感情を動かすエンタテインメントで、ストップモーションアニメを新しいスタンダードに。

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感情を動かすエンタテインメントで、ストップモーションアニメを新しいスタンダードに。
INTERVIEW 2020.6.03

感情を動かすエンタテインメントで、ストップモーションアニメを新しいスタンダードに。

アングル合同会社 アニメーション作家・イラストレーター 秦俊子

キャラクターの動きを一コマずつ撮影し、つなぎ合わせることで動きを生み出す。『ストップモーションアニメ』はアメリカをはじめグローバルでは市民権を得ているが、日本においてはまだマイノリティに属する映像表現だ。このストップモーションアニメの分野でいま注目を集めているのが秦俊子さんである。大学院の修了作品が国内外の様々な映画祭で受賞・上映されたのを皮切りに、NHK「みんなのうた」への作品制作、斎藤工さん企画・原作のクレイアニメ監督、そして海外からのオファーなど常に話題に事欠かない。今回は新作制作中の秦さんにお時間をいただき、撮影スタジオでその独特の作風の原点、アニメ制作の実態、今後のビジョンなどについて語っていただいた。

自分という存在を知ってもらうことが大切

―こちらで撮影されているのが新作ですか?

はい、NHKの「みんなのうた」6月・7月の新曲、OAUさんが歌う『世界の地図』のアニメーションです。映像の長さは2分20秒なのですが、撮影だけでだいたい2週間半ぐらい。いまちょうどクライマックス直前のシーンにきています。

―コマ撮り、ものすごく手間がかかりそうですが

手間もそうなのですが、とにかく時間がかかりますね。テレビの場合、1秒に15枚撮影するので、このカットは7秒半ですから撮影する枚数は…100枚ちょっと。1枚ごと手足や目の動き、尻尾の振り、マントのたなびく向きなども計算して撮影を重ねていきます。

―全ての工程をひとりで完結させるのですか?

ミニマムな仕事の場合は自分ひとりで、ということもありますが、多くは分業で作品に仕上げていきます。セット造形や人形関節、撮影などそれぞれの分野に専門家の方がいますから。

―工程ごとに細分化されているんですね

ストップモーションアニメの世界って、ものすごく狭いんです。はじめてお仕事をする人でもだいたい知り合いの知り合い、みたいな。だから仕事の幅を広げていく際には、コミュニティの人たちに自分の存在を知ってもらうことが大事だと思いますね。

―自主制作の『パカリアン』はファンも多い作品です

お仕事としてのコマ撮りだけでなく、オリジナル作品を作ったのは今に至る道を切り拓く上でのターニングポイントだったかも知れません。特に『パカリアン』は運良く斎藤工さんに声優をしてもらえたり、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で上映されたり、賞もいただけました。

Adult Swim 「PACALIEN」
2018年 35〜40秒×4本
2017年に制作した自主制作アニメの「パカリアン」から発展して、カートゥーンネットワークのAdult Swimで制作したショートアニメ。
声優 / 斎藤工 
プロデューサー/ 寺島真樹子

―しっかりとアピールすることがチャンスを掴むポイントですね

2017年にカートゥーンネットワークをはじめとする海外のテレビ局の方々が集うイベントがあったのですが、その場で自分の作品をプレゼンテーションしました。そこで気に入っていただけたのがきっかけで、海外からのオファーをいただけるようになりました。アピールする機会があれば、そこは意識的に発信していくべきだと思いますね。

子どもの頃の原体験がいまにつながる

―もともとアメリカ映画が好きとのことですが

3歳のときにはじめて観た映画が『E.T』で、相当影響を受けました。このブラウン管の中に自分も入りたいなと思ったぐらい。その気持ちをずっと持ち続けていて、だんだん自分でもこういうものを作りたいという想いが固まっていき、いまに至っている感じです。

―ホラー映画からもインスパイアされることが多いとか

『シャイニング』や『ポルターガイスト』など、子どもの頃からアメリカのホラー映画が好きでした。あとはヒッチコックのサスペンス映画も。いちばん好きだったのは『鳥』。子供心にもびっくりしましたね、鳥たちが襲ってくるなんて。でも単純なもの、わかりやすいものっていうのは年齢に関わらず人の心に響きやすいんですよね。そのまま大人になってからはスプラッター映画も観始めるようになりました。

―そのあたりの原体験が秦さんの独特の世界観につながるんですね

特に自主制作の作品には色濃くでますね。もともと毒々しいものがものすごく好きということがあって。たとえば「かわいい」も、ただかわいいだけじゃ納得がいかないんです。かわいさのなかに怖さやちょっとした面白さが混ざるような。そういうのが自分にいちばん向いているという自覚はありますね。

―かわいいだけでも、怖いだけでも、面白いだけでもない

もちろん「みんなのうた」や「おかあさんといっしょ」といったアニメの場合は自分の色は出しつつも最終的にかわいいものを作りたいと思っています。でもオリジナル作品のときはちょっと過激な要素を入れたくなりますね。仕上がりを見ても面白いなって思えるので。

(C)NHK/Angle, LLC

―オファーの場合は制約もありますしね

逆に制約を積み上げてから何をつくるかが決まるといってもいいくらいですね。納期、予算、撮影場所、尺、メディア…さまざまな制約からどんなものが作れるかを先に割り出します。それにあわせてお話や登場人物をつくっていくところが、他の表現物と違うところかもしれません。

―ファンタジーな作品の裏側には納期や予算という現実が

そうですね、お話づくりから人形製作、そして撮影編集と、全ての工程に納期があります。お話づくりは自分がつくりたいものに加えて視聴者が楽しめるものにするのが最優先事項。どんな話なら楽しんでもらえるか、広く受け入れてもらえるかを考えるところからはじめます。

―締め切りとの戦いですね

工程の中では人形製作が割と実験的側面があり、こういうものをつくりたいという思いと実現までにかかる時間とのせめぎあいになりがち。そして何より悩ましいのが撮影です。なかなか先が見えない。現場でセットを組んでみてはじめてわかることも多いので、結構うなされる日々というか(笑)。

―それを乗り越えて苦労が花ひらくのが…

編集ですね。編集は楽しい。いちばん好きな工程です。やっと完成するというか、ようやく世界を組み立てられる。もちろん細かい作業が尽きることはありませんが、すべてが自分の手の中にあるという実感が得られるんです。

評価が多様化する時代に

­­­ ―秦さんはご自身をエンタメ系と位置づけていますよね

コマ撮りアニメってアート寄りなものもあるんですが、わたし自身は芸術的なことよりも、みんなが楽しめることをいつも考えています。アートってもともとあまり興味がなくて、それよりもエンターテイメントをちゃんとやっていきたいです。

―それは昔から一貫しているんですか?

ダブルスクールで通っていた映画専門学校や大学院で強く感じたのは、アートこそ至高、みたいな空気でした。いかに芸術性を追求するか、芸術的な作品をつくるか。難解で、高尚で、複雑なもの。そういった作品が映画祭でも評価されるし、素晴らしいと礼賛される。いつしかわたしもそういう方向を目指さなければいけないんだ、と思うようになっていました。

―変なマインドコントロールみたいな

でも、よく考えたら自分が楽しいと思えないものをわかったふりしてつくるよりも、ちゃんと自分が楽しめるものを追求したほうがいいんじゃないか。そんなふうに思えるようになり、大学院の修了制作に取り組んだんです。それが『さまよう心臓』でした。おかげさまで学生映画祭でグランプリを獲るなど国内外で評価がいただけました。

「さまよう心臓」ROOTLESS HEART
2011年 9分52秒 
東京藝術大学大学院の修了制作として 2011年に発表した短編アニメ。プチョン国際ファンタスティック映画祭で審査員特別賞を受賞するなど国内外で高い評価を得た作品。YouTubeではこれまでに100万回以上視聴されている。廃墟で遊ぶ2人の高校生。奥の部屋から物音が聞こえ、1人が暗い部屋へと入っていく。そこには得体の知れない何かが潜んでいて…

―アート至高主義の呪縛から逃れられた?

でもまだそのときは明確にはわかっていませんでしたね。大学院を修了して、いろんな世界、いろんな業種の人と関わるなかで、アートに縛られなくていいんだってはっきり気づきました。それに作品をYou Tubeにアップすると、それこそ小中学生から大人まで、また海外の方からもいろんな反応があるんですよね。それも大きかったとおもいます。

―もしかするとその気付きがターニングポイントだったのかも

もともとアート志向ならその道を追求すればいいけど、そうじゃない人にとってアカデミックな同調圧力はいい影響を及ぼさない。それによって邪魔されるクリエイティビティがあるんです。そういうのを一度まっさらにして、自分が好きなものはそことは違う場所にある、と思い直しました。評論家の言葉に左右されず、自分の好きなものを追求しようと。

―修了制作のときの気づきが数年かけて腹落ちした感じですね

本当にそう思います。そしてこの傾向はますます強くなっていくでしょう。You TubeやSNSに投稿すれば、世界中から多種多様な反応や感想、評価が得られる時代です。若い人は特に、学校や協会などの権威や伝統に縛られることなく、自分の好きなことを追求していくべきではないでしょうか。

オリジナルコンテンツでヒットを飛ばす

­­­ ―最近では海外での作品も増えていますね

まだまだこれからで、やっとスタートラインに立てたところです。もともとアメリカ映画からの影響はすごく受けてきたし、独特の映像文化に強く惹かれています。向こうは日本と違ってアニメーションでも『サウスパーク』みたいな大人向けの、結構過激な作品が普通に流通しているんですよね。

―『リック・アンド・モーティ』もそうですよね

はい、『リック・アンド・モーティ』ではコマーシャルブレイク映像を制作しました。憧れだったアメリカでの仕事がこれからもっと増えることを期待しています。とはいえまだほんの端くれにすぎないので、もっときちんと存在感を高めていきたいです。

―今後のビジョンとしては、やはりアメリカ本格進出でしょうか

まずはオリジナルコンテンツでヒットを飛ばしたいという思いがあります。確かにアメリカは日本よりもストップモーションアニメがジャンルとして確立されているので、ブレイクしやすいかもしれません。アメリカと日本の両方で作品を作っていけたら、と考えています。

―その後の長期ビジョンとしてはどんなことをお考えですか?

いま2Dのアニメが日本を代表するカルチャーとして世界に輸出されていますよね。その一方でストップモーションアニメはマイノリティな存在です。まだまだ普及していないし、そもそもアニメーションと認識されているかどうかも怪しい。ストップモーションも2D同様にカルチャーとして親しんでもらえる土壌を作りたいです。

―そのためにグローバルでヒットを飛ばす必要がある、と

そうですね。いまの時点では日本よりも海外のほうがストップモーションアニメのマーケットはあります。だからそこでヒットを飛ばして、日本に逆輸入というか凱旋して評価されることが、わたしの大きな夢というかミッションではないかと思っています。

―心に響く、心を動かすエンターテイメントは国境を超えますからね

セリフで説明するよりもストップモーションの動き、キャラクターの表情でコミュニケーションできるところも海外からの評価につながっているとおもいます。できればこれからも海外でたくさん作品をつくっていきたいと考えています。

―次回作品にも期待しています。本日はありがとうございました!

~Behind the scenes 今回の取材の舞台裏で~

 

(C)NHK/Angle, LLC
※取材時にNHK「みんなのうた」6月・7月の新曲『世界の地図』アニメーションの撮影舞台裏を特別に見せていただきました。

NHKみんなのうた「世界の地図」 6月1日(月)より総合・Eテレで放送中
作詞:TOSHI-LOW
作曲・編曲・うた:OAU
アニメーション:秦 俊子
「みんなのうた」公式ページはこちら


取材・編集:早川博通( @hakutsu )
撮影:小野千明
映像編集:高橋悠平

アングル合同会社

アニメーション作家・イラストレーター 秦俊子

1985年生まれ。2011年、東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。修了作品『さまよう心臓』が国内外の様々な映画祭で受賞、上映される。修了後はNHKみんなのうた『ヤミヤミ』や、おかあさんといっしょ『おもちゃのブルース』、NHKBSプレミアム『ワラッチャオ!』のアニメーションなどを制作。また俳優の斎藤工がCVを務めるオリジナルアニメ『パカリアン』はカートゥーンネットワークに進出し、北米でも放送された。ほかに短編アニメ作品『映画の妖精 フィルとムー』(2017)など監督作品多数。

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