アカデミー賞などの海外映画祭。それぞれの違いと受賞作品まとめ
韓国映画「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞作品賞を受賞し、話題になっています。アカデミー賞はアメリカ映画賞の最高峰であり、その中で最も重要とされる作品賞を外国語の映画が受賞するのは初の快挙なのです。一昨年2018年に日本映画「万引き家族」がカンヌ国際映画祭のパルムドール賞を受賞した際も、大きな注目を集めました。一体、海外の映画祭や受賞作品にはどういったものがあるのでしょうか?今回詳しくご紹介します。
海外で行われている映画関連賞とは
海外にはいくつもの「デザインアワード」と呼ばれる賞があります。そのうち映像作品を対象とする海外の賞や映画賞には、アカデミー賞をはじめゴールデングローブ賞、MTVムービー・アワードなどがあります。どういった賞をどのような作品が受賞したのか、以下でご紹介します。
アカデミー賞
別名「アメリカ映画の祭典」ともいわれており、基本的にはアメリカ映画を対象としています。その知名度と古い歴史からマーケットへの影響力は絶大で、受賞結果が作品の興行成績に大きな影響を与えています。
2020年オスカー受賞「パラサイト 半地下の家族」
その日暮らしの極貧生活を送る一家。長男キムは、IT企業社長の裕福な家へ家庭教師の面接を受けに行きます。兄に続いて妹も豪邸に足を踏み入れると、やがて相反する一家が交錯し、物語は思いもよらぬ展開を見せていきます。ホラーやコメディなど多様なジャンルを取り込み、格差社会を風刺した独創的な作品です。
カンヌ国際映画祭
カンヌ国際映画祭は世界三大映画祭の一つで、審査員は著名文化人や映画人によって構成されます。審査員の人選は毎年変わるので、受賞作品の傾向もその年によって変わっていきます。
2018年パルムドール受賞「万引き家族」
「誰も知らない」「そして父になる」などで多様な家族の形を描き続けてきた是枝裕和監督、渾身の人間ドラマ。犯罪で繋がる一家の、不器用ながらも愛すべき人間たちを通して描かれる家族の物語です。
ヴェネチア国際映画祭
世界三大映画祭の中で最も古い歴史を持つヴェネチア国際映画祭。別名「芸術の映画祭」とも呼ばれ、アート性の強い作品が多く選ばれる傾向にあります。
2016年金獅子賞受賞「立ち去った女」
恋人に罪を着せられ、30年間投獄されていた女性が、出所後に自分を陥れたかつての恋人に復讐するための旅に出ます。その道中に出会った数々の社会的弱者の者たちに手を差し伸べ、交流していくうちに、やがて復讐のターゲットとの距離も次第に縮めていくことになり…。フィリピンの鬼才、ラブ・ディアス監督による人間ドラマです。
ベルリン国際映画祭
世界三大映画祭の中で断トツの来場者数を誇る、非常に規模の大きな映画祭です。東西に分断されたベルリンの歴史的背景もあってか、社会派の作品が多い傾向にあります。
2019年金熊賞受賞「シノニムズ/Synonymes(原題)」
自分の国籍を捨てたいと願うイスラエルの青年が、パリに移住しさまざまな壁にぶち当たる物語。粗暴な主人公のキャラクター設定や荒々しい映像は賛否両論を巻き起こしました。イスラエル人監督ナダブ・ラピド氏は「政治的観点だけでこの作品を見ないで欲しい。実存主義的や博愛主義、祝祭的な部分もある」と語っています。
ゴールデングローブ賞
アメリカにおける映画・テレビドラマに送られる賞であり、アカデミー賞の前哨戦とも呼ばれています。
2017年5部門受賞「ラ・ラ・ランド」
2016年に公開され日本でも大ヒットしたロマンティック・ミュージカル映画。ハリウッドで俳優になることを夢見る女性とピアニストの恋愛を描いた映画で、主演はエマ・ストーンとライアン・ゴズリングです。世界で4億4,600万ドルの興行収入を得て商業的にも大成功を収め、後の「グレーテスト・ショーマン」や「ボヘミアン・ラプソディー」など、ミュージカル・音楽映画ヒットの布石ともなりました。
MTVムービー・アワード
MTVが主催する映画賞で、投票者の年齢層が低く、若者向けのコメディ映画などが受賞する傾向にあります。最優秀キスシーン賞や最優秀悪役賞など、他の映画祭にはないユニークな賞があるのも見どころです。
2016年最優秀映画「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」
2005年に完結してから10年ぶりに公開されたSF映画の金字塔「スター・ウォーズ」の7作目。「LOST」や「スター・トレック」シリーズのヒットメーカーであるJ・J・エイブラムスが監督し、脚本には「ジェダイの帰還」「帝国の逆襲」を手がけたローレンス・カスダンが参加しています。無名から大抜擢された主人公役のデイジー・リドリーのほかハリソン・フォード、マーク・ハミルらオリジナルのメインキャストも復帰しました。
英国アカデミー賞
英国アカデミー賞は、映画に関連した業績に対して与えられる賞です。イギリスの映画産業に大きな影響を与える賞で、同年に行われるアメリカのアカデミー賞の前哨戦とも呼ばれています。
2013年作品賞受賞「アルゴ」
イランで実際に起こった人質事件を描いたサスペンスドラマ。1979年、テヘランで過激派がアメリカ大使館を占拠する中、6人のアメリカ人が自力で脱出し、なんとかカナダ大使の自宅に身を潜めます。CIAで人質救出をするトニーは、6人を国外へ脱出させるため「アルゴ」という架空の映画を企画し、撮影スタッフと偽り出国させる大胆不敵な作戦を決行。「グッド・ウィル・ハンティング」「パール・ハーバー」のベン・アフレックが監督・製作・主演を務めています。
セザール賞
フランスにおける米アカデミー賞にあたり、同国で最も権威のある賞です。俳優や記者などさまざまな職業から成る、約4,000人の会員によって選出されます。
2015年最優秀作品賞受賞「禁じられた歌声」
西アフリカ、マリ共和国の古都ティンブクトゥ近郊の街で暮らす音楽好きの男・キダーンは、妻や娘と共に幸せな毎日を送っていました。しかしある日、イスラム過激派に街を占拠されてしまいます。弾圧に立ち向かう家族の姿を描き、セザール賞で最優秀作品賞他6部門を獲得。第87回アカデミー賞では外国語映画賞ノミネートも果たしました。
インディペンデント・スピリット賞
毎年、アカデミー賞の前日に開催される、インディーズムービー(自主製作映画)に対する賞です。対象となるには、上映時間が70分以上、製作費が2,000万ドル以下など、いくつかの条件をクリアする必要があります。
2014年作品賞受賞「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
「バベル」「21グラム」などで高い評価を得るメキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のダークファタジー作品。かつてヒーロー映画「バードマン」で一世を風靡し、現在は失意の底にいる俳優・リーガンが、再起をかけてブロードウェイの舞台に挑む物語です。主演はなんと「バットマン」のマイケル・キートンが演じています。
モントリオール世界映画祭
カナダ・モントリオールにて開かれる、北米規模最大の映画祭です。フランス語圏のため、フランス映画の出品が多い傾向にあります。
2008年最優秀作品賞受賞「おくりびと」
納棺師の職業を通して、死や人生と向き合うヒューマンドラマ。モントリオール世界映画祭グランプリをはじめ、アカデミー賞で日本映画初となる外国語映画賞を受賞しました。監督は滝田洋二郎、音楽は久石譲が担当し、さまざまな死と出会い成長していく主人公とそれを見守る妻を、本木雅弘と広末涼子が演じました。
まとめ
今回は、数多ある映画賞の中から主要な賞と作品を厳選してご紹介しました。日本のみならず、海外にはさまざまな種類の映画賞があり、主催国の歴史的背景や選考するメンバーの人種・職種・年齢によって選考基準がそれぞれ異なります。どの映画を観ようか迷った時は、作品の受賞歴や映画祭の特色なども参考に選んでみてはいかがでしょうか?
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