アートディレクターになりたい!未経験からのキャリアの積み方
アートディレクターは広告、Web、雑誌や装丁などをデザインする現場で、デザイン制作の中心となって活躍します。
デザインに関心がある方の中には、アートディレクターという職に惹かれている方もいるのではないでしょうか。
アートディレクターが専門職だという事はなんとなくわかるものの、どのようにしたらアートディレクターになれるのか、いまひとつハッキリ見えないということもあるでしょう。
未経験からアートディレクターを目指すにはどうすればよいのかを見ていきます。
未経験からアートディレクターへの道!?
企業から制作を依頼されるデザインは、多くが複数のクリエイティブ職によるチーム作業で生み出されます。アートディレクターは顧客の要望を聞き、デザインチームを指揮してデザインを完成させるまで、一貫してデザインの責任者をつとめます。顧客の提示するゴールを、制作チームを使って作るデザインにより達成するのがアートディレクターだと言えます。残念ながら、未経験からそのままアートディレクターになるのは非常に難しいと言えます。ほとんどのアートディレクターの求人ではアートディレクターとしての経験が条件になっています。
未経験者可の求人にしても、「ディレクションの経験」や「デザイン制作チームマネジメントの経験」など、実質的にはアートディレクターが行う仕事の経験を前提としているものがほとんどです。アートディレクターとして育てることを前提に本当の未経験者を採用するといったことは、ごく稀です。ほとんど場合、アートディレクター職のある会社に入り、デザイナーなどデザインチームの一員として多くの制作現場の経験を経てステップアップしていく形を取ります。
アートディレクターがやっていること
アートディレクターを目指すのであれば、具体的にどんな仕事をしているのかを知っておいたほうが良いでしょう。
クライアントからヒアリング
クライアントからデザインの制作依頼があると、アートディレクターはクライアントからヒアリングを行います。そのデザインが必要とされる背景や、デザイン成果物によりクライアントが実現したいことなど、デザインコンセプトを決めるのに必要な情報を聞き取ります。
制作チームを編成
社内ではデザインの制作にあたるスタッフを選んで、制作チームを編成します。社内のスタッフだけではなく、外部の制作会社やフリーランスのスタッフの協力を得ることもよくあります。
デザインコンセプトを決めてラフを練る
クライアントからのヒアリングをもとに、クライアントの求めるゴールを実現するデザインコンセプトを決定します。スタッフと共に打ち合わせを重ねてイメージを固めていき、デザインコンセプトに沿ったデザインのラフ(カンプ)を数種作成します。
クライアントにプレゼン
ラフをもとにクライアントにプレゼンを行います。ラフ画だけでなく、提示したデザインがクライアントのゴール達成をどう助けるのかを分かりやすく、クライアントの心に届く言葉で伝える必要があります。
制作
クライアントから制作の指示を得られたら実際のデザイン成果物の制作に入ります。制作ではチームのそれぞれが作業を行いますが、アートディレクターは各メンバーの作業を随時チェックして、成果物のデザイン上の一貫性が保たれるように指示、調整を行います。また、納期、予算内で確実に成果物を仕上げられるよう、プロジェクト管理を行うのも仕事の一つです。
アートディレクターになるには
アートディレクターはデザイン制作の監督役で、仕事は多岐にわたります。デザイン制作の責任者として、制作中に発生する大小さまざまな問題の解決も求められます。幅広い能力が必要ですが、どのようにしたらなれるのでしょうか。
アートディレクターを目指して
アートディレクターに進む道は、ほとんどがアートディレクター職のある会社に入ってクリエイティブ職としてデザイン制作の経験を積んだ上で、昇進するというものです。デザイン制作に携わるクリエイティブ職には、グラフィックデザイナー、イラストレーターやフォトグラファーなどがあります。
これらクリエイティブ職の求人では新卒募集や未経験を可とするものもあります。その場合も、多くのケースで、ある程度のクリエイティブ能力とPhotoshopやIllustratorといった基本的なツールが使えることが条件とされています。クリエイティブ職として採用されるのに必要な基礎的な素養は大学の美術系学部のデザイン科やデザイン系の専門学校、デザインスクールで学ぶことができます。
アートディレクターに必要なスキル
クリエイティブ職からアートディレクターを目指そうとする場合、デザインの能力以外にも必要とされる力があります。
デザイナーとしての知見
アートディレクターの大きな役割の一つとして、デザインディレクションがあります。クリエイティブ職のチームでつくるデザインについて全体に目を配り、指示を出すことで全体を統一し、デザインコンセプトに沿った成果物とします。制作チームのメンバーから上がってきたものをチェックし、どこがイメージと違っていて、どのように修正すべきかを指示するにはアートディレクター本人にデザイナーとしての能力が必要です。
また、イメージを伝えたり、修正指示を出す際に言葉だけでなく、デザイン画を用いることもあり、自分でツールを使いこなし、デザインができる能力も求められます。制作プロジェクトを率いる立場として、各フェーズで何をしなければならないのか、何が必要か、どういった問題に注意を払う必要があるのかといった心得は、クリエイティブ職としてさまざまなプロジェクトを経験する中で身につけていきます。クリエイティブ職を率いてデザイン制作に責任を持つ立場となるには、本人にもクリエイティブ職としての経験と能力が必要です。
コミュニケーション能力
仕事を進める上で、非常に多くのコミュニケーションを必要とするのがアートディレクターです。相手はクライアント、制作チームのメンバーや外部制作会社、クリエイティブディレクターやプロデューサーなど、全方位にわたります。クライアントからは、最初にどのようなデザインを必要としているのか、あるいはデザインにより何を実現しようとしているのかを正確に聞き取る必要があります。デザインコンセプトを固めるまで、良好なコミュニケーションによりクライアントと制作側の認識をしっかりすり合わせることで、その後の制作にも注力できます。
制作中には制作チームのメンバーに対してさまざまな指示を行う必要があります。デザインに関する指示では、自分のイメージをわかりやすく言語化して伝える、あるいは相手の持つイメージをうまく汲む力が必要です。多くのフェーズで、打ち合わせ、調整、指示が主な仕事となるため、高いコミュニケーション能力を必要とします。
プロジェクト管理力
アートディレクターにはデザインの成果物を納期までに確実に仕上げる責任があります。制作プロジェクト内で仕事を細分化し、チームのメンバーや外部プロダクションに作業を割り振り、全体の進捗を管理します。プロデューサーやクライアントに進捗報告を行い、制作中にトラブルが起きた場合は、問題に対処したうえで、遅れを取り戻すために制作スケジュールの見直しも行わなければなりません。アートディレクターにはこうしたプロジェクト管理力も必要です。
まとめ
デザイン制作を率いるアートディレクターに全く未経験からなることは困難です。クリエイティブ職として多くのデザイン制作を経験し、デザインの能力とビジネス上の能力の両方を磨いていくことがアートディレクターへの着実なステップです。
▼アートディレクターのインタビュー記事
・ストーリーのあるアートディレクションは、美しく機能する。/株式会社アマナデザイン マネジャー アートディレクター 福永 星
・ロールモデルはひとつじゃない。だからデザイナーとしてのキャリアを描きやすい。/ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート アートディレクター 細野隆博 デザイナー 平野結唯
・チームを率いて大きなデザインを完成させる!アートディレクターの仕事とは?
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