「自由に選び放題!」と言われると、そのサービスの質はとても良いものに見えます。良いサービスは使いたくなりますよね。
しかしながら、選択肢が多くなると、当初の印象とは裏腹に「でも、実際にめちゃくちゃ欲しいわけじゃないし、今日は買わなくっていいっか!」といったように、選択が回避されてしまうのです。
そこで、今回は選択回避の法則(決定回避の法則)を掘り下げて解説していきたいと思います。
選択回避の法則とは
選択肢が多過ぎると決定を回避してしまう法則
選択回避の法則とは、選択肢の多過ぎると、選択の決定を拒んでしまう法則を指します。
ニーズとして「選択の自由度」が存在しているはずなのに、ニーズ通りの環境を用意すると、決定が回避され、購入率や購入数が落ちてしまう。
だからこそ、自由度の高さを打ち出しながらも、オプションやプランはシンプルに提示することが、顧客の購入やお申し込みを促すうえではとても大切なのです。
選択肢が多いとなぜ決定を回避するの?
選択肢が増えるほどに比較負荷が激増するから
1つの選択肢から、2つに増えると、1対1で比較すればいいですよね。
しかし、2つの選択肢が3つになると、A対B、A対C、B対Cといった具合に3つの比較になります。
これが10個になると、2つの比較は10×10で100パータンも出来上がります。すると、「ちゃんと見極めるには、今では無理だ!」という風に脳は判断し、即決を拒むようになります。
選択肢が多くても良いケース
ケース1:入店と同時に購入が確約されている
例えば、飲食店は、入店したらほぼそこで食べますよね。入店が「そこで食べることの第一意思決定」でもあります。
だから、飲食店の場合、トッピングを豊富に用意することは、決定回避に繋がります。また、トッピングを楽しく打ち出すことができれば、決定までの時間が長くなってしまっても、顧客単価を上げることができます。
様々なトッピングがあり、様々な美味しさを打ち出すことで、顧客のリピート率を高めることもできます。
例えば、カレー専門店「CoCo壱番屋」(ココイチ)は、トッピングの豊富さが店舗の魅力の一つだと言えます。ココイチは、10店に1店しか潰れない驚異の生存率と言われています。
ココイチとは逆に、選択肢を絞った料理店で有名なのがラーメンの「一蘭」でしょう。シンプルなトッピングとオプションで差を出すことはできても、根本的にラーメンの種類は1つのみ。一人でマインドフルネスに食べることができ、お店の魅力がシンプルで明確です。
ケース2:集団で1つのことを選ぶようなサービス
野球チームがオーダーメイドでユニフォームを作る場合、チーム全員があれこれ好みを出し合って、オーダー内容を決めるはずです。
そうした複数の人が選ぶようなサービスを提供する場合は、個人の思考は、「選択肢」ではなく「自分の好み」をシンプルに主張するような会話が生まれやすいです。
そのため、各個人が選択肢で煩わしくなることが、自分一人で多くの選択肢を選んでいる場合よりも少なくなります。
選択回避とマジックナンバー
選択肢は4±1を意識すると良い!?
マジックナンバー7の法則は有名ですよね。人が短期記憶で記憶できる数字が約7つというものです。
脳科学の書籍などに目を通すと、マジックナンバーに関しては、様々な言及がなされています。マジックナンバーは実は7ではなく4という言及も存在します。
電話番号の区切りが「030-XXXX-XXXX」「090-XXXX-XXXX」といったように、3桁や4桁区切りなっているのも、短期記憶でストックできるマジックナンバーが4であることの指摘を正論づける際によく使われます。
どちらにしても言えることは、選択肢を増やすなら、私たちは「電話番号の区切り」ような工夫をすべきだということです。
人間は自由を好むけれど、負担は嫌います。選択肢とは、自由と負担の度合いをどちらも大きくする行為です。選択肢を増やすのであれば、負担を下げる施策を常に考えなければなりません。
選択回避を防ぐポイント
ポイント1:小さなコミットメントを促す
コミットメントは「自分で決定した明言する」ことです。例えば、かなり詳細なパーソナル診断結果を出してくれる有益なサービスでも、質問票が多過ぎて長すぎると、離脱してしまいます。
その際に重要なのが「次のページへ」といった小分けのコミットメントを促すことです。
「次のページへ」というのは、自分で次のページに行くことを明言していることを指します。これがコミットメントです。
最初に自分からコミットメントしたことは回避されづらい傾向を持っています。
サービスを申し込む際に、様々な選択肢がある場合、1つのページでは1度の選択だけに絞って、「次に〇〇の内容を選ぶ」といったボタンで小さなコミットメントを促すと良いでしょう。
ポイント2:選択肢を絞るコンシェルジュを用意する
提案営業などの肝でもあります。選択肢は意見を引き出すダシに使い、その意見から顧客の価値観・ニーズを分析し、最終的により絞った最適なプランをこちらで提示してあげるという流れです。
顧客は自由度の高いプランから、自分に最適なものをシンプルに割り出せる感覚になります。
こうした提案営業のような仕組みを、Web上で作ることで、無人でも顧客の決定回避をなるべく防ぐことができるようになります。
ポイント3:時には顧客に選ばせない
顧客によっては、「あなたは絶対にコレです!」と断言されたほうが楽な人もいます。様々な要素について語り過ぎると、当初は「このニーズだけ満たしていればよい」と考えた顧客が、商品やサービスについてより高いハードルを持つようになります。
すると、「今じゃない」「もっと調べてから」と決定回避をするようになります。
個別で営業できる際は、一辺倒にならないように気を付けましょう。相手が「選ぶ煩わしさ」を解消したいという強い気持ちが潜んでいる場合は、こちらから、「コレです!」とパーソナライズしてあげるようにしましょう。
最後に:断言や強い意志は潜在顧客の決定を促す
程よい選択肢の数とムードを作り上げよう
以上、選択回避の法則について分かりやすく解説してきました。
ランディングページなどでは、自社の製品や品質について強く断言し、強い意志で主張するものも多いですが、その主張は商品力を訴える意味での効果ではなく、「これだけを選んでおけばよい!」という選択回避を弱めることにむしろ大きな意味があります。
Webサイトの設計から、コミュニケーションの設計まで、常に程よい選択肢の数とムードを作っていくことで、顧客の成約や購買の率は高まっていきます。ぜひ、今回の記事も参考にしてみてください。