実はあまり知られていない?クリエイティブディレクターの仕事
人気の高い広告業界にあっても、特に華やかな語感のクリエイティブディレクターという職種があります。
広告を制作する上でのまとめ役かな?といった、フワッとした印象があるものの、具体的に何をしているのかはよくわからない、という方も多いでしょう。
広告制作の職種に関心がある方にむけて、クリエイティブディレクターの仕事をご紹介します。
クリエイティブディレクターとは
クリエイティブディレクターは広告制作の現場での最高責任者です。クライアントの意向を受け、広告の企画を立て、制作段階を経て、広告を完成させるまでを指揮監督します。クリエイティブディレクターについて、より詳しく見てみましょう。
クリエイティブディレクターのいる会社
クリエイティブディレクターは広告制作の現場責任者であるため、広告代理店や出版社、企業のPR部門などの広告を制作する会社、組織にその職が設定されています。また、広告制作の統括を行うため、クリエイティブディレクター職があるのは広告制作全体を完結できる規模の会社です。大手広告代理店にはそれなりの数のクリエイティブディレクターが在籍しますが、この椅子を確保するには狭き門を突破する必要があります。その他、広告制作以外でもファッション業界やゲーム業界でもクリエイティブディレクターという職種が存在します。
似ている職種との違い
クリエイティブディレクターには語感が似ていたり、職務範囲が一部重なっていたりする職種があります。
広告プロデューサー
広告プロデューサーは組織内で言えば、クリエイティブディレクターの上司にあたります。クリエイティブディレクターが制作現場の責任者であるのに対し、広告プロデューサーは広告制作全体に責任を持ちます。クライアントとの折衝や、予算や人員の手配といった、制作現場からはやや離れた仕事を主に行います。
アートディレクター
アートディレクターも広告制作に関わり、「ディレクター」という語を含む職種です。クリエイティブディレクターは広告のビジュアル面のアート部門と言葉の表現のコピー部門を含む現場の全ての監督ですが、アートディレクターは広告のビジュアル面を専門に監督します。アートディレクターはクリエイティブディレクターの下について仕事を進めますが、中小規模の組織ではクリエイティブディレクターとアートディレクターのどちらかだけがあり、両方を兼務しているケースもよくあります。
プランナー
広告のプランナーはクライアントの意向をくんで、商品やサービスを宣伝する広告の企画を行います。クライアントが発注する広告がマーケティング上果たす役割、クライアントの意図するところを正しく理解したうえで、ターゲットに商品やサービスを強く印象付けられるような広告の企画を立てます。ターゲットの心を動かすさまざまな広告表現を生み出す豊かな発想力と、その発想を正しく言語化できる能力が求められます。企画立案の際にクリエイティブディレクターが自らアイデア出しを行ったり、企画を出したプランナーが広告の制作進行に関わることもあるなど、両者の職務は一部が被っていることもあります。
クリエイティブディレクターの収入
クリエイティブディレクターの収入はまちまちで、所属する広告代理店の規模と本人の能力、知名度が大きく影響します。人気CMを多く手掛けるなど、クライエントから直接指名があるほどの知名度なら収入は大きく上がります。大規模広告代理店の場合、年収で600万円~1,000万円程度、中小規模であれば400万円~800万円程度と言われます。
クリエイティブディレクターの仕事
クリエイティブディレクターは広告を制作する際の現場責任者を一貫してつとめます。1つの広告を完成させるまでに、クリエイティブディレクターがどんな仕事をしているのかを見ていきましょう。
クリエイティブディレクターがやっていること
オリエン
広告制作の動きは、クライアントからのオリエン(提案依頼の会議)で始まります。制作会社が決まっていなければ、オリエンには数社が呼ばれます。クリエイティブディレクターはオリエンに出席し、宣伝したい商品やサービスの説明、広告を出すことで実現したいゴール、マーケティング的背景などの説明を受けます。
この場において、クリエイティブディレクターは広告制作やマーケティングの知識を背景として、よりよい企画につながる情報をクライアントの説明から引き出す必要があります。クリエイティブディレクターに必要なコミュニケーション能力のうち、聞く側の力が特に必要とされる場面です。
プランニング
オリエンの内容を受け、社内では企画会議を行います。クリエイティブディレクターはオリエンの内容を説明し、広告のコンセプトを決めます。コンセプトの決定にはマーケティングの知見や、世の中の空気を鋭く感じる力、自分の感覚をメンバーに伝えられる能力などが必要です。プランナーやコピーライター、グラフィックデザイナーとともに企画会議を繰り返し、広告企画を練り上げていき、固まった企画内容をクライアントへのプレゼン素材にまとめます。
プレゼン
プレゼンでは企画の内容、意図を正しくクライアントに伝えなければなりません。広告企画に込められたねらいがずれずにクライアントに伝わるよう、正しく言語化して伝えるコミュニケーション能力が求められます。数社のコンペとなっている場合は、企画の内容はもちろんですが、プレゼンの出来も採否に影響を与えてしまうこともありますので、非常に重要です。
制作
企画が採用されると、制作に入ります。クリエイティブディレクターは制作する広告に合わせ、社内外のスタッフを選定します。スタッフの選定や外部プロダクションの手配はプロデューサーが行うこともあります。実制作の現場では出演者オーディション、ロケハン、ロケ撮影、スタジオ撮影、編集などを行いますが、クリエイティブディレクターは全ての過程で監督としての作業を行います。
現場で突発的に発生するトラブルには、広告表現に影響を与えないよう対処しなければなりません。制作の過程でクライアントから入る要望にも対応する必要があります。多くの制作メンバーをまとめ、スケジュール通りに作品を完成させるまでのマネジメントもクリエイティブディレクターの仕事です。
クリエイティブディレクターと関わる人々
クリエイティブディレクターの仕事では多くの人と関わりを持ちます。クライアントとのやり取りは最も重要です。大事なお客様であるという事はもちろんですが、広告の目指すゴールを共有し、実現に向けて認識をすり合わせるために密なコミュニケーションが必要です。社内では上司となるプロデューサー、制作チームのプランナー、アートディレクター、コピーライター、イラストレーターらとのコミュニケーションに加え、複合的なキャンペーンを行う場合などに、営業担当者との調整もあります。
制作が社内だけで完結することは少なく、通常、撮影や編集は外部プロダクションの協力を得て進めます。ここでも良好なコミュニケーションが不可欠です。広告の完成に向け、さまざまな立場の多くの人々の間に立って動くクリエイティブディレクターには、優れたコミュニケーション能力が求められます。
まとめ
外部から見ると何をやっているのかよくわからないところがあり、一部の仕事が重なる別の職種との区別もつきにくいクリエイティブディレクターという職種が具体的にどんな仕事をやっているのかをご紹介しました。クリエイティブディレクターは広告作りの豊かな経験、優れたコミュニケーション力とマネジメント力を背景に、広告制作の全行程で中心的な役割を果たします。クリエイティブディレクターなしでは、広告制作が進まない重要職種といえるでしょう。
▼関連記事
・クリエイティブディレクターを目指して積むべきキャリアをご紹介
・アートディレクターになりたい!未経験からのキャリアの積み方
・アートディレクターとして活躍するための必須スキルとは?