D2Cとは?注目される背景や5つの成功事例を徹底解説
世の中にある企業には、それぞれのビジネスモデルがあります。
「他企業から原材料を仕入れて生産した商品を、小売店を通して消費者に販売する」という昔ながらの方式以外に、近年では「D2C」という新しいビジネスモデルが注目されています。D2Cは、変化を続ける現代に適応したモデルです。今後ビジネスを成功させるにはその仕組について知る必要があるでしょう。この記事ではD2Cモデルの概要や、すでに成功している事例などを紹介します。
D2Cについて
D2Cは近年注目を集める新しい方式のビジネスモデルです。
商品の企画・生産から、ECサイトを中心とした販売まで行います。D2Cの大きな特徴は、生産者と消費者の距離が近いという点です。世の中のさまざまな変化に伴い、D2Cが人々から受け入れられる土壌が形成されました。日本でも、ここ数年で勢力を強めており、将来的には一般的なビジネスモデルになると見込まれています。それでは、D2Cの概要や特徴などを詳しく解説します。
D2Cとは
D2Cは「Direct to Consumer」の略で、2000年代後半から盛んになったビジネスモデルです。
D2Cでは、自社で企画・生産した商品を消費者に直接販売します。SNS・ECサイト・直営店などを活用することで生産者と消費者が交流できます。現在は、アパレル業界や美容・化粧品業界において特に導入が進んでいます。市場調査会社の調査によると、2018年時点で18歳以上のアメリカ人のうち、半数以上が「今後5年で20%以上のものをD2Cで購入する」と回答しています。
D2Cの特徴
D2Cは、従来のB2Cビジネスと大きく異なる点が複数あります。
D2Cでは広告代理店や小売店などを挟まずに顧客と直接接点を持つため、より具体的な顧客情報の収集が可能です。その結果、顧客一人ひとりに合わせたサービスを提供しやすくなります。加えて、中間コストがかからないため、商品価格を抑えられる効果もあります。
また、生産者が顧客と積極的に交流する点も特徴的です。
顧客からの好感度や信頼感が高まりLTV(顧客生涯価値)が増加することで、長期的にサービスを利用してもらえます。さらに、実店舗よりもECサイトを利用した販売を重視するという特徴もあげられます。これは、アパレル業界にみられるSPAモデルと異なる点です。SPAモデルとD2Cモデルには、企画・製造・販売を一貫して自社で行うという共通点はありますが、D2Cの方が費用を抑えやすいでしょう。
D2Cが注目される背景
近年、D2Cが注目される背景には3つの理由があります。
1つ目の理由は、インターネットの普及による生活のデジタル化です。現代では、誰もが気軽にECサイトでの買い物やSNSでの情報発信などを行えるようになりました。店舗を出す必要性に関する考え方の変化や顧客との距離感が近くなったことが、D2Cにとってプラスに働きました。多くの人が長時間インターネットを利用するようになり、広告戦略もデジタルを中心に運用するように変化しています。それに伴い、顧客をピンポイントに狙った広告を出しやすくなったことも関係しています。 2つ目の理由は、人々の消費行動が変わったことです。現代の先進国では多くの人がおおよそ物質的欲求を叶えており、「欲しい」と強く思えるものが減少しています。結果的に、従来の機能面を追求した商品よりも、コンセプトや開発までのストーリーなど情緒の面で訴えかける商品を重視する人が増えてきました。機能や価格以外の分野で勝負できる土壌ができたことで、スタートアップ企業がD2Cで参入しやすくなっています。
3つ目の理由は、世間の価値観が変わったことです。近年では、物を買って所有するよりも、定額の料金を支払って利用するサブスクリプションサービスが一般的になっています。買って終わりではなく長期的に利用したいという価値観はD2Cに適しているでしょう。
D2Cのメリット
新しいビジネスモデルであるD2Cには、さまざまなメリットがあります。
D2Cはインターネットを多用するため、コストやデータ収集の面において従来のB2Cより優位に立てます。そのうえに、企画・生産・販売をすべて自分で行うといった自由な販売方法を実行できます。ここからは、D2Cのメリットについてご紹介します。
コストが削減できる
D2Cのメリットは、コストを抑えて利益率を上げられることです。
生産者がインターネット上で顧客と直接交流・取引するD2Cでは、仲介業者や販売拠点になる実店舗を設ける必要がありません。いずれも利用すると手数料や家賃などのコストがかかります。しかし、これらのコストを削減できるD2Cは、その分低コストで経営することが可能です。コストの低さを活かして商品価格を下げれば、大手B2Cを相手に強みを持って市場で戦えます。さらに、生産量も調整しやすいため、想定外の量の在庫を抱える心配がありません。
データ収集がしやすい
顧客のデータを集めやすい点もD2Cの強みです。
企画から販売まですべて自社で行うため、各段階で顧客が求める商品価値などについて検討できます。さらに生産工程などにおいて、発覚した改善点の反映も容易に行えます。顧客のタイプと購入する商品の傾向を把握できれば、商品開発や販売の大きなヒントになるでしょう。また、自社のECサイトで販売する利点を活かせば、サイト内の滞在時間や離脱率などのデータを収集することもできます。収集したデータはより使いやすく、かつ購買意欲を刺激されるサイトの制作に役立つでしょう。
販売方法の自由度が高い
D2Cには、一般的なB2Cと比べて自由な販売方法を選べるというメリットもあります。
自社のECサイトを活用すれば独自のマーケティングやキャンペーンを実施できるため、顧客と強固な関係性を築きやすくなります。通販プラットフォームでの販売や販売業者を利用すると、プラットフォーム提供者や業者のルールに従う必要があり、自分の思いどおりに販売できません。一方で、D2Cであればインフルエンサーやアンバサダーを活用するような自由なマーケティングを実施して購買層の増加を図れるでしょう。
D2Cの成功事例
D2Cモデルは世界中で勢力を強めており、国内外でD2Cを活用した企業が多数設立されています。
ベンチャー企業だけでなく大手企業も参入しており、アパレル業界や化粧品業界に限らず食品業界などにも広がりを見せています。同じD2C分野でも各会社で特徴があり、「自社ならでは」という強みを持つ会社であれば成功する確率が上がるでしょう。ここからは、D2Cモデルによって成功している会社の事例をご紹介します。
ネスレ
ネスレは世界中で展開している大手食品メーカーであり、D2Cの分野においても成功を収めています。
一般的に、D2Cの分野は中小企業が主流ですが、D2Cの規模拡大に合わせて従来とは異なる嗜好を持つ顧客を得るために大手企業も参入しています。
ネスレではコーヒーや関連商品の販路を広げるために自社のECサイトを立ち上げました。ECサイトでは「年間の目標を数時間でほぼ達成する」という驚きの効果を発揮して、オンライン上の顧客を大幅に増やしています。
BASE FOOD
BASE FOODは2016年に設立された、食品を販売するベンチャー企業です。
完全栄養食のパスタやパンを開発し、サブスクリプション形式で販売しています。SNSや自社のECサイトを活用することで、顧客一人ひとりの意見や好みを反映した商品を提供しています。「作り手の顔が見える」ことが大切である食品業界では、顧客と近い距離で取引できるD2Cのメリットが発揮されています。
Minimal
Minimalは、2014年に設立されたクラフトチョコレートメーカーです。
カカオの仕入れからチョコレートの販売まで一貫して自社で行っています。Minimalでは、代表が赤道直下のカカオ農場まで直接足を運んで素材の選定や仕入れを行い、自社の工房でカカオの加工やチョコレートの成型などの工程を進めています。これは、ニューヨークのチョコレートブランドが始めた「Bean to Bar」方式です。Bean to Barとは、ワインやコーヒーのように産地や製法にこだわることを指します。Minimalは、ECサイトだけでなく東京都内に店舗も展開しており、インターネット上だけでなく実店舗でもファンに向けたアピールをしています。
THE 5TH
THE 5THは、男性用の時計ブランドです。
シンプルかつデザイン性の高い腕時計を低価格で販売しています。顧客の声が生産者に届きやすいというD2Cのメリットにより、顧客に好まれるようなデザインのブラッシュアップに成功しています。
THE 5THの特徴として、初期はECサイトの利用を毎月5日間のみに制限していた点が挙げられます。入手機会が少なくなり希少性が高まったことで、口コミによる人気を広げていきました。THE 5THは販売機会を絞って、余ったリソースをマーケティングやコンテンツ作成、顧客調査などに振り向けて、製品の改善も同時に進められたようです。
Glossier
Glossierは、D2Cで成功した会社として海外で広く知られているコスメブランドです。
美容ブログから始まった会社で、2014年の設立以来急速に規模を拡大しています。現在は顧客の声を取り入れた商品を開発しており、品質だけでなくパッケージのデザインも人気を集めています。Glossierの商品はメイクアップよりも肌質を考えていることが特徴的です。ただ製品を売るだけでなく、顧客の健康を守り継続的に使用することを重要視しています。設立のきっかけになったブログは継続されており、2015年および2016年には、閲覧者から寄せられたアイデアをもとに新商品を開発しています。
まとめ
新たなビジネスモデルであるD2Cモデルの概要やメリット、成功事例などをご紹介しました。
生活のデジタル化や人々の価値観の変化などが追い風になり、勢力を強めているD2Cは今後の社会でさらに存在感を増していくと言われています。ビジネスを拡大する際、D2Cのチャネルで独自の付加価値を付けて、世の中にアピールすることも一つの手段でしょう。
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