ひたすら熱量を持ち続けること。それがプロデューサーとしての基盤をつくる。
五感を刺激する表現力に定評があるビジュアルコミュニケーションの専門集団、アマナグループ。百戦錬磨のクリエイターが多数所属していることは周知の事実だが、一方でビジネスサイドを支えるスタッフの存在も重要である。その筆頭株がプロデューサーだ。今回は学生時代から映像制作を学び、ドキュメンタリー番組を作るなど“モノづくり”の情熱を持つ入社5年目のプロデューサー、大迫さんにお話をうかがった。アマナにおけるプロデューサーの役割、さらには必要なスキルやマインドなど、さまざまな角度からインタビューを敢行。その結果、すべてはただひと言に集約されることがわかった。
三年間の下積みで会得したこと
―アマナでのプロデューサーとはどういった仕事なのですか?
もともとアマナはクリエイティブ制作やクリエイティブサービスを提供する会社なのですが、最近特に力を入れているのが顧客の価値を最大化する、ということ。プロデューサーの仕事はヒアリングをもとに課題を抽出、要件を整理し、アイデアを提案するところからスタートします。そもそもお客様の認識している課題はあっているのか?という本質的な起点からビジネスを立ち上げていく役割ですね。
―プロジェクトの上流工程にあたるわけですね
アマナにはいま70を超えるクリエイティブサービスがあるのですが、それをいかに有機的に掛け合わせ、価値を最大化できるか、というところに存在意義があると考えています。あとはプロジェクトに関わるすべてのクリエイターをつなぐ役割でもある。戦略プランナーやコンテンツ企画、クリエイティブディレクター、アートディレクター、デザイナー、フォトグラファー…それらすべてのパイプ役だと認識しています。スチールや動画、Webコンテンツ、リアルイベントなどアウトプットが多岐にわたりますからね。
オフィスには随所にアートフォトが飾られ感性を刺激されます。
写真の作品は杉本博司『PPTRD-Pre-Photography Time Recording Devices』2008。
―なるほど、幅広い領域での知見が必要そうです
新卒で入社後、クリエイティブ面では丸3年間しっかりと下積み時代を過ごしまして。そのときに現場をいかに回すか、ということをクリエイターに寄り添いながら徹底して学びました。それがいま、プロデューサーでありながらクリエイターと同じ目線で話ができるという強みにつながっていると思います。アウトプットを意識して、より深いところでコミュニケーションできる。これはアマナのプロデューサーならではの武器かと思います。
―下積み時代で一番印象に残るエピソードを教えてください
まだアシスタントだったにも関わらず初めて自分ひとりで窓口から交渉、クリエイター媒介などすべてのプロセスを担当する機会がありました。お客様の意図をくみ取ってアートディレクターと話し合ったり、クリエイティブを組み立てたり。 その現場が、まさに僕が思い描いていた理想の現場になった。自分で計画して、色んな人に発注して、その人たちの本気が撮影現場に集約されたんです。
―まさにプロフェッショナルが集まったと
カメラの前でモデルさんがものすごくこだわって表情をつくっている。スタイリストさんがやはりこだわって選びぬいたものを用意してくる。フォトグラファーも然り。モニターを見ながらそれぞれのクリエイターが主張をぶつけあっているのを見て、なんてかっこいいんだと思ったんです。下積み時代にクリエイティブには体力と精神力、さらに時間がかかることをしっかりと体感できたのは本当にいい経験でした。
―もともと大迫さんはクリエイター志向だったのですか?
まったく違います(笑)。クリエイティブの知識なんてゼロでした。広告は何となくしか知らず、でも入社したら同期に美大で彫刻を何年もやっていたとか、フォトグラファーとかいるわけじゃないですか。これはちょっとなんとかしないとな、と焦りましたね。
―でも学生時代は映像などを学んでいらっしゃったというお話ですが
もちろんモノづくり自体は好きでしたよ。大学三回生の時にドキュメンタリー番組を作ったんですが、みんなで同じベクトルを向いて進んでいくクリエイティブって楽しいなって。でも本当に学生レベルで、いざ入社してプロを目の前にしてみると、自分の考える事なんて足元にも及ばないなって。それで、感性で勝てないなら熱量で勝つしかないと。スキルがないぶん、がむしゃらですよね。3年目というタイミングでプロデューサーになれたのは、熱量や反骨精神みたいなものがあったからこそだと思います。
写真の作品はラファエル・ダラポルタ『Covariance』2014-2015
インプットの質量ではベテランに負けない
―プロデューサーとしては2年が経過しました
これまでに高級乗用車やハイブランドのジュエリー、美術館 のコンテンツなどを手掛けてきました。変わり種だとアイドルのMVやアニメカルチャーの30分番組を制作するなど、サブカルチャーに携わることも。幅広い仕事ができるのもアマナならではじゃないかな、と思います。やろうと思ったら何でもできる環境なんですよね。
―大迫さん自身もやりたいことが叶っていますか
入社後の周囲とのギャップがありましたけど、やるからには何かひとつナンバーワンになりたいと思って、それが最速でプロデューサーになることでしたから。そのために三年間邁進してきて、実際にいまは裁量も持てるまでになった。そういう意味ではやりたいことは叶えられていますね。ずっとカラダを張ってやってきた仕事でしたが最近では頭を使うようにもなったし(笑)。
―逆に難しいことってありますか?
いまデザインや撮影をすることに対して多くの手段があり、ハードルが下がる一方で、クオリティについてはトップラインまで来ていると感じています。だから異なる分野のクリエイティブとクリエイティブを掛け合わせることを意識しないと、新しい価値が生まれにくくなってきている。これは結構、これからの課題だなと認識しています。幸いアマナには数多くのソリューションがあり、僕自身かなりの数と量を経験してきているので、難しいながらも楽しんでもいるのですが、次なる課題は“質”ですね。
―仕事上、ふだんから何か意識していることはありますか?
とにかくインプットをやめないことです。世の中のトレンドやカルチャー、すべて。若いからこそ、ミレニアル世代だからこそ、できること、感じることってあると思うんです。新しいインプットに関しては、年齢が上のベテランクリエイターにも負けないように。特に下積みを卒業してからは自分の時間を持てるようになったので、イベントや講習会に出かけたり、本やWebメディアに目を通す機会を意識的に増やしています。
―プロデューサーとして必要なスキルのブラッシュアップなども?
スキルというのとはまた少し違うかも知れませんが、クリエイティブをいかに言語化するか、という能力はもっと伸ばしていきたいと考えています。もともとあまりセンスがあるほうじゃないのですが、それでもスタッフのパイプ役として自分の中でクリエイティブを消化して、いろんな人に伝達していく必要がありますからね。
モノづくりへの熱量とクライアントへの愛情
―大迫さんがこれだけは絶対にゆずれないこだわりってなんですか?
やっぱり熱量でしょうか。プロジェクトに関わる者の中でいちばん熱量を持っていたいと思っています。たとえばお客様との会話。要所要所で出てくる困りごとを自分の中で組み立てて、次回提案に盛り込むとか。クリエイターともメールのやりとりで終わらせずに顔を見にいくようにしています。クリエイターが制作にこだわるように、自分はもっと上流から入る役割として、アマナという会社が提供できる価値を引き出したいですね。
―誰よりもクライアントのことを考えて、行動するということですね
“ビジュアルコミュニケーションで世界を豊かにする。”をコーポレートミッションとしているアマナだからこそ、当然お客様のこともユーザーのことも社会のことも考えた上で、熱量や愛情を注ぎつつ、一歩先のクリエイティブの企画提案をしていきたいですね。できればオンリーワンのビジネス創出も実現したいです。アマナのクリエイターとタッグを組めばできると信じています。これからアマナの門を叩こうという方にもそのあたりを期待したいですね。
―本日はありがとうございました!
大迫尚斗
京都出身 大学では情報系の学部でメディア関係を中心に学ぶ。授業やゼミで番組制作の経験も積み、大学の映像祭に出品したドキュメンタリー作品が日本ケーブルテレビ連盟に評価されたことも。2015年に新卒でアマナへ入社。アソシエイトプロデューサーとしてキャリアをスタートさせ、2018年にはプロデューサーにステップアップ。入社3年目でのプロデューサー起用は異例のスピード昇格という。