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弁護士に聞く、景品表示法のアウトライン-景品規制の概要-(クリエイター・マーケターのための広告法務入門③)
INTERVIEW 2019.11.22

弁護士に聞く、景品表示法のアウトライン-景品規制の概要-(クリエイター・マーケターのための広告法務入門③)

前回は、五常総合法律事務所の持田大輔弁護士に、「景品表示法のアウトライン-表示規制の概要- 」について、話を伺いました。

今回は、引き続き、景品表示法のもう一つの柱である景品規制について、アウトラインと実務上の注意点を伺います。

-まず、前回のおさらいになりますが、そもそもなぜ景品類の提供に対し、規制がされているのか、もう一度、教えていただけますか?

たとえば「ガムを買って、宇宙旅行を当てよう」のように、買い物の金額に見合わない過大な景品類の提供を無制限に認めてしまうと、不当に消費者を呼び寄せ、消費者の合理的な商品選択を歪めてしまう危険があります。

このため、不当な顧客の誘引に繋がる景品類の提供については、一定の規制が設けられているわけです。

-なるほど。商品ではなく、宇宙旅行に釣られてしまう、そこが問題視されているわけですね。それでは、景品規制の概要について、教えていただけますか?

景品規制とは、顧客誘引のために提供される景品類についてのルールです。景品類に該当すると、最高額や総額等について規制をされることになります。

景品規制についてはルールが細かく、一般の方には、最初は分かりにくい部分も多いことから、細かな議論は割愛して、何が「景品類」に当たるのかと、景品類に該当した場合の判断枠組みについて、概要を見ていくことにしましょう。

景品規制の説明図①

まず、「景品類」とは、顧客を誘引する手段として、事業者が自己の供給する商品やサービス(役務)の取引に付随して相手方に提供する物品、金品、その他経済的利益をいいます。

一般的には、①顧客誘引性、②取引付随性、③経済上の利益の3つの要件から判断することになります。

なお、正常な商慣習に照らして値引きまたはアフターサービスと認められる経済上の利益、それからコーヒーに付く砂糖など、正常な商慣習に照らして当該商品役務に付属する経済上の利益は、告示により景品類の定義から除外されています。

-たとえば、良く見かけるキャンペーンとして、新しいお客様を紹介してくれた方に、一定の謝礼を提供する紹介者キャンペーンがあります。これについてはどのように考えられているのでしょうか?

紹介者に対する謝礼は、告示において、「取引に付随」する提供に当たらず、すなわち、2つ目の要件の取引付随性が認められず、「景品類」に該当しないとされています。

ただし、紹介者を自己の供給する商品やサービスの購入者に限定する場合には、「取引に付随」する提供となり、景品類に該当し、景品規制の対象となりますので注意してください。

-ほかには、誰でもウェブサイトから申し込むことができ、抽選で金品等が提供されるキャンペーン企画についてもネット上で良く目にします。こういった企画については、景品規制は適用されるのでしょうか?

商品やサービス(役務)の購入を条件とせずに、誰でも自由に応募できる懸賞は、一般にオープン懸賞と呼ばれています。

オープン懸賞について、以前は、提供できる金品等の最高額が1000円と定められていましたが、現在は規制が撤廃され、上限規制等はありません。

-たとえば、当社(※エキスパートスタッフ)は、人材派遣事業を行っています。派遣社員として登録をしてくださった方を対象に金品を提供する場合はどうなるのでしょうか?

消費者庁が公表しているQ&Aでは、人材派遣会社への登録は、あくまで労働契約に係るものであり、基本的には景品表示法上の「取引」には該当しないと整理されています。

このため、登録キャンペーンとして、登録した方に金品の提供をする場合には、景品規制は適用されません。

-なるほど。先程説明のあった要件に照らして、個別に見ていく必要があるわけですね。次に、「景品類」に該当した場合には、どのような規制がかかるのでしょうか?

景品規制は、①一般懸賞に関するもの、②共同懸賞に関するもの、③総付(そうづけ)景品に関するものがあり(厳密には、絵合わせもありますが、細かいので割愛します)、それぞれ提供できる景品類の限度額等が定められています。

景品規制の説明図②

また、特定の業種については、業界の実情を踏まえ、一般的な景品規制とは異なる内容の業種別の景品規制が告示により指定されています。

現在、①新聞業、②雑誌業、③不動産業、④医療用医薬品業、医療機器業及び衛生検査所業について告示が制定され、各業界において提供される景品類に制限が設けられています。

-どのような方法で景品類を提供するか、提供方法次第で規制内容が変わってくるわけですね。

 前回のインタビューの際、ペイメントサービスにおけるキャンペーン競争が話題になりましたが、多くの会社が「最大20%還元」と告知していました。これは、どのように考えられるのでしょうか?

各社のキャンペーン内容を個別に確認したわけではありませんが、おそらく、ユーザーに付与する自社の電子マネーが「景品類」に該当することを前提に、くじや抽選によって景品を提供する「懸賞」ではなく、サービスの利用者にもれなく提供する「総付」であると整理し、「総付」の場合、限度額は「1000円未満の場合は200円、1000円以上の場合は取引価格の20%」という規制されていることから、各社とも最大「20%還元キャンペーン」と告知していたのだと思います。

-なるほど。まさに景品規制を念頭に、キャンペーン戦略を練っているわけですね。

 景品規制について、実務上、良く問題となる点としては、どういったものがあるのでしょうか?

良くご相談をいただくものとしては、いわゆるポイントサービスがあげられます。

先程、「景品類」を説明する際、正常な商慣習に照らして値引きと認められる経済上の利益は、告示により「景品類」から除外されているとお話しました。  

商品やサービスの購入時に支払いに充てることができるポイントは、実質的には値引きとして評価できる場合もあることから、その場合には「景品類」に該当しないようにも思えます。

ただ、現在では、消費者庁が公表しているガイドライン(運用基準)により、値引きと評価できるポイントを発行する場合であっても、懸賞によって付与の相手方を決定するかといった付与の態様や、使途を限定する場合など、一定の場合には、値引きとは認められず景品類に該当するとされていますので注意が必要です。

-今では多くの事業者がポイントサービスを活用して、リピーターを確保しようとしていますが、ポイントの発行についても景品規制が関係してくるわけですね。

 その他、景品規制について、実務上、注意すべき点としては、どのような点が挙げられるのでしょうか?

景品規制は表示規制に比べ、白黒が判断しやすいと言われることがあり、たしかに、そういった面はあります。

ただ、その一方で、現在では、2社以上で共同マーケティングを行う場合など、1つのビジネスやキャンペーンに関与する主体の数が増え、商流自体が複雑化・階層化し、どの取引を基準に顧客誘引性や取引付随性を判断すれば良いのか、相談を受けた弁護士としても頭を悩ませることが多いのも事実です。

多数の利害関係者が関与する取引においては、誰から誰に対し経済的利益の移転が生じているのかなど、1つ1つ丁寧に検討する慎重な姿勢が求められているといえます。

-複雑で判断が難しい事案の時こそ、丁寧に見ていく必要があるわけですね。最後に、今後、景品規制に関するコンプライアンスについては、どのようになっていくとお考えでしょうか?

まず、景品規制は、優良誤認表示や有利誤認表示と異なり、課徴金納付命令や適格消費者団体による差止めの対象とはされていません。

また、前回もお話したとおり、これまで消費者庁から措置命令を受けている事例のほとんどは、不当表示に関するものであることも事実です。

ただ、だからといって景品規制が重要ではないかというとそんなことはなく、今、お話したとおり、景品規制は事業者が行う様々なキャンペーンに密接に関係してきます。

先日も、私が利用している大手アパレルブランドのオンラインサイトで、最大10万円分ギフトが当たるプレゼントキャンペーンを告知していたところ、景品規制に違反する過大な景品を提供する内容となっていることが判明したとして、お詫びとキャンペーン内容の変更のメールが届いていました。

自主的にきちんと対応をされていて素晴らしいなと思う一方、景品規制は複雑で細かいだけに、大手の会社さんでもこういったミスは起きてしまうものなのだなと改めて実感しました。

マンパワーの限られている会社の場合ですと、なおのことチェックが甘くなってしまうこともあるかと思いますが、いったん告知・開始をしたキャンペーンについて、事後、変更や中止を余儀なくされると、それだけで大きなマイナスだと思います。

炎上のリスク回避や表示規制の場合と同様に、社内で検討した結果、判断に迷った際には、顧問弁護士や外部の弁護士をうまく活用するなどして、景品規制に抵触しない魅力的なキャンペーンとなるように、マーケティング戦略を練っていただければと思います。

-たしかに、いったんリリースをしたキャンペーンについて、事後、変更や中止が生じてしまうと、経済的な意味でのマイナスだけでなく、お客様からの信用や社内の士気にも影響がありますからね。
 今回も興味深いお話をありがとうございました。

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五常総合法律事務所 弁護士

持田 大輔

早稲田大学法学部、同大学院法務研究科修了。早稲田大学法学学術院助手を経て現職。
会社役員に対する法的助言から、不祥事対応、広告・マーケティング法務、データ戦略まで企業法務全般を取り扱うとともに、ゲーム制作会社の社外役員や映画『七つの会議』の法律監修なども手掛ける。

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