国内の映画祭にはどんなものがある?一度は観ておきたい受賞作品5選
映画賞というと海外のアカデミー賞のイメージが強いですが、日本国内にもさまざまな映画賞があることはご存知でしょうか。今回は、日本国内で開催されている映画祭と、おすすめの作品をご紹介していきます。
国内の映画賞の位置づけ
日本国内には、現時点で20種類以上の映画賞が存在しています。近年は高い興行収入を上げる日本映画が増えつつあり、映画賞の受賞作は映画に詳しい方を唸らせる良作が揃っているといえます。
映画賞の種類ごとに審査員の出身業界や審査基準は異なっており、大ヒット作品が発表された年度でも受賞作品は映画賞ごとに異なっていることが珍しくありません。日本の映画賞で名前が挙がる作品に注目することで、意外な良作を見つけやすくなります。
日本アカデミー賞
日本アカデミー賞は、アメリカのアカデミー賞の運営方法にならって運営されている日本の映画賞です。第1回日本アカデミー賞が開催されたのは1978年であり、授賞式の様子は日本テレビで毎年放送されています。
世間一般における知名度が高い映画賞の1つであり、入賞作品を選考する際には、日本アカデミー賞協会によって推薦された協会員3,959名による投票で結果が決まるようになっています。協会の運営は年会費によって行われていることから、映画に携わる人が選考を行う映画賞とされています。
2019年3月1日に開催された第42回日本アカデミー賞では、監督賞・脚本賞・主演男優賞・主演女優賞であるなど、全16部門の最優秀賞と優秀賞が発表されました。
第42回最優秀作品「万引き家族」
下町で生活する5人家族を描いた映画です。年金で足りないぶんの生活費を万引きで埋め合わせるという生活を送っている一家が、別の家で複雑な事情を抱えている子どもを連れ帰るところから物語は始まっていきます。是枝裕和監督の集大成的作品であり、第42回日本アカデミー賞では最優秀作品賞を含む12部門を受賞しているほか、ゴールデングローブ賞やカンヌ国際映画祭といった海外の映画コンクールでも高い評価を得ている映画です。
https://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
第42回優秀作品「カメラを止めるな!」
上田慎一郎監督による初の長編映画で、無名のキャストが出演したことで話題になった映画です。冒頭から37分にわたって1シーン1カットでゾンビとの戦いが描かれるという特徴的な構成になっており、公開当時から野心作として世間の注目を集めていました。当初は東京都内の2館で上映されていましたが、最終的には全国367館で上映されるまでに至っています。日本アカデミー賞では8部門を受賞しており、話題となった映画です。
https://kametome.net/index.html
ブルーリボン賞
ブルーリボン賞は、東京スポーツ紙7社から構成される東京映画記者会が審査を行う映画賞です。審査員はすべて記者であり、会場の用意から賞状を授与するまでをすべて記者会が担当しているのが特徴となっています。
ブルーリボン賞が創立されたのは1951年ですが、記者会内部で選考基準がまとまらなかったことが理由で大手新聞社6社が脱退したことが理由で、ブルーリボン賞は1966年に1度廃止されています。再開は1975年からであり、以降は2020年現在まで継続している映画賞です。
なお、ブルーリボンという名称の由来は、賞状を結ぶリボンが青色だったからというエピソードがあります。司会進行役は前年度に主演男優賞、主演女優賞を受賞した人物が務めるようになっており、授賞式当日には毎年異なった盛り上がり方を見られます。
第62回作品賞「翔んで埼玉」
第62回目となるブルーリボン賞で作品賞を受賞した映画は「翔んで埼玉」です。原作となる漫画は1983年に執筆されており、2019年になってから武内秀樹監督によって実写映画化されるという経緯を持つ作品となっています。おもに東京都が舞台であり、埼玉県出身という時点で激しく差別されるという世界観でストーリーが展開される作品です。埼玉県について細かく分析されている作品となっており、公開当時における埼玉県民のSNS上での反応は、9割以上が好意的なものだったとされています。
毎日映画コンクール
毎日映画コンクールは1946年から開催され続けている映画賞です。1935年に第1回目が開催されているのですが、第二次世界大戦が起きたことで一時中止されていたという背景があります。再開されたのは1946年であり、当時の日本では映画が一番の娯楽とされていたことから、毎日映画コンクールは戦争からの復興を後押しする目的で始まった映画賞です。
2020年時点で74年の歴史を持っており、日本国内では「キネマ旬報アワード」に次いで長く続いている映画賞です。撮影スタッフを表彰する部門や俳優の名前を冠した部門であるなど、さまざまな映画関係者を表彰することが毎日映画コンクールの特徴となっています。
第74回日本映画大賞「蜜蜂と遠雷」
2019年の毎日映画コンクールで大賞を獲得した作品は「蜜蜂と遠雷」です。原作は累計発行部数134万部を超える人気小説であり、小説家の恩田陸によって、国際ピアノコンクールに挑む4人のピアノ奏者の戦いが描かれています。読者からは文中での音楽表現が『文字から音が聴こえる』ほどリアルであると高く評価されている小説であり、映像化に対しては賛否両論だったようです。公開後には2日で96,000人を動員して興行収入ランキング第4位に入っており、高い評判を得ている作品といえます。
https://www.toho.co.jp/movie/lineup/mitubachi-movie.html
TAMA映画賞
TAMA映画賞は、前年10月から当年9月までの映画作品を対象として、もっとも活力があったタイトル・監督・俳優を選出する映画賞です。審査を行うのは約50名の多摩市民によって構成される実行委員会であり、TAMA映画賞は2009年から多摩市で毎年1回実施されています。
開催期間中は審査会場となるホールに一般の人が入れるようになっていることが特徴です。TAMA映画賞は日本国内でもっとも早く開催される映画祭として、映画ファンから毎年注目を集めています。
第11回最優秀作品賞「嵐電」
鈴木卓爾監督の「嵐電」は、京都の路線列車である京福電気鉄道嵐山線、通称「嵐電」に関わる男女3組によるストーリーを描いた鈴木卓爾監督による作品です。人を運ぶ電車は人の想いも運んでいるという解釈の下で作られた映画とされており、走る電車がすれ違うように交差する人同士の物語を描いた作品とされています。嵐電の沿線には映画の撮影所が複数存在しており、嵐電沿線に住む映画製作者・西田宣善の発案によって映画製作が決まったというエピソードがあります。
キネマ旬報ベスト・テン
キネマ旬報は、1919年に第1号が発行された映画専門誌です。そして1924年から「キネマ旬報ベスト・テン」という名称で優れた洋画を選出するようになり、1926年からは邦画も選考対象となっています。第1号の発行から100年以上が経過しており、日本国内ではもっとも長い歴史を持つ映画賞です。
審査委員会が新聞記者や映画評論家などで構成されていることが特徴で、他の映画賞と異なる作品を選びやすい点が「キネマ旬報ベスト・テン」の特徴であるとされます。
第93回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位「火口のふたり」
荒井晴彦監督による「火口のふたり」は、小説家の白石一文が書いた同名小説を映画化した作品です。挙式を控えた女性が昔の恋人と再会し、現在の恋人が戻ってくるまでの5日間を2人で過ごす物語となっています。メインテーマは男女関係ですが、作中でのグルメシーンもキネマ旬報の審査員から高く評価されているようです。なお、18歳未満に対する視聴年齢制限がある作品となっています。
第93回キネマ旬報ベスト・テン読者選出第1位「半世界」
阪本順治監督の「半世界」は、郊外で暮らす男3人の暮らしを描いた作品です。製炭によって生計を立てる高村紘(稲垣吾郎)が暮らす街に、自衛隊として海外派遣されていた沖山瑛介(長谷川博己)が突然戻ってくるところからストーリーが始まっていきます。中古車販売の自営業者である岩井光彦(渋川清彦)を加えた3人で飲み会を開くシーンは序盤の見どころです。
まとめ
今回は、日本国内の主要な映画祭および受賞作を紹介しました。映画祭ごとに審査基準や審査員の出自はだいぶ異なっているので、受賞作を見比べると大ヒット作から隠れた名作まで幅広く知ることができます。
どの映画を見るべきか迷っている人は、映画祭での評価や受賞数を参考にしてみましょう。
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