脳科学的に正しいクリエイターが生産性を上げる6つの方法
安定して自分のクリエイティブを発揮し続けることは、ハイレベルなクリエイターの条件の一つだと言えます。
やはり、できることならクリエイターとして常に満足なパフォーマンスを出していきたいですよね。
そこで、今回は脳科学的な観点から、簡単に取り入れられるクリエイターが生産性を高める方法についてご紹介していきたいと思います。
方法1.大脳基底核へのパターン化
週3回15分のハックトレーニングを身につける
クリエイティブのパフォーマンスに大きく関わる脳の機能はワーキングメモリと呼ばれています。
ワーキングメモリは、今やるべき仕事に対して、情報を即座に処理しながら、記憶から必要な情報を取り出し、処理します。
良いデザインや文章を生むにはワーキングメモリがフル活用できる状態が望ましいとされています。
ワーキングメモリは情報を一時的に保持する機能を果たし、短期記憶をストックする場所でもあるのですが、なるべくこの機能をゼロにすることが大切です。
そのためには、新しく覚えたことを大脳基底核に落とし込むことをしましょう。
大脳基底核はパターンを旺盛に取り込む場所です。ある研究によると、ルーティンを3度繰り返すだけで、長期増強と呼ばれるプロセスが始まると言われていいます。
新たなクリエイティブハックに出会い、それが今後も使えそうな場合は、週3回15分見返したり、試してみたりすることで、みるみるうちに、反射的に使える技が増え、ワーキングメモリをクリエイティブ作業に大きく使うことができます。
専門知識を習得するには、自分のスキルより少し背伸びしたレベルで学習をするようにしましょう。
方法2.会議の断捨離
短期記憶を損なう会議は無くしてしまう
会議もできることなら断捨離したいところです。長い話、長い会議、長い講義は短期記憶の観点から言えば、認知できる情報量をオーバーしていることが多いのです。
そのため、長期記憶に通じる狭い通路がいっぱいになってしまいます。専門家ルース・コルヴィン・クラークの「成人向けの授業は90分間を限度にすべき」だという指摘を参考にすれば、1時間半以上に新たなことを会議することは、避けたいでしょう。
クリエイターが実際に制作作業を本気で行いたい時間と会議の時間を乖離させるのも良いでしょう。
特に心配事があるだけでも、ワーキングメモリの場所を占有し、処理能力に影響を与えると言われています。
恐れていることや不安なことがあってストレスを感じていると、集中できないのはそのためです。
例えば、前日の夜に明日行うべき作業について決定し、クリエイターは朝からその業務を行うことをすれば、「心配事」を減らすことができます。翌日の朝には会議をせずに、一気にクリエイティブ作業のみに集中することができます。前日の夜にコーチングなどのコミュニケーションスキルなどを取り入れて、より心配を軽減させることも効果があるでしょう。
方法3.情動をラベリングする
今-ここの感情を自分で反芻させる
会社の中で脳にダメージを与える行為として挙げられるのが、「不公平性」「不確実性」「自律性やつながりの欠如」になります。
しかし、社内コミュニュケーションや社内の人間関係が完璧に安定していないこともありますよね。
そこで、不安定な状況に直面した場合、何かを感じている理由を言葉で表すことができれば、大脳辺縁系の興奮を和らげ、より適切な判断を下せるようになります。
単に感情的に反応してしまっては、問題を思い浮かべること自体が大脳辺縁系の興奮を高め、問題解決がさらに難しくなっていきます。
ネガティブには静かに反応し、その反応の理由を自己対話するようにしましょう。
方法4.接近目標を意識する
「問題」ではなく「解決策」を意識する
常に「問題」ではなく「解決策」に注目すると、何かを強く欲する思考になるため、逃げの姿勢がかなり減ります。
解決策に注視して起きる思考は、ドーパミンレベルを高め、「アイデアが降りてくる」といったような「インサイト」と呼ばれる現象を増やすと言われています。
ドーパミンは「本気で期待し得ること」でも増えます。解決策が見つかることを期待できれば、このポジティブな期待からドーパミンの放出を促すことにもなります。
パフォーマンス改善のエキスパートであるジム・バレルは、トップパフォーマーの目標設定の研究で、やはり人は「解決策」より「問題」に捕らわれてしまうと述べています。
問題は未知の解決策よりも確実であり、脳は自然と確実な方向を意識するからです。納品への問題点は強く浮かび、納品への解決策は浮かびづらいのはなんだか分かりますよね。「納期までに終わらせないといけない」、この意識は問題に捉われた思考とも言えます。
クリエイティブチーム内で常に解決策に思考が回るようにコミュニケーションを行っていくと良いでしょう。
方法5.立つことを増やす
本来人間の作業とは「立ちながら」が自然
Daniel B. Turbanらが1999年に行った研究では、会議室から椅子を全部撤去して、立ったままの会議を行ったところ、座って行う会議より時間が34パーセント短縮できて、下した決定の効果は変わらなかったようです。
また、セントルイス・ワシントン大学の研究者の「社会心理学・人格心理学研究」によると、立ったまま取り組んだときのほうが、座ったままのときより、明らかに意欲的に取り組み、縄張り意識も低かったと報告しています。
なぜ、立つと良いのか、これは立つことにより酸素の供給量が増えたことが一つにあるのではないかと思います。テストのために単語を暗記する場合、運動しながら(あるいはしてから)暗記すると、何もせずに暗記した人よりも、覚えられた単語が20%増えたというデータがあります。
例えば、有酸素運動を行うと、BDNFという脳由来神経栄養因子の分泌が、脳の細胞同士のつながりを強化すると言われています。
立ちながらの作業は身体運動的です。また、人類の進化の観点からも、座ってのデスクワークはかなり不自然な行為とも言えます。
立って作業できるデスクなどでのクリエイティブも非常に生産性が高まると言えますが、身体が立ち続けたせいで疲れすぎないことがポイントです。
方法6.プロセス向上のフィードバック
ステータスの引き上げを感じさせる
自分のステータスがわずかでも向上したと感じられれば、いつでも報酬となります。
ステータスの向上は、幸福感と結びつくドーパミンとセロトニンのレベルを高め、ストレス低下の指標となるコルチゾールレベルの低下をもたらし、さらには、集中力を高め、気分や自信を増やすテストステロンも上昇させてくれます。
ポジティブな神経伝達物質が増えれば、脳内で1時間当たりにつくられる新たなつながりの数が増加します。ステータスが高いと感じているほうが、アイデアを含むより多くの情報をより少ない労力で処理できます。
これまで述べたワーキングメモリ、解決策への視点、立つことの観点から言えば、作業が終わったその日の最後に、チームで立ちながらお互いのステータスが高まる発言をし合うことが良いかもしれません。
実質的なスキルが向上していなくても、努力の姿勢などのプロセスに目を向ければ、相手のステータス向上を促すことができるはずです。
最後に:クリエイティブとは脳のスポーツである
脳をいたわるアスリートこそ、力のあるクリエイター
以上、脳科学的な観点から、簡単に取り入れられるクリエイターが生産性を高める方法について解説してきました。
ワークライフインテグレーションという言葉がありますが、クリエイターとは、まさに私生活と仕事を統合的に行うべき職業だと感じます。
<参考記事>新時代の「ワークライフインテグレーション」という生き方
それは、脳は私生活でも常に浪費させられているからです。デジタルデトックスや良質な睡眠、栄養バランスを考えた食事を施してもなお、脳を徹底して休めることは大事です。
クリエイターにとっては、無になる休息が必要かもしれません。海外の脳科学に関する多くの書籍で瞑想や座禅が紹介されるのも納得できますよね。
脳をいたわるアスリートのように過ごして、日々のクリエイティブを大躍進させていきましょう。
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