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成果につながるクリエイティブは「本質理解」と「情熱」から生まれる。
INTERVIEW 2019.1.17

成果につながるクリエイティブは「本質理解」と「情熱」から生まれる。

freee株式会社 執行役員 CMO 川西康之

クリエイター、特にフリーランスの経験を持つ方なら『会計freee』や『人事労務freee』『申告freee』といったサービスを一度ならずとも目にしたことがあるのではないだろうか。スモールビジネスの各成長段階をクラウドサービスでサポートしているのがfreee株式会社だ。クリエイターインタビューの記念すべき第一回目に登場していただくのは同社でCMO(Chief Marketing Officer)として、また執行役員として活躍中の川西さん。仕事柄、さまざまなクリエイターとのつながり、やり取りが多いとのこと。そんな立ち位置から”これからのクリエイティブ”についてお話をうかがった。

人生初の面接、就職、そして…

―もともと川西さんは会社経営をなさっていたとか

そうですね。大学時代にWebマーケティングの会社を作りまして、それが22歳のときです。以来、会社経営を12年間ほど。ずっと経営者畑を歩んできました。その間に先輩の会社の社外取締役をやったり、地元・富山の高岡市にスポーツ関連のNPOを設立したり。

―いわゆる起業家ですね

会社の規模も30~40名ぐらいまでいきましたね。当時はいわゆる第二次ITバブルで、周囲にいろんな起業家の方がいらっしゃったんです。それで自分も世の中を変えられるような存在になりたい、と思って会社を作ってみたんですよね。しかし、それがまあ、パッとしない(笑)。

―30~40名規模まで拡大しても、ですか

楽しんでやっていたし、僕らのサービスで喜んでくれる人もいたし、誰にも迷惑かけていないし、悪いことはひとつもなかったんです。でもメジャーリーグにチャレンジするつもりが気づけば草野球レベルだった。自分としてはもっと高いところを目指したかったんです。

―そんな中、freeeにジョインするきっかけは?

実は当時の僕の経営スタイルというのが非常にトラディショナルというか、ひと昔前のスタイルだったんです。僕の周囲には先輩後輩含めて結構有名な起業家がたくさんいるんですが、彼らのやり方と比べると全然違っていて。話を聞くたびに「これがいまっぽいスタイルなのか…」と。これはゼロから学ぶ必要があるなと思っていたところ、縁あってfreeeにジョインすることになったんです。人生初の面接、はじめての就職です(笑)。

―そんなエピソードがあったのですね。ちなみに以前の経営スタイルとは?

いわゆるトップダウン型というか、リーダーがカリスマ性をもって組織をまとめていく、といったものでした。言うまでもなくfreeeとは180度違います。HPに載っている文言から組織づくりに対するアプローチ、このオフィスのインテリアに至るまで、僕のセンスにはないものばかり。対極といってもいいぐらい縁遠い世界に身を置けば、僕もアップデートできるかなって思って。

freeeっぽい=クリエイティブ=課題解決

―起業家から一社員へのギャップはありましたか?

いえ、裁量も大きいし、自ら望んで選んだ道なので違和感みたいなものはありませんでした。ただ、自分の知らないところで会社の重要決定がなされることについては一抹の寂しさもありましたね。もちろん喜んでやるのですが、おお、これがいわゆる異動というヤツか…と(笑)。

―新鮮な驚きだったと

そうそう(笑)。とはいえフラットなカルチャーなので、息苦しさなどは全くありません。たとえばマネージャーを業界っぽく「ジャーマネ」って呼んでいるんですが、それには理由が二つあって。芸能人のマネージャーってタレントの才能を光らせる役割じゃないですか。立場はタレントのほうが上ですよね。当社でもマネージャーは現場社員の個性を発揮させる存在なんですよ。あと、そもそもマネージャーという名称が持っているなんか偉そうなイメージ。これを払拭しようよ、ということからジャーマネと呼んでいるんですね。

―世間一般の常識とは正反対ですね

あともうひとつ面白いのが、性善説に則っているところ。ウチに来る人はみんなちゃんとミッションに共感して、一生懸命がんばろうとしているんだという大前提があるんです。だから人を動かすときも厳格なルールではなく、カルチャーで自然にそうなるように促している。このあたりですよね、顕著にいまっぽいというか、自分にはなかった組織づくり。もちろん代表の佐々木も最初からそうだったわけではなく、グーグルなどでの経験を通して身につけていったのだろうと思っています。だから僕もそういうキャリアを積みたいなと。

―組織づくりにも工夫というか、ひねりが効いてますね

ある意味クリエイティブな要素は多いかもしれません。僕にとってのクリエイティブって「課題解決」なんですけど、freeeの価値基準のひとつである『Hack Everything』なんてまさしく課題解決そのもの。本質を理解した上で普通よりも枠を超えた行動、発想で物事を進めていこうと言っています。エンジニアの文脈上ではありますが、これってクリエイティブのことを指しているんじゃないかって思うんですよね。おまけにfreeeらしくもある。

―集まってくる人たちも職種こそ違えど、クリエイティブ体質になりそう

社内にはfreeeっぽい人ってこうだよね、というペルソナがあるんですね。そのひとつに、ある事象に対してプラスワンできる人、という基準があって。その人がチームにいることで10個あるアイデアが11個になる。あるいは7つの企画に対してこうすれば8や9にできるよ、という発想の持ち主。そんな風に物事をよりよくできる人になろう、とメンバーには呼び掛けていたりします。つまり僕の中ではfreeeっぽい人ってクリエイティブな人だし、それは課題解決ができる人ってことなんです。

本質理解と情熱があればAIにも代替されない

―お話からはとても古いタイプの経営者だったとは思えないんですが…

以前から物事に捉われたり常識や慣習、前例、モラルに縛られるのって、なんか邪魔だなと。もっと軽やかに働きたいって考えていたんです。だからいまにして思えば経営者やっていた時の僕は、知らず知らずのうちにその逆をいっていたのかもしれません。社長とはこうあるべし、とか経営者とは、といった呪縛に捉われていたような気がします。本当の自分は、実は意外とfreeeっぽかったんだと思います。

―軽やかに働きたい…とても共感できます

freeeに来て解放されたからよけいそう思えるのかもしれませんが、軽やかに働くことが新しいアイデア、新しい考え方、新しい行動につながると信じています。そういう働き方こそクリエイティブ…っていうと少し照れくさいけれど、創造的な、革新的なものを生み出すことにつながっていくんじゃないでしょうか。

―社外クリエイターとの接点で感じることはありますか?

そうですね…どんどんAIに代替されているな、大変な過渡期を迎えているなと思います。デジタル領域のクリエイターは特にその傾向が顕著ですね。何をもってよしとするか、という定性の部分で入り込む余地は小さくなるばかりです。しかもこの流れは不可逆で、なんというか、クリエイティブが消費される傾向にあると感じています。

―ここから先、ますます厳しくなると

制作の現場は疲弊しやすくなっていくでしょうね。たとえば動画広告の制作っていまものすごく大変なんです。作っても作ってもすぐに効果が低減するので、次から次へと作り続けなければならない。飽きられるスピードも速いですし、そんな中でのクリエイティブって結構困難ではないかって。でもですね、実はこの状況、クリエイターにとって福音でもあるのでは、というのが僕の見解なんです。

―福音とはどういうことでしょうか?

動画広告でよくある現象なのですが、プロじゃない人、たとえば事業担当責任者が素人ながら一生懸命作った動画が実は一番費用対効果が良かったりするんです。専門的な教育も訓練も受けていないにも関わらず、です。決して上手ではないですよ。クオリティも高いとはいえません。でも効果は抜群。これって、僕からするとクリエイティブそのものの勝利なんですよ。つまり物事の本質を理解した人が誰にも負けない情熱を込めてモノづくりすれば、きちんと成果を出せるってこと。

―プロかアマか、という議論を超越できると

いまコンテンツを作って世の中に発信するハードルが極めて低くなっているわけですよね。そうなると一流と二流を分かつものは本質理解と情熱になるんじゃないか。その二つを持ってさえいればたとえ見栄えがよくなくても、クリック率も費用対にも優れた本物のクリエイティブを生むことができるんです。しかもそれらはAIに代替されることもなければ、模倣され大量生産されても本家を超える成果は出せない。

―純粋にクリエイティブで勝負できる時代なんですね

そう、すごく面白い現象だと思います。だから、全体的にみると厳しい状況かもしれませんが、逆に本物のクリエイターにとっては福音といえるんじゃないか。大手のバックボーンとか、大量のバジェットとか、有名であるとか、そういうことではなくて本質理解と情熱で勝負できる。前例や常識に捉われないという点はfreeeのカルチャーともリンクしますが、これからのクリエイティブや、もっといえば世の中全体もそういう動きになっていくような気がしています。

―本日はありがとうございました!

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freee株式会社 執行役員 CMO(Chief Marketing Officer)

川西康之

東京大学法学部卒。在学中に起業し、以来10年以上にわたって経営に携わる。freeeでは全社のマーケティング責任者として従事。日本で一番スモールビジネスに寄り添えるマーケティング組織の実現を目指す。趣味は将棋観戦。