ディレクションがうまくいかない時にやるべき5つの対処法
ディレクションには「クライアントへのディレクション」と「クリエイターへのディレクション」の二つがあります。
クライアントのディレクションは、ヒアリングスキルとプレゼンテーションスキルが主に求められます。きっちりと本質を引き出し、クライアントの目的や好みを踏襲して提案していくことで、「うまくいく」という結果を引き寄せることができます。
クリエイターへのディレクションは、「クリエイター性善説」に立つほうが、ディレクションがうまくいかない時に好転しやすいと感じます。
クリエイター性善説とは、「本来クリエイターは力を持っている」という立場を取るということです。
想定のデザインが上がってこなかったり、制作物のクオリティが低かったりする場合、ディレクターがクリエイターの力を引き出せていないと考えることが、一番のディレクション能力とも言えます。クリエイターのあらゆる可能性を探る視点があって初めて、新たなディレクションの策が芽生えるからです。
そこで今回は、ディレクションがうまくいかない時にやるべき5つの対処法についてお伝えしていきたいと思います。
対処法1:本音を語ってもらう
自己開示を促すことでの結束が固まる
自己開示とは「深い本音を相手に開示する」心理学用語です。相手の自己開示を促すためには、強い本音や弱点をディレクターが自ら述べることが効果的だと言われています。
また、クライアントやディレクターに本音を語ってもらう機会を作る必要があります。お互いが傷つけない話題でディベートするのも良いでしょう。仕事に関係ない話題でもかまいません。例えば、「最近一番社内で怒ってしまったこと」だとか「一番気になる芸能ニュース」などで構いません。
相手にとって喜怒哀楽の何かしらの感情が揺れる話題を選ぶことで、相手は自然に自己開示されていきます。
そうした自己開示のコミュニケーションを重ねたうえで、自分のディレクションのやり方について本音で尋ねてみましょう。ディレクションがうまくいっていない場合は、何かしらの指摘をしてくれるはずです。
自己開示の力は非常にパワフルであり、クライアントの会社の内情だけを世間話して帰って、ヒアリングシートをメールで送り、修正なしで案件を進めるような敏腕ディレクターも存在します。
対処法2:事例でより詳細に絞る
なるべく具体的な状態を作る
例えば、Webサイト制作なら、Webデザイン集などで徹底的に既存のデザインをピックアップします。それをクライアントに見てもらい、デザインテイストを絞ります。数は多いことに越したことありませんが、多すぎると決定回避の法則が働き、クライアントは迷ってしまいます。
そこでディレクターとしてアドバイスを施しながら、クライアントが気に入ったデザインの中から目的を果たしそうな優位なものを絞ってあげます。デザイナーは、そのデザインから逸れることがなければ、ある程度プロジェクトはうまく進むイメージを持つことができます。
デザインやライティングには型があります。また、複雑なクリエイティブでも、紐解けば、「型と型との組み合わせ」であることでしょう。何かしら、既存のもので具体的な要望を固めることは可能です。
対処法3:目的を見つめ直し、目的を軸にディレクションする
目的に注目し続ければ、細かいことに時間を取られずに済む
単にクリエイターが作った制作物をクライアントに「どうですか?」と言って見せると、「この部分は…」と細かいことをチェックするような行動を取る可能性が高まります。
クライアントの目的を最初に振り返り、どのような意図で仕上げているのか根拠を示しながら制作物を説明する必要があります。クライアントの目的はしつこいくらい常に言い続けるべきです。すると、制作物を常に全体的に捉えます。細かな部分の修正は最後に一気にやることができるため、クリエイター自身も仕事がしやすくなります。
対処法4:特別な対応をしていることを理解してもらう
うまくいかない根本原因の認知を変えるために
例えば、「お金を払っているんだから何度修正しても当たり前」というクライアントは基本的にディレクションする相手としては難しいと言えます。その場合、クライアントの価値観を土台にするよりも、クライアントの価値観を動かすことにチャレンジしたほうが、ディレクションがスムーズになるでしょう。
「実は弊社の95%のプロジェクトが修正回数3回以内で収まるため、この金額でお見積りを出していたので、こちらとしては特別な対応をしています。なので、次の案で決めて頂けないでしょうか?」と伝えれば、クライアントは理解してくれるはずです。もちろん、こうしたトークはディレクションの初期で言うことが理想です。
対処法5:何がどうすれば完了に向かうのか確認し合う
見えない終わりを見えるようにする
脳は曖昧なものを嫌うため、終わりが不透明になるとストレスが高まり、集中力が下がります。
クライアントにもクリエイターにも何がどうなれば完了に向かうのか、ステップをきちんと示すようにしましょう。
また、各ステップに限りがあることを伝えれば、次のステップに進む目途がつくため、各ステップの作業そのものも曖昧さを防ぐことができます。
修正回数が多いのが悪いわけでなく、修正によって終わりが曖昧になることがクリエイターにはダメージなのです。クライアントもプロジェクトマネジメントのプロでないため、落としどころが分からなくなると、ずっと細かい指摘をしてしまいます。完了へのステップをより明確に振り返るようにしましょう。
最後に:うまくいかないディレクションにも必ず活路を見出すことができる
一つ一つのやり取りを大切に
以上、ディレクションがうまくいかない時にやるべき5つの対処法についてお伝えしてきました。
ディレクションは1つ1つのやり取りを大切にしてく丁寧さ、相手の本音や懐に飛び込もうとする勇気、課題や目的を常に見つめ直す意思疎通、完了までを明確にする具体性などがとても大切です。
うまくいかないディレクションにも必ず活路は見出すことができます。ぜひ、今回の記事も参考にしてみてください。
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