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鑑賞者と創作者、2つの視点を持つことでイラストのアートディレクションは磨かれる。
INTERVIEW 2019.4.25

鑑賞者と創作者、2つの視点を持つことでイラストのアートディレクションは磨かれる。

株式会社サーチフィールド GIKUTAS事業部 アートディレクター 棟久 益至

サーチフィールドにおけるイラストのアートディレクターは、小説や漫画の編集者に似ている。オーダー通りの絵を描いてもらうためのクオリティ管理だけでなく、作家を見つけ、時には叱咤激励し、一人前のイラストレーターに育て上げるという側面もあるからだ。違いがあるとすれば一点。書籍編集者は自分で手を動かさなくてもよいが、イラストのアートディレクターは自らもプレイヤーの経験が必要であるということ。もともとイラストレーターとしての素地素養がなければ、クライアントからの高い要望に応えられないのである。今回はサーチフィールドでアートディレクターとして活躍している棟久さんに、この仕事の厳しさ、特徴、そして魅力について語ってもらった。

クオリティと作家性、そしてオーダーのバランス

―イラストのアートディレクションという仕事について詳しく聞かせてください

まずクライアントから「こういうイラストが欲しい」というオーダーが入ります。それをディレクターが窓口となって、当社に登録している作家さんに発注かけるんですね。僕らアートディレクターは作家さんから上がってきたイラストに対して、技術的な監修を行なう役割を担います。

―技術的な監修とは?

イラストを確認して、まずはデッサンの狂いがないかを確認。おかしい部分があれば赤入れし、修正指示を出します。ほかにも線画の確認、着色の確認など細部にわたってチェックし、クオリティアップのためのチューニングを依頼。自分で手を動かすことはありませんが、デザイン面含めて細かくオーダーします。

―なるほど、イラストというと作家性が色濃く出そうです

そうですね。そういう意味でもこの仕事のいちばん難しいところが、クオリティと作家性、それにクライアントからのオーダーをどうバランスよく折り合いつけるか、ということ。イラストレーターのやりたいこともある。クライアントからの注文もある。ちょうど中間をとりつつクオリティも上げていく…非常に難しく、かつ悩ましいところです。

―確かに難しそうですね…逆にやりがいを感じるところは?

傾向としてひとりの作家さんと比較的長い期間にわたって関わることになるのですが、その方がどんどん腕を上げていくのを目にするときですね。もちろんご自身の努力の賜物なんですが、そこに自分とのやりとりやアドバイスが少なからず関与していると思うと、感無量です。

―最初から上手い!という作家さんもいらっしゃるんですか

もちろんいらっしゃいます。発注時点のこちらの想定を超えたものが出てきたときには手を加えずにそのまま提出します。その場合、仕上げでいくつかリクエストすることはありますね。もともとクオリティが高い作品は、ちょっと手を加えるだけでさらに良くなりますし。 一方、ウチの企業理念は「活躍の場を見つける」です。いまはまだ自分の力だけで仕事を完遂できないけど、これからを担う人。未来の可能性を秘めた人たちを支援する。仕事を任せられる人を育てて増やしていくことがミッションですから、上手い作家さんだけをフォローするわけではありません。

 

他人のレベルを上げつつ、自分のレベルも上げる

―棟久さんも実際にイラストを描いたりするんですか?

実はもともとサーチフィールドの登録作家だったんですよ。大学出てからデザイン会社に就職し、3年目にフリーのイラストレーターとして独立したんです。それから10年近くフリーランスでしたね。印刷物用のイラストをメインに、ゲームなどの分野で描いてました。

―自由なフリーランスの生活を捨てて、なぜまたアートディレクターに?

やはり自分ひとりだと限界を感じてしまって…特に学びについては頭打ちというか、成長が止まっちゃうんですよね。それにゲーム業界からの要望レベルがどんどん上がっていき、ひとりで戦い続けるのがしんどくなった。他の人と働くのってどんな感じだろう、という好奇心もあり、入社を決めたんです。

―ということは久しぶりの勤め人になりますが、いかがでしたか?

メンバー同士の年齢が近いこともあり、コミュニケーションが非常に取りやすい環境ですね。ディレクターやグラフィッカーなど違う職能同士もお互いを尊重しあっているので、変な衝突や壁もないし。なんでも相談できるし、一緒に頑張ろうという空気がごく自然に流れている。フリー10年選手でも自然に溶け込めました(笑)。

―フリーのときに感じた壁は乗り越えられましたか?

やはり会社としてノウハウが蓄積されているので、学びも多いですよ。さらにスケールの大きな案件に関わることでハッキリと成長を実感できる。たとえば圧倒的なクオリティの絵をあげてくる作家さんがいて。自分では描けないレベルの作品を前に、自分ならどうやってもっと良くできるか、という形で作品づくりに参加できる。他人のレベルを上げながら、自分のレベルも上げているようなものです。

―イラストレーターの肩書を捨てる葛藤は?

確かに仕事では手を動かすことはなくなりましたが、例えば社内でグラフィッカーという仕事との兼任も可能なんですよ。一度アートディレクターをやってみて、その上でやっぱり描きたいとなればキャリアチェンジもできる。その辺は結構融通効くんです。職能にこだわることなくイラストに対する興味関心が高ければ充分に楽しめる環境だと思いますよ。

 

好きなことを仕事にするための努力

―さきほどゲーム業界は要望度が高いとのことでしたが

見た目がいいのは大前提として、キャラの衣装…たとえば鎧などのセンスや塗り込みがしっかりしていないと通用しません。やはりゲームの顔になるわけなので、そこがきちんと世界観を含めて描きこまれている必要があるんですよね。本当に求められるクオリティは上がる一方ですよ。

―要望度の高いオーダーにアートディレクターとして応えるために必要なことは?

いろんな絵に対する知識ですね。たとえ自分が描けなくても、この人ならこういうものが描ける、みたいな想像力が働くかどうか。そのためのインプットは本当に欠かせません。とにかくジャンルにとらわれず様々な人の作品を見る。独特な作風なども頭に入れておく。そうすることで引き出しが増えて、あらゆるオーダーに応えられるようになると思います。あとは純粋にクオリティを上げたいという意欲ですね。

―なるほど、アートディレクターとはいえどもイラストレーターとしての感度も上げておくと

いろいろ見ていくとトレンドとかわかりますよね。ああ、こういうのがいま来てるんだ、と。それを楽しみつつ、自分もちょっと描いてみようかな、自分だったらどう描くかな、なんてスタンスがいいと思います。鑑賞者の一人としてイラストを楽しみつつ、もう一方では創作者としての自分がいる。このバランスを上手くとっていけるのが理想ではないでしょうか。

 

―そんな棟久さんがこれからやっていきたいことは何でしょう?

新しい才能の発掘をしたいですね。完全にいままで見たことのない作風の持ち主とか。理想としてはクオリティ一辺倒ではなく、多様性を追求したいんです。いわゆる作家性とか、作風を押しだしていくという。でも上がっていくクオリティにも対応していかないと。このジレンマは避けられない課題かもしれませんね。

―クライアントのテイストにあわせると作家性を抑えることになりますよね

そうなんですよ!折り合いをつけるのがアートディレクターとしてのミッションでもあるんですが、なかなか悩ましい。作家性を活かしつつ、テイストを寄せるというか。活かせる部分で作家性を残しつつも、シビアに監修すべきところは監修する。そういったサポートができるようになりたいです。

―ありがとうございます!最後にこれからのクリエイターに一言

一にも二にも絵を楽しむセンスですね。絵を描くことが楽しいと思えること。その状態を維持できるライフスタイルを心掛けてほしいです。それが好きなことを仕事にするための努力なんじゃないか。もし、絵が好きだったのにさまざまな制約や出来事で心が離れそうになったら、他の人の絵を見て刺激を受けてほしい。無理やりでもそうやって好奇心をキープしつつ、自分もこういう作品をつくれるようになりたいと思うこと。その純粋な思いがあればきっと長期的にクリエイティブな仕事は続けられるはずですよ。

―本日はありがとうございました!

株式会社サーチフィールド GIKUTAS事業部 アートディレクター

棟久 益至

大学時代、独学でグラフィックデザインを勉強。卒業後、デザイン会社に勤務しグラフィックデザイナーとして経験を積む。その後2006年から2016年までフリーランスのイラストレーターとして活躍。2017年1月、自らのスキルとキャリアの幅を広げるためにサーチフィールド入社。クライアントはもとより、イラストを依頼する作家や社内の仲間まで『大切な仕事相手』として尊重することをモットーとする。趣味は好きなゲームや漫画の画集を見ること。面白い生き物の写真を見たりその雑学ネタを読むこと。