企業がデザイナー常駐させる際の注意点
社内にデザイナーを常駐させるメリットはたくさん存在します。あらゆるコンテンツにデザインを加えることができたり、デザインノウハウを社内にストックさせることができます。
社内のデザイナーを活用するノウハウがあったり、他のデザイナーへ引継ぐ仕組みが構築できていれば、どんなデザイナーが常駐しても、上手くデザイン業務をこなすことができるでしょう。
企業のプロモーションは「コンテンツ至上主義」の度合いが強まっているので、デザイナー常駐は時代に合った策だと言えます。
制作会社にその都度頼むよりも、デザイナーを一人常駐させるほうが、コストを抑えることもできます。
しかし、デザイナーを常駐させれば、デザインに関わる問題がすべて解決するとは限りません。
むしろ、せっかくデザイナーを常駐させたのに「使えない」「思ったクオリティのものが作れない」「作業が遅い」と、余計な負担が増えるケースもあります。
そこで、今回は、企業がデザイナーを常駐させる際の注意点について解説していきたいと思います。
1:仕事を振り続けるスキルが必要になる
デザイナーの仕事の質は「仕事の振り方」で決まる
とても大事なことにも関わらず、多くの企業がこの点を見落としています。
デザイナーが良い仕事をするには、こちら側が良い指示を出す必要があります。指示をする「ディレクター」という職業が存在するのも、このためです。
仕事を正しく振るにはスキルがいるのです。例えば、「今日、このWebのバナーさくっと作ってくれない?」と発注したとします。そして、デザイナーの作ったバナーが気に入らずに、サイトに使うのを止めたとします。そして、何事もなかったのように、新しい仕事を振ったとしたら、どうでしょうか?
これは、デザイナーにとっては、非常にダメージのある行為です。曖昧過ぎる発注はもちろん、デザインに対する褒めもねぎらいもなく、最終的には使わないという判断をしていますよね。
デザイナーは、今後何かを作る際に「でも、せっかく作っても、使われないということもあるしな…」という思いを抱くようになります。
すると、制作の瞬発力が一気に失われてしまいます。そんなデザイナーの精神状態に気づかずに「なんかどんどん作るの遅くなっているよね」などと指摘してしまうと、モチベーションはさらに下がってしまいます。
2:明確なゴールと過程を伝える
過程とゴールを具体的にする
デザイナーの仕事はそもそもが曖昧です。極端な話、提出したデザインに対して、上司は何時までも修正依頼できます。配色一つを考えても、ほぼ無限なパターンがあります。
ゴールの見えない仕事ほどデザイナーにとって辛いものはありません。
仕事を頼む側は、明確なゴールを伝え、できることなら、過程も明確にするべきです。
例えば、「修正を依頼するのは2回まで」と過程も具体的にしてくのです。そのことで、1回目でしっかり完成させようと作り込んでくれます。
曖昧で予測できない多さの修正が毎回あると、「どうせ修正してくるだろうから、最初はテキトーに作る」といった行動を取ります。こうなると、1つの制作物の完成がズルズルとダラダラと長引きます。
かなり稀ですが、1週間で制作が終わるようなランディングページに1年費やしてしまう例もあります。
3:仲介者、翻訳者を育てる
デザイナーにコミュニケーション力があるとは限らない
どんなデザイナーを常駐させてもうまくいくためには、社内に、デザイナーとその他大勢の社員を繫ぐ仲介役が必要です。
デザイナーの意図を翻訳し、他の社員や経営幹部に正しく伝える役割もあります。
デザイナーはコミュニケーション能力が高いとは限りません。コミュニケーション能力の高いデザイナーは、かなりの実績を上げて独立しているか、高い報酬でどこかの企業に属しているはずです。
完ぺきとはいかないデザイナーを上手に生かしていくことを考えなければなりません。
そのためには、デザイナー側の視点や思慮を持つことのできる人間を一人育てる必要があります。
デザイナーとその他の社員の仲介や翻訳をする役割が精力的であれば、デザイナーは孤独を感じずにいられます。この点も非常に大きいのです。
会社によっては「アイツだけ違うことをしている」という風な目で見られる可能性もあります。そんな時に、デザイナーが自己主張するよりも、第三者が適切に説明したほうが、他の社員も納得します。
4:デザインの価値を社内に伝える
社内全体にデザインの必要性を理解してもらう
企業がデザイナーを常駐させる際、全員がデザイナーの価値を感じ、デザイナー雇用を結論付けるということはないと思います。
経営者や一部の担当者が採用を決めるはずです。
そう考えると、デザイナーを常駐させ始める時点では、社内全体にデザインの価値が伝わっていないこともあるでしょう。それはデザイナーの自尊心を下げることにも繋がります。
せっかくデザイナーを常駐させるのですから、社員にとってもデザインのリテラシーを高めるチャンスです。
営業部門が「デザインなんて知ったこっちゃない」と考えるかもしれませんが、潜在顧客への営業の際に渡す資料の質で、即決しなかった後の反応が大きく変わる可能性もあります。
デザインは、コミュニケーションの一部を担います。デザイナーから学ぶことはとても多いはずです。
ですからデザイナーを常駐させる際は、デザイナーに社内セミナーを定期的にしてもらうと良いでしょう。
デザイナーと社員の関わりも増えて、良い効果が出てくるはずです。
最後に:やっぱりデザイナー常駐は素晴らしい
デザイナーにとってよりよい常駐環境を作ろう
以上、企業がデザイナーを常駐させる際の注意点について掘り下げてきました。
ほんとに小さなことの積み重ねでデザイナーのパフォーマンスは大きく変わっていきます。
もしデザイナーを常駐させようと考える際は、ぜひ、今回の記事を参考にしてください。
▼関連記事
・デザイナー雇用で会社が大きく変わる!?インハウスデザイナーのメリット
・グラフィックデザイナーの需要と将来性について
・デザイナーが押さえておくべき心理学のポイント