ダイバーシティとは?注目される背景や効果などについても解説
ダイバーシティは企業経営において近年注目されていますが、実際にどのようなものか詳しく知らない方もいらっしゃるでしょう。この記事では、ダイバーシティの定義や注目される背景、効果などを分かりやすくご紹介します。ダイバーシティへの理解を深めて、採用活動や社内の環境整備に役立てていきましょう。
ダイバーシティとは
ここでは、ビジネス面での定義や種類、インクルージョンとの違いをご紹介します。
定義・種類
ダイバーシティは、英語で多様性・相違点を意味しますが、ビジネスにおいては国籍や性別、年齢に問わず人材を採用し、それぞれの個性を活かして組織の競争力を高めるとする考え方です。また、個性を最大限発揮でき、正当な評価を与える企業風土を「ダイバーシティ・マネジメント」と呼びます。従来は、女性や障害者に対して雇用機会の均等化が目的でしたが、企業の成長や利益にも繋がる考え方として徐々に浸透しています。
ダイバーシティは、表層的なものと深層的なものの2つに分かれます。
表層的ダイバーシティは、外見から認識できて自分の意思で変えられない、または変えるのが困難な属性を指し、主に年齢や国籍、性別などが該当します。
一方で深層的ダイバーシティは、外見では認識できない内面的指向を指し、職歴、習慣、コミュニケーション能力などが内包されます。
深層的ダイバーシティは判断が難しいことから、組織マネジメントにおいてどのように理解するかが重要な課題です。
インクルージョンとの違い
インクルージョンは、全社員に仕事の参画機会を与えて、経験や知識、思考の違いを認める状態を指します。本来は、生徒ごとに合わせて教育を行う意味でしたが、社会福祉の一環として解釈が拡げられました。
それぞれの個性や背景を理解する意味のダイバーシティに対して、インクルージョンは個性や背景を理解するだけでなく、認め合って共に働く状態です。つまり、ダイバーシティが「受け入れること」を指すなら、インクルージョンは、受け入れたうえで個性を活かし、発展させることを指します。
ダイバーシティとインクルージョンを推進していけば、多様な人材の確保による新たな価値観の発掘、個性を発揮した競争力向上が期待できます。
注目され始めた理由
ここでは、ダイバーシティが注目され始めた理由を3つご紹介します。
企業のグローバル化
日本では、国内市場の飽和により、1990年代から海外市場へ進出するグローバル化が進んでいます。グローバル化は、単にマーケティング規模の拡大に留まらず、生産コストの削減、先進技術の獲得などの効果がありますが、日本でのやり方がそのまま通用するとは限りません。グローバル化を成功させるには、顧客のニーズの合わせた商品・サービスの提供が欠かせず、外国人の採用によってグローバルな視点を取り入れる必要があります。
しかし、単に雇用をしただけでは社員の定着が難しいことから、外国人にとっても働きやすい環境を整備する目的でダイバーシティが重要視されているのです。
労働人口の減少
少子高齢化による影響によって、日本社会全体で人手不足が深刻化しています。2050年に労働人口が2,000万人規模で減少すると予測され、現在においても企業によっては人材の確保ができず、事業の継続が困難になるケースが珍しくありません。
そこで、人手不足を解消するために、女性や高齢者、外国人などの採用を進めていくことが必要不可欠となりました。しかし、さまざまな事情を抱える社員が長く働くには、介護や育児などの個別の事情に配慮した、誰にとっても働きやすい組織設計が欠かせません。また、制度設計のみならず、社員1人ひとりのダイバーシティへの理解も求められています。
価値観の多様化
従来の働き方の主流は、プライベートよりも仕事を優先するスタイルでした。しかし、近年は仕事とプライベートの両立、個人のスキルを思う存分生かした職場環境に着目した働き方に変わりつつあります。
企業が従来型の働き方を推奨している場合、求職者の支持を得られず、人材の確保は困難でしょう。人材の獲得競争に後れを取らないためにも、企業側には求職者のニーズに応えていく姿勢が求められています。
得られる効果
ダイバーシティの考え方は、企業に対してどのような効果をもたらすのでしょうか。以下では、得られる代表的な3つの効果について解説します。
ビジネスの拡大
様々な人材が集まる企業は、発想やスキル、知見に富んでいます。そのため、一方的な立場に寄らずにあらゆる角度から消費者のニーズを分析でき、思いがけないビジネスチャンスを掴むことができます。
また、ビジネスが拡大すれば、競争化の激しい市場でも生き残る可能性が高くなるでしょう。
優秀な人材の確保
ダイバーシティを推進している企業は、育児中の女性や外国人、障害者など、従来は採用条件が合わないために採用を見送っていた人材の確保が可能となります。
育児や介護の両立、ワークライフバランスを重視している求職者からの応募も見込めるため、応募者が増えればそれだけ優秀な人材にめぐり合う確立も上がります。
企業の社会的信用の向上
多様な人材が働きやすい環境の企業であれば、離職率の低下やモチベーション、社員満足度の向上が期待できるでしょう。また、離職率は、求職者がチェックするポイントの1つでもあるため、離職率が低く働きやすい会社であれば、おのずと求職者からの応募も増加します。
さらに、社員が働きやすい企業は、企業イメージの向上も見込めるため、社会的信用もアップします。
ダイバーシティを推進するための取り組み
日本では、欧米に比べてダイバーシティの推進が後れています。中には、何から手を付けるべきか分からないという方もいるでしょう。以下では、推進のために必要な取り組みについてご紹介します。
ワークライフバランスの充実
ダイバーシティの推進では、育児・介護休暇の充実、勤務時間の融通が利きやすいかなどが重要になります。
育児・介護休業を充実させるメリットは、長期雇用によるスキルの向上や経験者の知見を活かした商品開発が可能になることです。ただし、業務が属人化していたり、長時間労働が当たり前の社風だったりする場合は、制度の導入以前に業務体制の見直しが必要です。
柔軟な勤務時間を実現する制度としては、フレックスタイム制や裁量労働制が挙げられます。フレックスタイム制は、出退勤時間を社員に委ねることで通勤時の混雑による負担の軽減や業務効率の向上が期待できます。一方、裁量労働制は、実際に働いた時間に関わらず成果を重視して契約時間通りに給与を支払うものです。ただし、裁量労働制は、専門業務や企画業務を担当する社員のみが対象となります。
また、近年では、サテライトオフィスやリモートワークなどの働き方も当たり前になりつつあります。場所に捉われない働き方には、通勤負担の軽減やプライベートや育児との両立がしやすいなどの効果が期待できます。ただし、評価やコミュニケーションの面で課題が多く、導入後の体制を整える必要がある点には注意が必要です。
経営層を含めた研修プログラムの整備
社員それぞれの価値観を理解することは簡単ではありません。そのため、全社員がダイバーシティ・マネジメントを理解して行動できるように研修を行い、推進していけるような環境作りが必要不可欠です。研修においては、まずは経営陣や管理職のダイバーシティに関するリテラシーを高め、その後に全社員対象のミーティングなどで啓発活動を進めるとよいでしょう。
まとめ
ダイバーシティとは、年齢や性別、国籍を問わずに採用し、それぞれの個性を活かした組織作りを行うとする考え方です。企業においては、労働人口の減少や雇用意識の多様化などによって注目され始め、優秀な人材の確保や社会的信用の向上などの効果が期待できます。
ワークライフバランスの充実や研修を含めた環境整備を行い、働きやすい職場へと変化させていきましょう。
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