのが一番なんですよね。評価と教育が表裏一体になるという。

―機器の進化に伴って若手の技術力も上がっているんじゃないですか?

確実に上がってますね。技術はまさに日進月歩。新しいスペックの機器が出るとその都度使える容量や処理速度が変わります。それに応じて新しい技法が増えるんですよ。最新技術をキャッチアップした若手が新入社員として入ってくることもありますし。下剋上も充分あるのがエフェクトデザインの世界です。

―うかうかしていられないと

でも高度な技術を持っていても使いこなせない、あるいはどう組み合わせるかがわかっていない人もいます。インプットの量が足りなかったり、物事の本質がつかめていないことも。加えて重要なのはコミュニケーション力ですね。ゲームはひとりで作るものではありませんから。技術がいくらすごくても、それだけじゃ通用しないんです。

―今後のビジョンについてお聞かせください

マネジメントについて力を付けていきたいですね。育成や評価の知識をいま絶賛学び中なので、現場で実践して経験を重ねていきたい。ゆくゆくはどんな会社でも通用する市場価値の高いクリエイターを目指しています。エフェクトデザインとマネジメント、どちらの軸でも他社でも充分通用するレベルのスキルをつけていきたいです。

―ミクシィでなら幅広い経験が積めそうですしね

そうですね。なんでも受け入れてもらえる懐の深さもあるし、提案次第では新しいことにもチャレンジできる風土ですからね。やったらやっただけ跳ね返ってくる。フィードバックもある。自分自身の成長にとっておおいに役立つ環境です。

―では最後に、若手クリエイターへひと言

会社に入ることがゴールじゃない。だから会社に入る前に完璧である必要はない。会社の中で育ててもらう意識があったっていいと思います。で、入ってからどうすべきかというと、自分のやりたい方向に向かって舵をとっていなかくちゃダメですね。もちろん与えられた仕事もきっちりこなしつつ。

―どういうことでしょうか

上司は適性を見て配属を決めてくれるかと思いますが、自分からもやりたいことを発信していくことで自分の望んだ「将来こうなりたい」に近づけると思います。アピールすることも大事ということです。あと、仕事の型(作り方や技術知識)をしっかりと身につけること。もう終身雇用の時代ではありません。でもそのパートで自信が持てるような型を自分のものにすれば、それをものさしに市場価値がわかるようになる。自分がどれぐらい喰っていけるかわかってから、外に飛び出していけばいいんですよ。だからまずは型を極めていただきたいと。

―ありがとうございました!

コトダマンタイトル画面

※1…『共闘ことば RPG コトダマン』
スマートフォンで遊べる「ことば」で闘う新感覚RPGです。文字の精霊「コトダマン」を組み合わせて「ことば」をつくり、ステージクリアを目指します。つくった「ことば」の長さや数で敵に与えるダメージが変化し、最大4人で協力しながら遊ぶマルチプレイでは、友だちや家族とワイワイ盛り上がりながら、それぞれの知識を出し合って「ことば」づくりを楽しむことが可能です。生き物、食べ物、地名、歴史上の人物から、流行のあの「ことば」まで、29万語以上に対応。「ことば」は日々追加しており、無限に楽しみが広がる、究極のことば遊びゲームです。

ダウンロードはこちら⇒ 『共闘ことばRPG コトダマン』公式サイト
公式YouTubeチャンネル
公式Twitter

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取材・編集:早川博通( @hakutsu)
撮影:小野千明

株式会社ミクシィ コトダマン事業部 アニメーショングループ マネージャー兼エフェクトチームリーダー

貫洞洋至

専門学校卒業後、映像会社のゲーム部門にて他社タイトル移植業務における2Dデザインを担当する。その後、株式会社SEGA-AM2(現・株式会社セガ)に入社。コンシューマーゲームやスマホゲームのUIデザイン、エフェクトデザインを手掛ける。2020年より株式会社ミクシィに所属。「共闘ことばRPGコトダマン」のエフェクトデザインを担当。2020年9月コトダマン事業部 アニメーショングループのマネージャーに就任。

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