アートディレクターの仕事と将来性
アートディレクターとは
アートディレクターとは、直訳すると「視覚分野の指揮者」です。
視覚分野とは、グラフィックデザイン、広告、装丁、パッケージ、パンフレット、雑誌、Web画像、ゲームなど、ビジュアルが登場するあらゆるケースを指します。
プロジェクトの目指す方向性を把握し、どういうビジュアルなら、クライアントの目的が達成できるかを監督し、制作を進める仕事です。アートディレクターが行う仕事は、アートディレクションと呼ばれます。
とはいえ、アートディレクターという仕事は曖昧で、皆さんの中でも「えっ、私だって、デザイナーですけど、アートディレクションしょっちゅうしてるから、アートディレクターじゃん!」と思う方もいるでしょう。
アートディレクターがアートディレクターだけをする仕事というのは、中規模以上の高単価の案件のように感じます。企業内デザイナーの中で、ヒアリング・ディレクションも行っているデザイナーさんは、既に立派なアートディレクション能力を持っているかもしれません。
アートディレクターの仕事の流れ
アートディクレタ―の仕事の流れは、簡単に言うと、以下の流れになります。
1.ビジュアルのヒアリング
ビジュアルに関して、どんな要望があるのかをしっかりと引き出していきます。最初にどれだけ詳細かつ的確で本音の情報を得られるかが、今後の制作に大きく関わってきます。
2.ビジュアルの企画とプレゼンテーション
ヒアリングした内容をもとに、ビジュアルを企画し、プレゼンテーションを行います。
3.ビジュアル制作に必要な人材のキャスティング
ビジュアルの制作に必要な人材をキャスティングしていきます。場合によっては、オーディションを開催し、審査に立ち会います。
社内や社外からデザイナーやコピーライターなどの制作スタッフを探す場合、目的のビジュアルを作るのに適した人材を抜擢します。
4.ビジュアル制作の監督指揮
制作に携わるクリエイターに的確な指示を出し、モチベーションをコントロールします。
5.ビジュアル面でクライアントとのコミュニケーション
クライアントやクライアントの担当者とビジュアル面について、きちんとしたコミュニケーションを行います。クライアントにビジュアル面の専門知識がない場合は、分かりやすい説明を行い、クライアントのビジュアルリテラシーを育てることで、納品へ向けて良好な関係を築くことができます。
6.ビジュアルの納品と運用
納品し、運用へ向かいます。
アートディレクターが必要になるケース
制作の中にビジュアルを含めることがあっても、アートディレクターが必ず起用されるわけではありません。
現にWeb制作の現場では、Webディレクターが、アートディレクターの役割を担うこともあります。
アートディレクターが求められるケースは、アートディレクションを突き詰めることが、そのまま企業の求める成果に繋がるケースです。
どういうことかというと、集客を第一目標としたWebの制作の場合、ビジュアルの品質というのは、より多岐に渡る側面の影響を考える必要があります。マーケティングやプログラムを考慮する必要があるからです
ブランディングとクリエティブの要素が強い時にこそ、アートディレクターが求めらえると言えます。
逆にWebサイトにおいても、ビジュアル面に力を入れる場合は、アートディレクターが必要となってきます。
アートディレクターはクリエイティブディレクターの配下になることもある
アートディレクターは、クリエティブディレクターの下層に置かれることがあります。アートディレクターがビジュアル面のみのディレクションをするのに対して、クリエイティブディレクターは、ビジュアル以外のあらゆる側面のクリエイティブを統括するディレクターということです。
アートディレクターとして高い収入を得るには
アートディレクションとして、「難しい」もしくは「重要」な仕事ほど、高い収入となります。
ビジュアルを作ることに対して、複数の専門的なクリエイターが存在し、彼らが一体になることでしか作り得ない案件は、アートディレクターの役割は非常に大きいのです。
重要な仕事とは、ビジュアルの活用度だったり、会社へ与える影響度です。感覚的に言えば、1枚の名刺のデザインよりも、あらゆる媒体に乗っかるロゴのほうが、会社の活用度も影響度も大きいですよね。
そう考えると、アートディレクションとは、大型案件の経験値を積み重ねることで、報酬を上げていける職業と言えるかもしれません。
アートディレクターの将来性
アートディレクターの将来性は非常に大きいものと言えます。個人がメディアを持つ時代、反射的な訴求力のあるビジュアルを突き詰める力は、企業としても大変求めるところであります。
アートディレクターの方が、美容の知識を持ったとすれば、美容品の商品開発から携わり、化粧品のパッケージのデザインや映像のアートディレクションなどを行うことができるでしょう。一度の撮影で自社サイトからSNSなど多岐に渡るメディアで活用できる素材を撮り切ることも大切です。
単に良いビジュアルをデザインできるだけでなく、行動経済学や心理学などの知識があるアートディレクターはより強いでしょう。もしくは、A/Bテストを繰り返しながら、ビジュアルをトライ&エラーした経験を重ねたアートディレクターも強いでしょう。
明確に潜在顧客に対して、「Aという状態をBに変えることができる」ということが打ち出せるアートディレクターは、大変求められていくでしょう。ビジュアルを使う場面というのは、多岐に渡っているため、ニッチな分野で専門性を深めて、その分野におけるアートディレクションを突き詰めるのも良いでしょう。
最後に:アートディレクターの仕事は縁や人脈における部分も大きい
アートディレクターになりたいのであれば、アートディレクターをきちんと配置してくれるような大型のプロジェクトの案件に抱える企業へ転職するのが一番だと思います。
しかも、そこで実績を打ち立てれば、たいていは大手企業の案件になるので、今後のキャリアをアップさせることにとても大きく貢献してくれるでしょう。自身がフリーランスになっても、地方の中小企業へUターンしたとしても、過去の人脈によって、あなたへ仕事がやってくる可能性が増えるでしょう。
真っ当なアートディレクションをやれる企業を探して、真っ当なアートディレクターの実績を積み上げて、確固たるキャリアを作ることを目指してみるのは、とてもいいことだと思います。
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