オウンドメディア運用で抱える10の壁
企業がオウンドメディアを立ち上げ、運用することはとてもハードワークです。マスコミと言われる業界がハードワークなのもそうでしょう。情報を収集し、編集し、独自の色を加え、更新し続ける作業を、メディアを本業としない一企業が行うのは、多大なコストを要するのです。
しかも、今までのマンパワーにオウンドメディア運用のタスクの負荷が新たに加わるようなケースは、とてもしんどいと言えるでしょう。
それだけではありません。オウンドメディアは実際に運用すると様々な壁にぶつかっていきます。
そこで、今回は、オウンドメディア運用で抱える10の壁について、お伝えしていきたいと思います。
壁1.メディアと目的の紐付け
オウンドメディアを作る目的はおそらく単にPVを稼ぐことではないはずです。商品・サービスの認知やコンバージョンなど、企業によって様々でしょう。
メディアを運用することで精一杯になると、目的と紐づけすることに大きな壁になりがちです。
それはメディアを右往左往するユーザーは、企業が紐づけたい目的に目を留めてくれない傾向にあるからです。コンテンツを閲覧しているユーザの足を止めるCTA(コール・トゥ・アクション)を含めて、ユーザの快適さをそぐわない程度に誘導リンクを散りばめるなど、小さな工夫の徹底が大事になります。
壁2.ユーザニーズに応える企画編集
カタチだけの運用はなんとかやっているけど、企画や編集で壁に当たることは少なくありません。ライターに書いてもらうことはできても、良質な企画や編集でライターに書いてもらうこととは別です。
企画や編集の部分を担ってくれるライターも存在しますが、そういったライターは自分でメディアを持って収益を上げていくので、企業の発注を請け負ってくれるようなライターは発掘しづらいと言えます。
とはいえ、企業が編集者を外部から雇うと言っても、編集が存在しなくても、成果物そのものは出来上がるので、編集者やディレクターに予算を割くような意識が向かないこともあるでしょう。
企業内のオウンドメディア担当者が少人数でなおかつ他の業務と兼業して多忙な場合は、企画もワンパターン化し、編集も甘いものになってしまいます。
壁3.プロセスや結果に対する社内の世代間理解
上層部への理解を求めることへ苦労するオウンドメディア担当者は多いものです。特にダイレクトマーケティングで成り上がってきた人たちからすれば、オウンドメディア運用の数字の動きはあまりにもたどたどしく映るでしょう。
Web独特のリテラシーに馴染みがなく、これからも培う気概のない上層部に対しては、かなりの説明力と交渉力が求められます。成果が出る前に運用が打ち切りになり、失敗の烙印を押されて、それが社員としての評価になってしまうなんてこともあります。
壁4.細かく刻み続ける強靭な精神力
オウンドメディアは取り組むジャンルにもよりますが、とにかくコツコツと細かく地味な作業の積み重ねが必要になります。
しかも、新規ドメインでページボリュームゼロの状態からスタートすると、数字が動き出すのが数か月後なんていうこともあります。当初の先行きが見えない中で、ノウハウを掘り下げながら運用を続けるのはかなりの精神力が必要です。
壁5.時代と共に増え続けるライバルメディア
昔は「弱者のSEO」と言われたロングテールSEOも、今では大企業が予算を掛けて取り組む時代。ライバルの多さがオウンドメディア運用の1つの壁になります。
メディアが増えれば増えるほど、ニッチで個性の際立つメディアにアクセスが分散する可能性もあります。オウンドメディアに期待していた数字目標を下げたり、メディアをニッチに複数持つような対策が必要になるかもしれません。
もしくは、SEOへの依存を脱却し、きちんとメディアとして認知されるような告知の取り組みが必要になってくるかもしれません。
ライバルが増えれば増えるほど、これまでシンプルで良かった対策が複雑化していくことになります。
壁6.定期的に求められる膨大な再構築
オウンドメディアによるコンテンツマーケティングの基本概念として「コンテンツの質を高め、量を増やす」というのがあります。
その結果、オウンドメディア運用ではコンテンツをどんどん増やしていくことが一般的ですが、最初からベストな設計を施し、ずっと変わらずに最適な運用ができるメディアはほとんどないといっていいでしょう。
オウンドメディアは定期的に全体を振り返り、全体を再構築することが求められます。その作業を避け続けると、再構築の難易度はどんどん上がっていきます。
ゴミ屋敷の原理で、オウンドメディアは定期的に掃除して、クリーンな状態を保つことで、ユーザにも検索エンジンにも良い印象を与えることができるのです。
壁7.差別化のための内製化と育成
企業のオウンドメディアなので、企業は自社の専門分野をメディアとして発信することが多いと思います。なので、本来は外注ライターのアウトプットよりも、企業内の知見を重ねた人がアウトプットしたほうが、他のメディアと差別化を促しやすいとも言えます。
社内で執筆することができれば、ランニングコストを浮かせることもできます。これは「求められる「社内ライター」の絶大な価値。なぜ、企業にはライター社員が必要なのか?」という記事でも述べています。
内製化できれば、低コストかつ高品質なコンテンツ運用が可能になります。内製化しながら、制作マニュアルや教育システムを作り上げることで、誰が加わっても、安定的な運用が可能になります。
そんな内製化の重要性は分かりつつも、実際は内製化の仕組みづくりへ労力を割くことが大きな壁になっています。
壁8.高度化するコンテンツアウトプット
時代と共にコンテンツの表現はどんどん高度になっています。例えば、動画の表現がそうでしょう。撮影装置もドローンなど新たなものが登場しています。
特にテキストよりも動画のほうがユーザにとって理解がしやすい内容は動画に切り替えるべきで、ライターの比重は少なくなるといったこともあるでしょう。
コンテンツが高度に表現できるからといって、従来のシンプルな見せ方が否定されるわけではありません。自社のコンテンツをどう見せるべきか、その見せ方の選択が増える分、惑わされることも多くなり、運用の壁になることもあるでしょう。
壁9.長期継続を見越した引継ぎ体制
オウンドメディア担当を特定の人間に委ねてしまうと、その人材を失ったときに、オウンドメディアは宙に浮いてしまいます。
一人の社員が運営をすべて行い、他の社員は興味すら持たず、その社員が辞めた後にメディアは放置状態。外注先へのコンタクトすら分からず、外注先が自分のサーバーに移転、デザインをカスタイマイズし、自分のものにしてしまうなんてことも実際にあります。
コンテンツ制作内製化の仕組みが作れなくても、運用を引継ぐ仕組みは作っておきたいですね。
壁10.オウンドメディアの陳腐化
オウンドメディアは「検索アップデート」の波に揉まれます。ある特定の手法に頼っていると、急速に陳腐することになります。
検索アップデートによって、サイトへのアクセスが乱高下することは、モチベーションの乱高下にも繋がっていきます。
しかし、自社にとって重要な分野における情報をコンテンツ化することは、オウンドメディア以外に使える部分も非常に大きいのです。
冊子、パンフレット、メルマガ、営業資料など、会社のあらゆるビジネスツールへ適用し、会社全体の業績を上げることにも繋がります。
コンテンツを会社の全体的な資産と捉えて運用すると、オウンドメディアの本質も変わってくるでしょう。
最後に:メディアが育った先にあるもの
オウンドメディアが育つと、会社は集客・告知・認知をよりセルフコントロールすることができます。
また、ユーザーとの直接的な接点が増えるわけなので、ユーザーをよりフォローしたり、ユーザーとより交流したりするコミュニティへの展開も行うことができます。
リアルやオンラインサロンとの親和性もありますし、SNSとの相乗効果も出てきます。
オウンドメディアそのものをサイトM&Aに出すこともできます。もしかすると、掛けたコストに見合った買収額のオファーがあるかもしれません。
ある程度、きちんと育てば、多様な活かし方や手放し方が実現できます。そのためには1つ1つのコンテンツの質を忙しい業務と限られたコストの中でいかに高めていくかが重要になっていきます。ぜひ、コンテンツに真摯になって、より良いメディアを作り上げていって下さい。
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